源平合戦透鐔 無銘(彦根) -Mumei(Hikone)- 縦81.1ミリ 横75.6ミリ 切羽台厚4.4ミリ 重さ125.3グラム 江戸中期 The middle period of Edo era 附属 保存刀装具鑑定書、桐箱 彦根では江戸時代中期、喜多川宗典を代表とする藻柄子一派が活躍し、人物や山水を肉彫地透で濃密に構成し、金・銀・銅などの異種金属による色絵を加えた華麗な作風が盛行しました。こうした作は「彦根彫」と称され、宗典を中心とする一派の特色として知られています。京都国立博物館所蔵の宗典作にも、肉厚の地金を透彫し、人物や風景を高肉彫で表現して色絵を施す特徴が確認でき、18世紀の作とされています。 本作は縦81.1ミリという堂々たる鉄地を肉彫地透とし、寿永三年(1184)の一ノ谷合戦を題材として、武者、騎馬、舟、波濤、松樹、岩山などを表裏いっぱいに彫り込んだ実に見応えある一枚で、単に人物を並べるのではなく、遠景から近景へと連なる山野や海浜の景観の中へ武者たちを巧みに配することで、まるで『平家物語』の一場面を小さな鐔の中に凝縮したかのような壮大な物語世界を展開しています。 一ノ谷合戦は源平合戦を代表する戦いの一つであり、中でも平家の若武者平敦盛と源氏方の熊谷次郎直実の逸話は『平家物語』屈指の名場面「敦盛最期」として後世まで語り継がれ、武勇の華やかさと戦乱の世の無常を象徴する物語として能、幸若舞、絵画をはじめ数多くの芸術作品の題材となりました。本作においても、武者たちが織り成す緊迫した戦場の情景を周囲の山海と一体に描き出すことで、単なる合戦図にとどまらない物語性豊かな画面へと昇華されています。 細部へ目を移せば、人物の表情、甲冑、衣文、馬具に至るまで細やかな鏨を重ね、要所には金をはじめとする象嵌を配し、波間には銀の点象嵌を散らして波しぶきを表現するなど、見る位置を変えるたびに新たな情景が現れるほど手数の込んだ仕事が施され、さらに耳にはぐるりと金覆輪を巡らせることで、黒味を帯びた重厚な鉄地と金の輝きが鮮やかな対照を成し、81ミリを超える大型鐔ならではの堂々たる存在感に武家好みの格調と華やかさを添えています。 表だけで意匠を完結させず裏面に至るまで人物と景観を余すところなく展開している点も本作の大きな見所であり、手に取って表裏を返しながら眺めれば、武者の動きから馬、舟、岩山、松、波へと視線が次々に導かれ、一枚の鐔でありながら物語絵巻を紐解くような鑑賞の楽しみを味わうことができ、鉄地の彫刻、肉彫地透、異金属による色絵、金覆輪という多彩な技法を一作の中で楽しめるところにも、彦根人物鐔ならではの魅力が凝縮されています 本作には無銘ながら「彦根」と極められた保存刀装具鑑定書が附属しており、縦81.1ミリの堂々たる大きさ、一ノ谷合戦という武家文化を象徴する歴史画題、表裏にわたる濃密な人物群像、細部まで行き届いた彫技、鉄地と色金の鮮やかな対照、そして全周に巡らされた金覆輪までを兼ね備えた、まさしく掌中に『平家物語』の世界を収めたかのような一枚であり、武者図・合戦図を好まれる方にはもちろん、彦根彫の物語性と華麗な金工表現を存分に楽しみたい愛好家にも、ぜひコレクションに加えていただきたい魅力溢れる優品です。








金工 · 近江
現在33点販売中
彦根派は、近江国彦根に興った刀装具の一流派であり、その彫法は世に彦根彫の名をもって知られる。開祖は藻柄子入道宗典で、『装剣奇賞』によれば元来は京都の出身と伝えられ、後に江州彦根に移住して彦根彫の祖となったという。彦根御家中川北氏の抱え工となり、氏を喜多川(喜多河)と改め、初銘を秀典と称した。同名二代があるといい、現存する行年紀作などから初代は承応元年に生まれたことが知られ、その活躍期は江戸時代前期から中期にかけてである。美濃彫の流れを汲むとも伝えられ、作風に後藤風、美濃風が見られるとする見解もある。