戦国の世、一派は第二の主家に仕えた。小田原の後北条氏である。その庇護のもと綱広系は打刀の時代の皆焼を鍛え続け、1590年の落城とともに新刀の時代へ散った。
相州小田原 康国(fss-725) 相州住康国(初代)、享禄(1528-1532年)頃の相模の刀工。小田原相州工の一派で、伝承によれば島田義助の門人とされ、綱家の弟と伝えられています。後北条氏の当主・北条氏康より「康」の一字を賜ったとされています。刃文は互の目乱れや、沸の目立たない落ち着いた浅い湾れ(のたれ)を焼き、沸を強調した往年の相州伝が変遷していく過渡期の作風を示しています。また、康国は彫物の名手としても知られ、大業物・上作に列せられています。 本作は、相州伝の伝統を色濃く残す古刀後期の美しい一振りです。長さ二尺三寸弱の長寸な大磨上無銘ながら、精緻な肌合いと湾れ調の直刃を焼いており、当時の優品を彷彿とさせます。 地鉄は小木目に板目が交じり、地沸が厚くついて潤いのある「地艶」の美しさを呈しています。小丸に掃き掛けを伴う切先、そして地鉄全体に広がる地沸は、あたかも星が瞬くような煌めきを見せ、鉄の鍛えの妙を存分に堪能させてくれます。 刃文は落ち着いた湾れ調の直刃を基調とし、研ぎの状態も極めて良好で、鑑賞価値の高い一振りです。 拵(外装)もまた、鍾馗と鬼を題材とした見事な一揃いです。鞘は黒漆に茶を交えた石目地塗で、刀身の彫物(雲)と調和するような重厚な質感を備えています。金箔押の雷文様ハバキに、金着の切羽が添えられています。 上作の工であり、彫物の名手であった康国の技量は本作にも遺憾なく発揮されています。小田原康国には二代ありますが、本作はその彫口から初代の作と推測されます。表に「蓮台と梵字」、裏に「吊し雲」の見事な彫物が施されており、古の名刀を彷彿とさせます。 刀身の健全度は極めて高く、研ぎも非常に鮮明です。刃文は働きに富んだ細やかな直刃調の乱れを焼き、小板目に木目が交じった精緻な肌合いは、離れた場所からでもその良さが伝わるほどです。 特筆すべきは、その彫物の質です。刀身の彫物は後彫りや欠点を隠すためのものも少なくありませんが、本作は全く異なり、無類に健全な刀身に名工が当初から意図して彫り上げたものです。まさに芸術品と呼ぶにふさわしく、刀身の美しさを一層引き立てています。 【彫物について】 刀身に昇る「浮雲」は、仏教において「西方極楽浄土」を象徴し、神道においても神聖な意味を持つ意匠です。 拵もまた、刀身に劣らぬ風格を備えています。鍾馗と鬼の金具は保存状態が極めて良く、茶の柄糸と下げ緒、そして石目地の鞘が見事に調和しています。鍔は龍を象った堅牢な南蛮風の作で、縁には銅と金の象嵌が施され、雲の意匠が取り入れられています。目貫は人物図、鮫皮は時代を経て美しい色艶を帯びています。 --- 銘:大磨上無銘 時代:古刀 天文頃(1532-1555年) 長さ:二尺二寸九分(約69.4cm) 反り:1.2cm 元幅:29.4mm 先幅:20.4mm 元重:7.0mm 造り込み:鎬造、庵棟 茎:大磨上 鍛え:板目肌よく詰む 刃文:中直刃、足入る 鋩子:直調、小丸に返る 状態:研ぎの状態極めて良好 【鑑定書】 日本刀剣保存会(NTHK)鑑定書 刀 伝相州小田原康国 正真 長さ二尺二寸九分有之 平成二十八年二月二十七日 特定非営利活動法人 日本刀剣保存会 理事長 宮野貞司 第 T-1600272号 銘文:大磨上無銘 造り込み:鎬造、庵棟 鍛:板目肌よく詰む 刃紋:中直刃、足入る 鋩子:直調、小丸に返る 彫刻:表 瑞雲、裏 蓮台に梵字二つ 備考:天文頃 審査員捺印:四顆






相州伝 · 相模
現在22点販売中
