説明書は青江の記録を、いずれの刀よりも古い文献から説き起こす。十一世紀初頭の往来物『新猿楽記』は諸国の名産物を列記する中に、既に「備中ノ刀」を挙げている。高梁川下流域に栄えた青江派の刀工はその高い評価を受け継ぎ、鎌倉時代中期頃までの作を古青江、以後南北朝期にかけてを青江と大別する。貞次は「青江鍛冶の代表工である貞次」とされ、同名は南北朝時代に至るまで継承された。
説明書はこの名の意味するところに率直である。貞次銘の作には小振りな銘、尋常な銘、やや時代の下る銘のものがあり、ゆえに「一人ではないとみられる」。第二十二回重要刀剣の在銘太刀は小振りの二字銘で、「古青江の中でもやや時代が下る」作とされる。
この太刀が典型を示す。鎬造、庵棟、反り深く、中鋒。銘は佩裏の茎尻近く棟寄りに切り、生ぶ茎の鑢目は大筋違である。鍛えは板目に杢を交え、刃寄りに柾ごころがあり、地沸つき地斑を交える。刃文は細直刃で、匂口締りごころに小沸がつき、帽子は直ぐに小丸となる。
第七十回の磨上げの一口は、同じ作風をより精良な地に見せる。小板目肌がよくつみ、地沸厚くつき、地景がよく入って、地斑調の映りが立つ。直刃を基調に少しく小互の目を交え、僅かに足入り、匂勝ちに小沸つき、指裏物打辺に飛焼がかかる。説明書は「端正な直刃に程良く小互の目が交じり」、地鉄の精良さと穏やかで優しい姿も相俟って「青江派の品格を感じさせる一口である」とする。目釘孔が複数あることから磨上が数度行われたことが窺われ、いずれの際にか折返銘を補修して、「備中国住人貞次作」と読む貼銘に仕立て直された。
重要文化財二口が記録をさらに広げ、その図版解説は姿・鍛え・刃文のみを記す。国の所有として東京国立博物館に保管される在銘の太刀は、小板目に杢交りの鍛えに、直刃に丁子・小乱れ交りの刃文を焼く。「名物大青江」と呼ばれる刀は磨上げられて金象嵌の銘と本阿弥の極めを負い、小板目に広直刃を焼く。
指定を受けた作は四口で、重要文化財二口と重要刀剣二口である。重要文化財は国の文化財として動くことはなく、うち一口は国の所蔵にある。蒐集家が出会い得るのは、いずれも静かな直刃の作である重要刀剣の二口に限られ、在銘の貞次が市に現れることは稀であり、現れればひとつの出来事となる。