吉次

Aoe Yoshitsugu

評価作品16点

いま販売中の作品1点

特重巻 19, 番 41 · 刀

概要

吉次は備中国青江派の刀工で、鎌倉時代末期より南北朝時代初期にかけて活躍した。備中は十一世紀初頭の『新猿楽記』が既に「備中ノ刀」を挙げる刀剣の国であり、青江派は高梁川下流域を中心に栄え、鎌倉中期頃までを古青江、それ以降南北朝期にかけてを青江と汎称する。諸記録は「助次・頼次・直次らと共にこの時代の同派を代表する刀工の一人」と繰り返し記し、古い記録は端的に「中青江の代表工」と呼ぶ。年紀は正中・嘉暦・元徳が遺り、元徳二年紀の生ぶ太刀の記録は「元徳の年号は貴重である」とする。長銘は右衛門尉に平姓を冠し、居住地は「備中国青江住」と「備州万寿住」の両様に切られ、「居住地銘の相違が指摘される」。

作風の基調は、この期の青江の直刃の最も穏やかな姿である。嘉暦三年紀の小太刀は「直刃を得意とする吉次の本領が遺憾なく発揮された一口」と評される。中直刃が処々浅く小さくのたれ、小互の目・小丁子・小乱れを交え、小足・葉に逆足が入るが、逆ごころは部分的に留まる。匂口は締まりごころに小沸がつき、明るく冴え、金筋・砂流しが細かにかかり、腰元に湯走りが断続して二重刃風となる。短刀は細直刃にほつれを交え、刃区を焼き込む点が注目され、左兵衛尉直次の元徳元年紀の短刀にも「同様の態が見受けられ興味深い」とされる。嘉暦三年紀の短刀は「静穏な直刃出来の焼刃は、小沸がよくついて、滋味に溢れている」と記される。

鍛えは小板目がよくつみ、小杢・流れ肌を交え、地沸が微塵に厚くつき、地景が細かに入る。地斑がしばしば現われて澄肌を交え、金象嵌銘の刀は「縮緬肌状」を呈し、元徳年紀の太刀は地斑交じりの鍛えが「かな色深く冴える」。淡く乱れ映りが立ち、小品では「棟寄りに乱れ映り・刃寄りに筋状の映り立ち」、所謂段映りとなる。帽子は直ぐに小丸、時に先尖りごころ、または僅かに掃きかける。二字銘短刀の映りの景色と締まって明るい直刃の匂口は「いかにも青江らしく」と評される。

「吉次の短刀の遺例は稀有であり、同工の作域を知る上で資料的にも貴重である」とされ、小太刀も「同派には珍しい小太刀の作例」である。佩裏に二字銘を切る太刀は「長銘作よりは時代が遡ると鑑られる」。名跡の端には世代の問題が立つ。嘉暦短刀の重要美術品の記録は、その工を銘鑑が貞和頃に置く吉次の「先代であろう」と記し、その貞和頃の吉次の折返銘の刀は後代の工の項に収める。本間は「青江の個銘の極めは賛否があろう」と注意を添え、指定の記録は穏やかな直刃の短刀が「南北朝期の同派の作とは趣きを異にしている」と作風の上で線を引く。

いま一つの作域は大磨上無銘の極めの刀である。鍋島家の金象嵌銘の刀は「地刃の出来は鎌倉末期の青江派の典型的のもの」とされ、享保九年本阿弥光忠折紙の附帯する無銘刀は両度の記録で「吉次極めの中でも傑出した出来映え」、「手持ちの重い頑健な刀姿」と賞される。極めには率直な留保も残る。内藤家伝来の刀は「一見備前元重などとも鑑せられるもので、吉次と断定することは困難である」とされつつ、鎌倉末期の青江の作と位置づけられる。一派の中で吉次の直刃は最も静かな極にあり、右衛門尉平の銘字は直次の左兵衛尉と対をなす。

藤代の格付は上々作。公の指定は十六口を数え、特別重要刀剣二口・重要刀剣十口の計十二口がこの二つの級にあり、重要美術品二口、重要文化財は藤島神社所蔵の正中三年三月日紀の在銘太刀(図版解説に板目に直刃と記す)と東京国立博物館所蔵の元徳二年紀の太刀の二口である。後者は毛利家より明治天皇に献上されたもので、本間による御物台帳に所載される。十六口のうち十口が在銘、五口が無銘の極めで、鍋島家の刀は金象嵌の極め銘を帯びる。伝来は名家を経る。金象嵌銘の刀は肥前小城鍋島家に伝わり、『土屋押形』に「原城一番乗りのとき祖先の佩刀」と記される島原の乱の藩祖元茂の佩刀であり、村上内藤家の刀は「太閤拝領青江吉次」と伝えて天正十八年小田原陣の拝領にかかる。嘉暦の重美短刀は佐野美術館の所蔵である。重要文化財と社寺・博物館の所蔵品は文化財として永く守られ、蒐集家が現実に出会い得るのは特重・重要の十二口に限られるが、市に現れることは稀であり、現れた折には青江の静かな直刃の佳品として指標となる。

歴史的重要度

吉次の位置づけを、日本刀全体および伝法・時代・時期ごとに示します。各区分(随一・屈指・有数・著名)は、NBTHK および文化庁による指定に加え、三作や名物帳などの歴史的栄誉を加味したものです。

随一
随一
屈指
屈指
有数
有数
著名
著名

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指定

国宝—
重要文化財2
重要美術品2
御物—
特別重要刀剣2
重要刀剣10

名工ランク

鑑定

年紀作

伝来

刀種

評価作品16点の分布

銘

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