本作は加賀藩前田家の庇護のもと、加賀の地で独自の発展を遂げた加賀後藤派による双龍図小柄です。 深みのある赤銅磨地に、雲中を舞う二匹の龍を精緻な金象嵌で描き出しています。雲は地鉄から自然に湧き上がるような肉高の彫り口で表現され、画面に豊かな奥行きと躍動感を与えています。背景には繊細な魚子地が施され、光り輝く龍との対比が実に優美です。枠は金で仕立てられており、格調高く華やかな趣を一層引き立てています。裏面には加賀後藤の特色である丁寧な鑢目が残されており、技術的な精緻さと芸術的な抑制美を兼ね備えています。保存状態は極めて良好で、凹みや擦れも殆ど見られず、繊細な象嵌の意匠が当時のままに保たれている点は特筆に値します。 作風は後藤本家の古典的な美意識を継承しつつも、細部の表現に独自の差異が見て取れます。耳のタガネ運びなどは本家とは異なるものの、爪や角に見られる三角形のタガネ(後藤家伝統の「後藤無類タガネ」)には本家の技法が色濃く反映されており、製作年代は江戸初期、本家七代から九代の頃と推測されます。龍の描写は本家よりも動的で力強く、加賀の地で育まれた独自の芸術性が伺えます。 構図もまた劇的かつ調和が取れています。右側の龍は小柄の端から中央へと伸び、その爪で宝珠を掴んでいます。尾の先は剣の形を成しており、強靭な力と精神性を象徴しています。一方、左側の龍は背後から優雅に身をくねらせて現れ、相棒の方へと頭を向けており、二龍の間に生き生きとした対話が生まれています。 華やかでありながらも品格を失わない、加賀後藤の円熟した美意識が凝縮された名品です。















加賀後藤派
江戸
加賀
家彫 · 加賀
現在27点販売中
加賀後藤は、加賀前田家が京都より後藤家の名工を招いたことに始まる後藤一門の地方分流である。祖となる後藤覚乗光信は天正十七年(一五八九)京都に生まれ、長乗の次男にして祖父光乗の孫にあたる。家康公の上意により、宗家ではない勘兵衛家の覚乗が後藤家一子相伝の秘法を祖父光乗から残らず受け継いだことは特筆すべき事項である。加賀前田家に金工家としては破格の百五十石で召し抱えられ、前田利常公にも重用されて側近くに御供するなど格別に取り立てられた。覚乗の後を受けて加賀後藤を盛り立てたのが後藤悦乗光邦である。悦乗は後藤本家九代目程乗の次男で寛永十九年(一六四二)京都に生まれ、理兵衛家を盛りたて、勘兵衛家の演乗と隔年ごとに加州金沢に住して前田家に出仕し、多くの門人を育成して加州金工の発展に尽力した。宝永五年(一七〇八)六十七歳で歿している。 作風は専ら後藤の御家流を継承し、赤銅魚子地を基調とした高彫金色絵を一貫した技法の柱とする。覚乗の倶利伽羅図二所では金魚子地に金銀赤銅の据紋を配し、祐乗以来の意匠を力強く彫出しており、鶴卵孵化図二所では赤銅魚子地に高彫金銀色絵を施し、雛の躍動する姿と卵殻の鋭い質感を見事に表現している。悦乗の鯱図三所物は赤銅波文地に金紋を据え、大振りながら隅々まで細緻な鏨が活きた渾身の一作と評される。葵紋を散らした糸巻太刀拵の総金具では赤銅魚子地に鋤出高彫・金色絵・金小縁を駆使し、式正の仕立に豪華な品格を備える。悦乗の在銘作には父程乗同様の肉置と仕立が認められ、筍図三所物では「笄・小柄の仕立、肉置は全く程乗同様であり、金の色あいもよく、彫技も傑出している」と称される。枝菊文鐔のごとき無銘作にあっても「さすがに格調があり、出来も見事である」と鑑されるなど、一門の技術水準の高さが窺える。 覚乗は前田家の抱え工であったため現存する作品が少なく、光邦の在銘三所物も「非常に少なく」「後藤家研究の好資料」と位置づけられる。その希少さゆえに、指定品の一点一点が後藤家の技術伝承を跡づける学術的価値を有する。悦乗の作風は「父程乗にも劣らず上手」と評され、加賀後藤の発展に寄与した功績は鞘・金具双方の優品を通じて明らかである。覚乗による一子相伝の秘法の継承から、悦乗・演乗の隔年出仕を経て門弟育成に至るまで、加賀後藤は後藤宗家の正統な技法を加賀の地に根付かせ、後藤一門の伝統の中で独自の位置を占める重要な一流である。
販売店の出品ページで鑑定書を確認できませんでした。日本刀および刀装具は通常、NBTHK(または NTHK)の鑑定を受けます。鑑定書がない場合、極めは販売店の見解にとどまり、第三者による確認は行われていません。ご購入前に販売店へ鑑定書の有無をお問い合わせのうえ、慎重にご判断ください。
All sales are final and no refund will be issued. Individual refund conditions may be offered on request. For items with third-party certificates (e.g. NBTHK), a return is offered if the certificate is proven falsified and claimed within one year after shipment.