末相州は、相模国に興った相州伝が、正宗とその後を継いだ広光・秋広らの南北朝の頂点を過ぎた後、室町期に至ってなお同地に伝えられた一群を指す。その手は鎌倉と小田原の二つの面に分かれ、室町中期には広正の名が南北朝期から数代にわたって連綿と切られて系の中核をなし、室町後期には後北条氏の庇護のもとに小田原へ拠点が移る。説明書は、天文年間に活躍した初代綱広を広正の子孫と伝え、初銘を正広といい、北条氏綱に召されて小田原に住し綱の一字を賜って改銘したと記す。以後、綱広・綱家らが小田原八幡山に代々続いて後北条氏に仕え、相州住の五字銘を低く切る在銘・生ぶの作を遺した。鎌倉に残って正宗以来の地に鍛えた正広のごとき手と、小田原に移って北条のもとに鍛えた一群とが併存し、後者を総称して小田原相州と呼ぶ。説明書はこの一派を、相州伝の掉尾を飾る工として位置づける。 作風は、肌立った板目に杢目・流れ肌を交えた相州の地鉄に、皆焼を本領とする点を共通の語法とする。互の目乱れに丁子・矢筈の刃・尖り刃・小のたれを交え、先へ刃幅を増して焼き、飛焼・湯走り・棟焼を地に及ぼして総体に皆焼となる態で、匂口は締まりごころに小沸よくつき、足・葉入り、砂流しを交える。この皆焼は広光・秋広以来の手と伝えられ、説明書は綱広をその系譜に置きつつ、現存作にあって彼らとは形状を異にすると明記して、襲ぐ名手その人とその手とを区別する。彫物もまた一派を貫く見どころで、真および草の倶利迦羅、梵字、三鈷剣、護摩箸、蓮台、八幡大菩薩や南無妙法蓮華経の陰刻文字を表裏に密に施し、樋中・櫃中の浮彫を得意とする。中でも総宗は彫の巧緻において長く名があり、末相州独特の構図の倶利伽羅を据える。古典相州の頂点と分かつのは、沸の深さと鉄の冴えにおける差であって、小田原の手は締まりごころの匂勝ちの匂口に角がかる互の目を複式・腰開きの態に焼き、地は肌立ちながらも締まる傾きを見せ、姿は短寸に先反りつくものが多い。一派のうちでも振れ幅があり、皮焼の手前の互の目交りの小乱れに控える静かな作から、棟焼まで覆う厚い華やかな皆焼に開く作までを含む。 鑑定の勘どころは、この一群を古典相州の名作から分かつところにある。すなわち、沸の冴えにおいて南北朝の頂点に一歩を譲りつつ、肌立つ板目杢に角がかり複式に傾く互の目乱れと、信仰に基づく緻密な彫物とを併せ持つ点を読む。主要工としては、室町中期に系の中核を定めた広正、相州伝の最末に立って皆焼と矢筈の刃を本領とし知名度も技量も高いとされる初代綱広、これと並び称せられて皆焼と彫物に優れた綱家が挙げられ、彫の巧緻によって一派から分かたれる総宗がこれに続く。鎌倉の面に立つ正広は南北朝以来の系を室町に伝え、皆焼風の乱れと彫物を遺す。なお江戸期の清平は加州兼若の系から稲葉家の抱工として小田原に転じた工で、相州在住の点で一派の名に連なるが、その作風は柾がかる加州物を基盤として別系をなす。伝来は概して大名家や寺社の格別な来歴を伴わず、その品位を支えるのは名高い由緒よりも、説明書が一口ごとに称える彫と鉄の質、そして在銘・生ぶに達した室町相州の稀少にある。在銘年紀の作はことに各代を読み分ける基準作となり、末期相州を学ぶ者にとって、相州伝の室町の様相を一口のうちに収める手がかりとなる。 詳しく見る →
室町時代の相州
戦国の世、一派は第二の主家に仕えた。小田原の後北条氏である。その庇護のもと綱広系は打刀の時代の皆焼を鍛え続け、1590年の落城とともに新刀の時代へ散った。
NTHKの中心的な鑑定書で、相応の出来を備えた作に発行されます。在銘作は銘の正真を、無銘作は審査員による刀工・流派の極めを示します。点数を記す詳細な審査表が付されます。
NTHK(日本刀剣保存会)は、NBTHK(1948年設立)に先立つ1910年に創立された、日本で最も古い刀剣鑑定団体です。長く会を率いた会長の没後、NTHKとNTHK-NPOの二つに分かれ、いずれも審査を続けています。NTHKの鑑定書は、点数と審査員の所見を併記する詳細な審査表が特徴で、特に無銘作の極めに定評があります。
