桐鳳凰図鐔 旭光斎東雲(花押) -Kyokkosai Tōun (kao)- 縦90.0ミリ 横83.3ミリ 切羽台厚4.7ミリ 重量184.0グラム 江戸後期 The late Edo period 附属 保存刀装具鑑定書、桐箱 旭光斎東雲は奈良派の流れをくむ江戸後期の金工で、詳しい伝歴には未詳の点を残すものの、一資料には天明6年(1786年)生まれと記されています。奈良派は絵画的な画題を巧みな鏨使いで地金へ写し取り、鉄、赤銅、四分一などの素材に肉彫や色金を取り合わせて、人物、動植物、故事などを格調高く表した一派であり、本作にも力強い鉄地と華麗な金工装飾を調和させる東雲の確かな力量が表れています。 鳳凰は優れた君主が治める平和な世に現れると伝えられる瑞鳥で、桐はその鳳凰が宿る瑞木とされ、両者を取り合わせた桐鳳凰図は太平、繁栄、家運隆盛を寿ぐ格調高い吉祥画題として、宮廷の装飾から武家の調度、刀装具に至るまで広く尊ばれてきました。 本作は大振りの撫角形鉄地に深く変化に富んだ槌目を施し、表の上方には大きく翼を広げる鳳凰、下方には葉と花を伴う桐を配しており、鳳凰の鋭い眼差しや冠羽、幾重にも重なる翼、左右へ長く翻る尾羽を鋤出彫と細密な彫線で描き分け、要所へ施した金布目象嵌によって瑞鳥の威容を鮮やかに引き立てています。 裏面には鳳凰を描かず、枝葉を伸ばす桐と三つの花房を画面いっぱいに巡らせ、表の躍動的な構図に対して植物文様の穏やかな広がりを見せており、二つの小透を巧みに取り込んだ左右非対称の配置と、切羽台を囲む余白が濃密な彫刻へ心地よい間を生み出しています。表裏を返すことで、鳳凰が桐へ舞い降りる華麗な場面と、瑞木のみが静かに繁る余韻ある景色を続けて鑑賞できる構成です。 黒褐色に育った地鉄と古金色の対照は華やかでありながら落ち着きがあり、尾羽や桐の茎、花、葉脈に残る金布目象嵌が光の方向に応じて細やかに浮かび上がり、耳に巡らされた金色の縁取りが重厚な画面全体を端正に引き締めています。大振りで量感豊かな鉄地、旭光斎東雲の在銘・花押、奈良派らしい絵画性と技巧を凝らした吉祥意匠が揃い、正面では堂々たる存在感、手元では槌目や鏨、布目象嵌の細部を味わえる、展示の中心を担うにふさわしい格調高い作品です。









町彫 · Edo
現在82点販売中
奈良派は、江戸時代中期に隆盛を見た刀装金工の一流派である。後藤家の格式に拠らず、独立した町彫の伝統として発展し、奈良一門の歴代の手を経てその名跡を伝えた。流派の声価を不動のものとしたのは、奈良利寿・土屋安親・杉浦乗意のいわゆる「奈良三作」である。三作の筆頭たる利寿は寛文七年に生まれ、安親はこれに次ぎ、乗意は元禄十四年の生まれにして三人の中では最も若い。安親は出羽国庄内藩士の子として生まれ、若くして正阿弥珍久に学んだ後、元禄十六年江戸へ出て奈良辰政に師事し、天性の才を開花させた。乗意は信州松本の人で、江戸に出て奈良利治門の寿永に学んだと伝えられる。かくして各地より集う才人を糾合し、奈良派は江戸金工の独立した諸流の中にあって最高峰の一角を占めるに至った。 作風においては、流派の標識として彫技と素材の幅広さが挙げられる。地鉄は赤銅・鉄・真鍮・朧銀・四分一・素銅など多様であり、これに石目地・槌目地・磨地などの地荒らしを施す。彫技は鋤出彫・高彫・毛彫・片切彫を基調とし、金・銀・赤銅・四分一・素銅といった色金を象嵌・色絵として的確に配して画題を生かす。三作はこの共通の語彙のうちに各々独自の境地を拓いた。