宗典の門からは野村包教をはじめとする有力な作者が輩出し、包教は宗典門第一の上手と称され、同派の有力な分派として独自の地位を確立した。 作風は、鉄地または赤銅魚子地を用い、鋤出高彫に金・銀・赤銅・素銅などの各種の色金を駆使した象嵌色絵をもって飾るものが多い。たっぷりとした地の表裏画面一杯に主題を肉置き豊かな高彫で表し、各種の色金にかつ金の種類をも複数使用して、壮大な画面に仕立てる点に大きな特色がある。題材は武者、竹林の七賢、花鳥、藻貝尽くし、唐人物、群仙図、十二支など多岐にわたり、また『源氏物語』の「明石」や『小督』の物語に取材した作例も見られる。賑やかに華やかに展開する様はまさに宗典の真骨頂であり、その彫口はおおらかでゆったりとしており、観る者を幽玄の世界に誘うと評される。包教もまた、大胆な構成力と繊細な色がね象嵌をもって画面を広く使い物語を演出し、師の作風を継承しつつ独自の魅力を加えた。 彦根派の作は、その濃密な彫法によって名を馳せ、宗典は代表工として多くの鐔好きを魅了した。ともすれば賑々しい鐔は行き過ぎの感を否めないこともあるが、宗典の手にかかると不思議と行き過ぎ感がないばかりか、品格をも兼ね備えた豪華な優鐔となる。包教の作もまた、師である宗典の傑作に勝るとも劣らない出来と評され、その白眉と見られる一枚も伝えられている。一方、宗典の名はあまりにも有名であったために、後代の彦根彫の作品に宗典の刻銘が多用され、土産物といわれる粗悪な作品にまで刻銘されているのが現実である。それゆえ真作においては、賑々しい作柄に品格を兼ね備えた豪華な優鐔が多く、行年銘が貴重であり、保存状態が良いことも好ましい評価の点とされる。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
NBTHK公式サイトお求めになられた商品とは異なる商品をお届けしてしまった場合や、表記内容と現物とに大きな隔たりなどがあった場合を除き、基本的に返品はお受けいたしません。返品をご要望の場合は、商品到着後3日以内に御連絡の上ご返送下さい。
¥440,000
源平合戦透鐔 無銘(彦根) -Mumei(Hikone)- 縦81.1ミリ 横75.6ミリ 切羽台厚4.4ミリ 重さ125.3グラム 江戸中期 The middle period of Edo era 附属 保存刀装具鑑定書、桐箱 彦根では江戸時代中期、喜多川宗典を代表とする藻柄子一派が活躍し、人物や山水を肉彫地透で濃密に構成し、金・銀・銅などの異種金属による色絵を加えた華麗な作風が盛行しました。こうした作は「彦根彫」と称され、宗典を中心とする一派の特色として知られています。京都国立博物館所蔵の宗典作にも、肉厚の地金を透彫し、人物や風景を高肉彫で表現して色絵を施す特徴が確認でき、18世紀の作とされています。 本作は縦81.1ミリという堂々たる鉄地を肉彫地透とし、寿永三年(1184)の一ノ谷合戦を題材として、武者、騎馬、舟、波濤、松樹、岩山などを表裏いっぱいに彫り込んだ実に見応えある一枚で、単に人物を並べるのではなく、遠景から近景へと連なる山野や海浜の景観の中へ武者たちを巧みに配することで、まるで『平家物語』の一場面を小さな鐔の中に凝縮したかのような壮大な物語世界を展開しています。 一ノ谷合戦は源平合戦を代表する戦いの一つであり、中でも平家の若武者平敦盛と源氏方の熊谷次郎直実の逸話は『平家物語』屈指の名場面「敦盛最期」として後世まで語り継がれ、武勇の華やかさと戦乱の世の無常を象徴する物語として能、幸若舞、絵画をはじめ数多くの芸術作品の題材となりました。本作においても、武者たちが織り成す緊迫した戦場の情景を周囲の山海と一体に描き出すことで、単なる合戦図にとどまらない物語性豊かな画面へと昇華されています。 