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相州小田原 康国(fss-725) 相州住康国(初代)、享禄(1528-1532年)頃の相模の刀工。小田原相州工の一派で、伝承によれば島田義助の門人とされ、綱家の弟と伝えられています。後北条氏の当主・北条氏康より「康」の一字を賜ったとされています。刃文は互の目乱れや、沸の目立たない落ち着いた浅い湾れ(のたれ)を焼き、沸を強調した往年の相州伝が変遷していく過渡期の作風を示しています。また、康国は彫物の名手としても知られ、大業物・上作に列せられています。 本作は、相州伝の伝統を色濃く残す古刀後期の美しい一振りです。長さ二尺三寸弱の長寸な大磨上無銘ながら、精緻な肌合いと湾れ調の直刃を焼いており、当時の優品を彷彿とさせます。 地鉄は小木目に板目が交じり、地沸が厚くついて潤いのある「地艶」の美しさを呈しています。小丸に掃き掛けを伴う切先、そして地鉄全体に広がる地沸は、あたかも星が瞬くような煌めきを見せ、鉄の鍛えの妙を存分に堪能させてくれます。 刃文は落ち着いた湾れ調の直刃を基調とし、研ぎの状態も極めて良好で、鑑賞価値の高い一振りです。 拵(外装)もまた、鍾馗と鬼を題材とした見事な一揃いです。鞘は黒漆に茶を交えた石目地塗で、刀身の彫物(雲)と調和するような重厚な質感を備えています。金箔押の雷文様ハバキに、金着の切羽が添えられています。 上作の工であり、彫物の名手であった康国の技量は本作にも遺憾なく発揮されています。小田原康国には二代ありますが、本作はその彫口から初代の作と推測されます。表に「蓮台と梵字」、裏に「吊し雲」の見事な彫物が施されており、古の名刀を彷彿とさせます。 刀身の健全度は極めて高く、研ぎも非常に鮮明です。刃文は働きに富んだ細やかな直刃調の乱れを焼き、小板目に木目が交じった精緻な肌合いは、離れた場所からでもその良さが伝わるほどです。 特筆すべきは、その彫物の質です。刀身の彫物は後彫りや欠点を隠すためのものも少なくありませんが、本作は全く異なり、無類に健全な刀身に名工が当初から意図して彫り上げたものです。まさに芸術品と呼ぶにふさわしく、刀身の美しさを一層引き立てています。 【彫物について】 刀身に昇る「浮雲」は、仏教において「西方極楽浄土」を象徴し、神道においても神聖な意味を持つ意匠です。 拵もまた、刀身に劣らぬ風格を備えています。鍾馗と鬼の金具は保存状態が極めて良く、茶の柄糸と下げ緒、そして石目地の鞘が見事に調和しています。鍔は龍を象った堅牢な南蛮風の作で、縁には銅と金の象嵌が施され、雲の意匠が取り入れられています。目貫は人物図、鮫皮は時代を経て美しい色艶を帯びています。 --- 銘:大磨上無銘 時代:古刀 天文頃(1532-1555年) 長さ:二尺二寸九分(約69.4cm) 反り:1.2cm 元幅:29.4mm 先幅:20.4mm 元重:7.0mm 造り込み:鎬造、庵棟 茎:大磨上 鍛え:板目肌よく詰む 刃文:中直刃、足入る 鋩子:直調、小丸に返る 状態:研ぎの状態極めて良好 【鑑定書】 日本刀剣保存会(NTHK)鑑定書 刀 伝相州小田原康国 正真 長さ二尺二寸九分有之 平成二十八年二月二十七日 特定非営利活動法人 日本刀剣保存会 理事長 宮野貞司 第 T-1600272号 銘文:大磨上無銘 造り込み:鎬造、庵棟 鍛:板目肌よく詰む 刃紋:中直刃、足入る 鋩子:直調、小丸に返る 彫刻:表 瑞雲、裏 蓮台に梵字二つ 備考:天文頃 審査員捺印:四顆






相州伝 · 相模
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末相州は、相模国に興った相州伝が、正宗とその後を継いだ広光・秋広らの南北朝の頂点を過ぎた後、室町期に至ってなお同地に伝えられた一群を指す。その手は鎌倉と小田原の二つの面に分かれ、室町中期には広正の名が南北朝期から数代にわたって連綿と切られて系の中核をなし、室町後期には後北条氏の庇護のもとに小田原へ拠点が移る。説明書は、天文年間に活躍した初代綱広を広正の子孫と伝え、初銘を正広といい、北条氏綱に召されて小田原に住し綱の一字を賜って改銘したと記す。以後、綱広・綱家らが小田原八幡山に代々続いて後北条氏に仕え、相州住の五字銘を低く切る在銘・生ぶの作を遺した。鎌倉に残って正宗以来の地に鍛えた正広のごとき手と、小田原に移って北条のもとに鍛えた一群とが併存し、後者を総称して小田原相州と呼ぶ。