後藤祐乗は、後藤家の初代であり、日本彫物の元祖と仰がれ、古今独歩の鏨師と賞賛されている。将軍足利義政に仕え、東山文化の一翼を担い、彼の作品も東山御物として数多く取り上げられている。従って、後世に名を残した名工は、挙って後藤家の祐乗に範をとっている。生歿年に関しては永享十二年に生まれ、永正九年に七十三歳で歿した説が有力である。後藤家における確固たる地位は、後代の極めにも表れており、七代顕乗、九代光昌、十二代寿乗光理、十三代延乗光孝らが祐乗の作と鑑定した例が確認できる。
祐乗の作風は、刀装具の素材や意匠に多様性が見られる。金無垢地を用いた目貫では、伝統的な画題である獅子や龍を得意とし、豊かな肉置きを表現した精緻な鏨運びが特徴である。特に龍の意匠は後藤家御家彫の伝統的な画題であり、その様式はこの祐乗が考案したといわれている。赤銅地を用いた作品では、魚子地を施し、金紋を高彫で表す。この場合、小柄や笄などの三所物として構成されることが多い。また、赤銅一色の作品も見られ、枯淡の境地に迫った作例も存在する。作風における鑑定上の要点としては、龍の額の八文字の形状、耳や蛇腹、陰陽根の形式などが挙げられる。特に目貫の裏に見られる陰陽根添え根付、いわゆる二つ根は室町時代中期以前の作品に稀に見受けるものであって、後藤家でこの特徴を有するのは祐乗だけで、祐乗の目貫でも稀に見られる特徴である。
祐乗の作品は、その卓越した技術と 芸術的な価値から、後藤家の中でも別格の存在として位置づけられている。説示においては、「雄渾」、「覇気が漲る」、「格調高い」、「出来が優れている」といった評価が繰り返し見られ、その作柄の高さが窺える。また、「時代感溢れる摩耗の状態」や「古格」といった要素も、作品の価値を高める要因として認識されている。祐乗の作品は、後藤家の伝統を確立し、後世に多大な影響を与えただけでなく、日本の刀装具史においても重要な位置を占めている。