細部へ目を移せば、人物の表情、甲冑、衣文、馬具に至るまで細やかな鏨を重ね、要所には金をはじめとする象嵌を配し、波間には銀の点象嵌を散らして波しぶきを表現するなど、見る位置を変えるたびに新たな情景が現れるほど手数の込んだ仕事が施され、さらに耳にはぐるりと金覆輪を巡らせることで、黒味を帯びた重厚な鉄地と金の輝きが鮮やかな対照を成し、81ミリを超える大型鐔ならではの堂々たる存在感に武家好みの格調と華やかさを添えています。 表だけで意匠を完結させず裏面に至るまで人物と景観を余すところなく展開している点も本作の大きな見所であり、手に取って表裏を返しながら眺めれば、武者の動きから馬、舟、岩山、松、波へと視線が次々に導かれ、一枚の鐔でありながら物語絵巻を紐解くような鑑賞の楽しみを味わうことができ、鉄地の彫刻、肉彫地透、異金属による色絵、金覆輪という多彩な技法を一作の中で楽しめるところにも、彦根人物鐔ならではの魅力が凝縮されています 本作には無銘ながら「彦根」と極められた保存刀装具鑑定書が附属しており、縦81.1ミリの堂々たる大きさ、一ノ谷合戦という武家文化を象徴する歴史画題、表裏にわたる濃密な人物群像、細部まで行き届いた彫技、鉄地と色金の鮮やかな対照、そして全周に巡らされた金覆輪までを兼ね備えた、まさしく掌中に『平家物語』の世界を収めたかのような一枚であり、武者図・合戦図を好まれる方にはもちろん、彦根彫の物語性と華麗な金工表現を存分に楽しみたい愛好家にも、ぜひコレクションに加えていただきたい魅力溢れる優品です。








金工 · 近江
現在33点販売中
彦根派は、近江国彦根に興った刀装具の一流派であり、その彫法は世に彦根彫の名をもって知られる。開祖は藻柄子入道宗典で、『装剣奇賞』によれば元来は京都の出身と伝えられ、後に江州彦根に移住して彦根彫の祖となったという。彦根御家中川北氏の抱え工となり、氏を喜多川(喜多河)と改め、初銘を秀典と称した。同名二代があるといい、現存する行年紀作などから初代は承応元年に生まれたことが知られ、その活躍期は江戸時代前期から中期にかけてである。美濃彫の流れを汲むとも伝えられ、作風に後藤風、美濃風が見られるとする見解もある。宗典の門からは野村包教をはじめとする有力な作者が輩出し、包教は宗典門第一の上手と称され、同派の有力な分派として独自の地位を確立した。 作風は、鉄地または赤銅魚子地を用い、鋤出高彫に金・銀・赤銅・素銅などの各種の色金を駆使した象嵌色絵をもって飾るものが多い。たっぷりとした地の表裏画面一杯に主題を肉置き豊かな高彫で表し、各種の色金にかつ金の種類をも複数使用して、壮大な画面に仕立てる点に大きな特色がある。題材は武者、竹林の七賢、花鳥、藻貝尽くし、唐人物、群仙図、十二支など多岐にわたり、また『源氏物語』の「明石」や『小督』の物語に取材した作例も見られる。賑やかに華やかに展開する様はまさに宗典の真骨頂であり、その彫口はおおらかでゆったりとしており、観る者を幽玄の世界に誘うと評される。包教もまた、大胆な構成力と繊細な色がね象嵌をもって画面を広く使い物語を演出し、師の作風を継承しつつ独自の魅力を加えた。 彦根派の作は、その濃密な彫法によって名を馳せ、宗典は代表工として多くの鐔好きを魅了した。ともすれば賑々しい鐔は行き過ぎの感を否めないこともあるが、宗典の手にかかると不思議と行き過ぎ感がないばかりか、品格をも兼ね備えた豪華な優鐔となる。包教の作もまた、師である宗典の傑作に勝るとも劣らない出来と評され、その白眉と見られる一枚も伝えられている。一方、宗典の名はあまりにも有名であったために、後代の彦根彫の作品に宗典の刻銘が多用され、土産物といわれる粗悪な作品にまで刻銘されているのが現実である。それゆえ真作においては、賑々しい作柄に品格を兼ね備えた豪華な優鐔が多く、行年銘が貴重であり、保存状態が良いことも好ましい評価の点とされる。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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