利寿は人物図を得意とし、縁頭の製作に抜群の技を示し、鋤出高彫を基調として隅々にまで力の漲る重厚な彫口を見せる。安親は構図の取り方、色金の配し方、空間の表現において追随を許さぬ均衡を示し、人物・動物・山水・故事と多岐にわたる題材に詩情と物語性を込めた。乗意は朧銀磨地を地金とし、僅かな高低差を活かして対象の表情を豊かに表出する肉合彫の新技を編み出し、象嵌や色絵をあまり用いず鏨の力量のみで意匠を彫り上げた点に独壇場を示す。 評価と伝承においては、奈良派の諸工が刀装具という限られた画面のうちに装飾の域を超えた真の芸術的表現を達成した点が、その名声の根幹を成す。利寿の作は豪壮の気が自然に溢れる品格を備え、僅かな空間を最大限に活用して躍動感を与える技量に特色がある。安親の作には「安親ならでは」「安親の世界」といった文言が繰り返し用いられ、その独創性と芸術性の高さが讃えられ、晩年には古銭を意匠に取り入れた枯淡の作風も見られる。乗意の児落獅子図小柄は、肉合彫を駆使して千尋の谷に我が子を投げ込む獅子を彫り上げた会心の作として重要刀装具に指定され、落下する児獅子の力強さと崖上に見守る親獅子の表情に臨場感が溢れる。これら三作を頂点とする奈良派は、構図の卓抜、全幅にわたる技量の冴え、そして優品を芸術の高みへと昇華させる表現の深さによって、江戸金工の世界に確固たる地位を築き、後世に多大な影響を与えた名門である。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
NBTHK公式サイトお求めになられた商品とは異なる商品をお届けしてしまった場合や、表記内容と現物とに大きな隔たりなどがあった場合を除き、基本的に返品はお受けいたしません。返品をご要望の場合は、商品到着後3日以内に御連絡の上ご返送下さい。
¥236,500
桐鳳凰図鐔 旭光斎東雲(花押) -Kyokkosai Tōun (kao)- 縦90.0ミリ 横83.3ミリ 切羽台厚4.7ミリ 重量184.0グラム 江戸後期 The late Edo period 附属 保存刀装具鑑定書、桐箱 旭光斎東雲は奈良派の流れをくむ江戸後期の金工で、詳しい伝歴には未詳の点を残すものの、一資料には天明6年(1786年)生まれと記されています。奈良派は絵画的な画題を巧みな鏨使いで地金へ写し取り、鉄、赤銅、四分一などの素材に肉彫や色金を取り合わせて、人物、動植物、故事などを格調高く表した一派であり、本作にも力強い鉄地と華麗な金工装飾を調和させる東雲の確かな力量が表れています。 鳳凰は優れた君主が治める平和な世に現れると伝えられる瑞鳥で、桐はその鳳凰が宿る瑞木とされ、両者を取り合わせた桐鳳凰図は太平、繁栄、家運隆盛を寿ぐ格調高い吉祥画題として、宮廷の装飾から武家の調度、刀装具に至るまで広く尊ばれてきました。 本作は大振りの撫角形鉄地に深く変化に富んだ槌目を施し、表の上方には大きく翼を広げる鳳凰、下方には葉と花を伴う桐を配しており、鳳凰の鋭い眼差しや冠羽、幾重にも重なる翼、左右へ長く翻る尾羽を鋤出彫と細密な彫線で描き分け、要所へ施した金布目象嵌によって瑞鳥の威容を鮮やかに引き立てています。 裏面には鳳凰を描かず、枝葉を伸ばす桐と三つの花房を画面いっぱいに巡らせ、表の躍動的な構図に対して植物文様の穏やかな広がりを見せており、二つの小透を巧みに取り込んだ左右非対称の配置と、切羽台を囲む余白が濃密な彫刻へ心地よい間を生み出しています。表裏を返すことで、鳳凰が桐へ舞い降りる華麗な場面と、瑞木のみが静かに繁る余韻ある景色を続けて鑑賞できる構成です。 