説明書はこの一派を、相州伝の掉尾を飾る工として位置づける。 作風は、肌立った板目に杢目・流れ肌を交えた相州の地鉄に、皆焼を本領とする点を共通の語法とする。互の目乱れに丁子・矢筈の刃・尖り刃・小のたれを交え、先へ刃幅を増して焼き、飛焼・湯走り・棟焼を地に及ぼして総体に皆焼となる態で、匂口は締まりごころに小沸よくつき、足・葉入り、砂流しを交える。この皆焼は広光・秋広以来の手と伝えられ、説明書は綱広をその系譜に置きつつ、現存作にあって彼らとは形状を異にすると明記して、襲ぐ名手その人とその手とを区別する。彫物もまた一派を貫く見どころで、真および草の倶利迦羅、梵字、三鈷剣、護摩箸、蓮台、八幡大菩薩や南無妙法蓮華経の陰刻文字を表裏に密に施し、樋中・櫃中の浮彫を得意とする。中でも総宗は彫の巧緻において長く名があり、末相州独特の構図の倶利伽羅を据える。古典相州の頂点と分かつのは、沸の深さと鉄の冴えにおける差であって、小田原の手は締まりごころの匂勝ちの匂口に角がかる互の目を複式・腰開きの態に焼き、地は肌立ちながらも締まる傾きを見せ、姿は短寸に先反りつくものが多い。一派のうちでも振れ幅があり、皮焼の手前の互の目交りの小乱れに控える静かな作から、棟焼まで覆う厚い華やかな皆焼に開く作までを含む。 鑑定の勘どころは、この一群を古典相州の名作から分かつところにある。すなわち、沸の冴えにおいて南北朝の頂点に一歩を譲りつつ、肌立つ板目杢に角がかり複式に傾く互の目乱れと、信仰に基づく緻密な彫物とを併せ持つ点を読む。主要工としては、室町中期に系の中核を定めた広正、相州伝の最末に立って皆焼と矢筈の刃を本領とし知名度も技量も高いとされる初代綱広、これと並び称せられて皆焼と彫物に優れた綱家が挙げられ、彫の巧緻によって一派から分かたれる総宗がこれに続く。鎌倉の面に立つ正広は南北朝以来の系を室町に伝え、皆焼風の乱れと彫物を遺す。なお江戸期の清平は加州兼若の系から稲葉家の抱工として小田原に転じた工で、相州在住の点で一派の名に連なるが、その作風は柾がかる加州物を基盤として別系をなす。伝来は概して大名家や寺社の格別な来歴を伴わず、その品位を支えるのは名高い由緒よりも、説明書が一口ごとに称える彫と鉄の質、そして在銘・生ぶに達した室町相州の稀少にある。在銘年紀の作はことに各代を読み分ける基準作となり、末期相州を学ぶ者にとって、相州伝の室町の様相を一口のうちに収める手がかりとなる。 詳しく見る →
室町時代の相州
戦国の世、一派は第二の主家に仕えた。小田原の後北条氏である。その庇護のもと綱広系は打刀の時代の皆焼を鍛え続け、1590年の落城とともに新刀の時代へ散った。
NTHKの中心的な鑑定書で、相応の出来を備えた作に発行されます。在銘作は銘の正真を、無銘作は審査員による刀工・流派の極めを示します。点数を記す詳細な審査表が付されます。
NTHK(日本刀剣保存会)は、NBTHK(1948年設立)に先立つ1910年に創立された、日本で最も古い刀剣鑑定団体です。長く会を率いた会長の没後、NTHKとNTHK-NPOの二つに分かれ、いずれも審査を続けています。NTHKの鑑定書は、点数と審査員の所見を併記する詳細な審査表が特徴で、特に無銘作の極めに定評があります。
We offer a 48 hour inspection period for all Antique items shipped within the United States only. If the item is not to your satisfaction, we will gladly refund your money less any shipping and handling fees. All sales are final after the 48 hour inspection period. Please note that all discounted items are a final sale and not returnable.