本作は加賀藩前田家の庇護のもと、加賀の地で独自の発展を遂げた加賀後藤派による双龍図小柄です。 深みのある赤銅磨地に、雲中を舞う二匹の龍を精緻な金象嵌で描き出しています。雲は地鉄から自然に湧き上がるような肉高の彫り口で表現され、画面に豊かな奥行きと躍動感を与えています。背景には繊細な魚子地が施され、光り輝く龍との対比が実に優美です。枠は金で仕立てられており、格調高く華やかな趣を一層引き立てています。裏面には加賀後藤の特色である丁寧な鑢目が残されており、技術的な精緻さと芸術的な抑制美を兼ね備えています。保存状態は極めて良好で、凹みや擦れも殆ど見られず、繊細な象嵌の意匠が当時のままに保たれている点は特筆に値します。 作風は後藤本家の古典的な美意識を継承しつつも、細部の表現に独自の差異が見て取れます。耳のタガネ運びなどは本家とは異なるものの、爪や角に見られる三角形のタガネ(後藤家伝統の「後藤無類タガネ」)には本家の技法が色濃く反映されており、製作年代は江戸初期、本家七代から九代の頃と推測されます。龍の描写は本家よりも動的で力強く、加賀の地で育まれた独自の芸術性が伺えます。 構図もまた劇的かつ調和が取れています。右側の龍は小柄の端から中央へと伸び、その爪で宝珠を掴んでいます。尾の先は剣の形を成しており、強靭な力と精神性を象徴しています。一方、左側の龍は背後から優雅に身をくねらせて現れ、相棒の方へと頭を向けており、二龍の間に生き生きとした対話が生まれています。 華やかでありながらも品格を失わない、加賀後藤の円熟した美意識が凝縮された名品です。















加賀後藤派
江戸
加賀
家彫 · 加賀
現在27点販売中
加賀後藤は、加賀前田家が京都より後藤家の名工を招いたことに始まる後藤一門の地方分流である。祖となる後藤覚乗光信は天正十七年(一五八九)京都に生まれ、長乗の次男にして祖父光乗の孫にあたる。家康公の上意により、宗家ではない勘兵衛家の覚乗が後藤家一子相伝の秘法を祖父光乗から残らず受け継いだことは特筆すべき事項である。加賀前田家に金工家としては破格の百五十石で召し抱えられ、前田利常公にも重用されて側近くに御供するなど格別に取り立てられた。覚乗の後を受けて加賀後藤を盛り立てたのが後藤悦乗光邦である。悦乗は後藤本家九代目程乗の次男で寛永十九年(一六四二)京都に生まれ、理兵衛家を盛りたて、勘兵衛家の演乗と隔年ごとに加州金沢に住して前田家に出仕し、多くの門人を育成して加州金工の発展に尽力した。宝永五年(一七〇八)六十七歳で歿している。 作風は専ら後藤の御家流を継承し、赤銅魚子地を基調とした高彫金色絵を一貫した技法の柱とする。覚乗の倶利伽羅図二所では金魚子地に金銀赤銅の据紋を配し、祐乗以来の意匠を力強く彫出しており、鶴卵孵化図二所では赤銅魚子地に高彫金銀色絵を施し、雛の躍動する姿と卵殻の鋭い質感を見事に表現している。悦乗の鯱図三所物は赤銅波文地に金紋を据え、大振りながら隅々まで細緻な鏨が活きた渾身の一作と評される。葵紋を散らした糸巻太刀拵の総金具では赤銅魚子地に鋤出高彫・金色絵・金小縁を駆使し、式正の仕立に豪華な品格を備える。悦乗の在銘作には父程乗同様の肉置と仕立が認められ、筍図三所物では「笄・小柄の仕立、肉置は全く程乗同様であり、金の色あいもよく、彫技も傑出している」と称される。枝菊文鐔のごとき無銘作にあっても「さすがに格調があり、出来も見事である」と鑑されるなど、一門の技術水準の高さが窺える。 覚乗は前田家の抱え工であったため現存する作品が少なく、光邦の在銘三所物も「非常に少なく」「後藤家研究の好資料」と位置づけられる。その希少さゆえに、指定品の一点一点が後藤家の技術伝承を跡づける学術的価値を有する。悦乗の作風は「父程乗にも劣らず上手」と評され、加賀後藤の発展に寄与した功績は鞘・金具双方の優品を通じて明らかである。覚乗による一子相伝の秘法の継承から、悦乗・演乗の隔年出仕を経て門弟育成に至るまで、加賀後藤は後藤宗家の正統な技法を加賀の地に根付かせ、後藤一門の伝統の中で独自の位置を占める重要な一流である。
販売店の出品ページで鑑定書を確認できませんでした。日本刀および刀装具は通常、NBTHK(または NTHK)の鑑定を受けます。鑑定書がない場合、極めは販売店の見解にとどまり、第三者による確認は行われていません。ご購入前に販売店へ鑑定書の有無をお問い合わせのうえ、慎重にご判断ください。
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