黒褐色に育った地鉄と古金色の対照は華やかでありながら落ち着きがあり、尾羽や桐の茎、花、葉脈に残る金布目象嵌が光の方向に応じて細やかに浮かび上がり、耳に巡らされた金色の縁取りが重厚な画面全体を端正に引き締めています。大振りで量感豊かな鉄地、旭光斎東雲の在銘・花押、奈良派らしい絵画性と技巧を凝らした吉祥意匠が揃い、正面では堂々たる存在感、手元では槌目や鏨、布目象嵌の細部を味わえる、展示の中心を担うにふさわしい格調高い作品です。









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奈良派は、江戸時代中期に隆盛を見た刀装金工の一流派である。後藤家の格式に拠らず、独立した町彫の伝統として発展し、奈良一門の歴代の手を経てその名跡を伝えた。流派の声価を不動のものとしたのは、奈良利寿・土屋安親・杉浦乗意のいわゆる「奈良三作」である。三作の筆頭たる利寿は寛文七年に生まれ、安親はこれに次ぎ、乗意は元禄十四年の生まれにして三人の中では最も若い。安親は出羽国庄内藩士の子として生まれ、若くして正阿弥珍久に学んだ後、元禄十六年江戸へ出て奈良辰政に師事し、天性の才を開花させた。乗意は信州松本の人で、江戸に出て奈良利治門の寿永に学んだと伝えられる。かくして各地より集う才人を糾合し、奈良派は江戸金工の独立した諸流の中にあって最高峰の一角を占めるに至った。 作風においては、流派の標識として彫技と素材の幅広さが挙げられる。地鉄は赤銅・鉄・真鍮・朧銀・四分一・素銅など多様であり、これに石目地・槌目地・磨地などの地荒らしを施す。彫技は鋤出彫・高彫・毛彫・片切彫を基調とし、金・銀・赤銅・四分一・素銅といった色金を象嵌・色絵として的確に配して画題を生かす。三作はこの共通の語彙のうちに各々独自の境地を拓いた。利寿は人物図を得意とし、縁頭の製作に抜群の技を示し、鋤出高彫を基調として隅々にまで力の漲る重厚な彫口を見せる。安親は構図の取り方、色金の配し方、空間の表現において追随を許さぬ均衡を示し、人物・動物・山水・故事と多岐にわたる題材に詩情と物語性を込めた。乗意は朧銀磨地を地金とし、僅かな高低差を活かして対象の表情を豊かに表出する肉合彫の新技を編み出し、象嵌や色絵をあまり用いず鏨の力量のみで意匠を彫り上げた点に独壇場を示す。 評価と伝承においては、奈良派の諸工が刀装具という限られた画面のうちに装飾の域を超えた真の芸術的表現を達成した点が、その名声の根幹を成す。利寿の作は豪壮の気が自然に溢れる品格を備え、僅かな空間を最大限に活用して躍動感を与える技量に特色がある。安親の作には「安親ならでは」「安親の世界」といった文言が繰り返し用いられ、その独創性と芸術性の高さが讃えられ、晩年には古銭を意匠に取り入れた枯淡の作風も見られる。乗意の児落獅子図小柄は、肉合彫を駆使して千尋の谷に我が子を投げ込む獅子を彫り上げた会心の作として重要刀装具に指定され、落下する児獅子の力強さと崖上に見守る親獅子の表情に臨場感が溢れる。これら三作を頂点とする奈良派は、構図の卓抜、全幅にわたる技量の冴え、そして優品を芸術の高みへと昇華させる表現の深さによって、江戸金工の世界に確固たる地位を築き、後世に多大な影響を与えた名門である。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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