大和を支えた大寺の力は室町を通じて衰え、諸派もこれとともに細った。末手掻が古風な柾目を量産のうちに伝えている。1567年の東大寺大仏殿の炎上が、寺院の時代の幕を引いた。
特別保存刀剣 銘:備州住久光 【解説】 本作は「備州住久光」と銘がある一振りです。 「備州」とは現在の岡山県にあたる備後国を指します。『日本刀銘鑑』によれば、久光は永正年間(1504-1521年)頃に備後で活動した刀工です。また、本作は日本美術刀剣保存協会(NBTHK)により「伝辰房(たつぼう)」と鑑定されています。辰房派は室町時代初期に隆盛した刀工群で、重光を祖とし、備後国を拠点としました。同国を代表する三原派の傍系とされており、古式ゆかしい作風と室町初期の格調高い美しさを今に伝えています。 久光が属した辰房派の作品は、三原派の技術的特色を継承しつつも、独自の個性を備えています。洗練された姿(なり)と古典的な刃文を強調したその作風は、実用性と審美性の双方を重んじた当時の武士たちから高く評価されました。 三原派について: 三原派は鎌倉時代後期(13世紀末〜14世紀初頭)に国分寺助国によって創始されました。日本刀の専門用語では、その年代によって三つの区分に分けられます。南北朝時代(1300年代)以前のものは「古三原」、室町時代初期から中期にかけてのものは「三原」、そして室町時代末期のものは「末三原」と呼ばれます。 古来、備後国には大和地方(現在の奈良県)の有力寺院が所有する荘園が多く存在しました。これらの所領を守護するために多くの武士団が組織され、彼らの需要に応えるべく、大和伝の技術を持つ刀工たちが備後へと移住しました。そのため、三原派の作風には大和気質が色濃く反映されています。 本作は日本美術刀剣保存協会(NBTHK)より「特別保存刀剣」に指定されています。この鑑定書は、保存状態が極めて良好であり、かつ美術品としての価値が特に高い真作の日本刀に対してのみ発行されるものです。 ※刀身には数箇所の鍛え傷と黒錆の点在が見られます。詳細なコンディションについては、お気軽にお問い合わせください。 【刀身】 長さ(Nagasa):69.4 cm 反り(Sori):1.8 cm 刃文(Hamon):焼入れによって刃先に現れる結晶構造。 地文(Jihada):鍛錬の過程で現れる鋼の表面模様。 切先(Kissaki):刀身の先端部分。 茎(Nakago):柄に収まる中心(なかご)部分。 刀工は柄内での赤錆を防ぐために、意図的に茎に黒錆を残します。この経年による錆色は、専門家が制作年代を推定する上での重要な指標となります。 【拵】 拵(Koshirae):鞘、柄、鍔などから構成される外装。 縁頭(Fuchi-Kashira):柄の両端を保護する一対の金具。 本作の縁頭には「蝶」が描かれています。蝶はその成長過程や美しさから、吉祥文様として古くから好まれてきました。幼虫からさなぎを経て成虫へと劇的な変化を遂げる姿は「再生」や「不滅」の象徴とされ、武士の間でも深く愛されました。また、蝶は人の魂が宿るもの、あるいは生と死、復活の象徴としても捉えられています。 柄・目貫(Tsuka / Menuki): 柄は刀を握るための部位であり、目貫は柄の指がかりを良くするための装飾金具です。


























大和伝 · 備後
現在32点販売中
備後国三原派の起源と展開 備後国三原派は、鎌倉時代末期の正和または正中年間(一三一二〜一三二六)頃に正家を祖として興り、南北朝時代を経て室町時代末期に至るまで繁栄した一派である。一派のうち鎌倉末期より南北朝期にかけてのものを古三原と汎称し、正家・正広を双璧とし、他に正光・政清・正信・政広などの工が知られる。備後国はもとより古代から鉄製品の産地として名高く、『政事要略』の延喜十四年(九一四)の条にもその記述が見られる。この地方は永く大和の東寺や蓮華王院、高野山など畿内中央の社寺の荘園が多く置かれており、大和との交流が頻繁に行われていた。三原派の作風に大和気質が色濃く窺われるのは、こうした地理的・社会的背景によるものと推察される。 三原派の作風と技術的特質 三原派の作風は前述の如く大和気質が顕著にあらわれるものであるが、大和本国のものに比べては地刃の沸が弱いのが一般的で、独特の特色を備えている。鍛えは板目に杢目や流れ肌が交じり、処々強く流れて柾がかり、総体に肌立ちごころとなり、地沸が微塵につき、淡く白け映りが立つ点が顕著である。刃文は直刃を基調とし、細直刃調に小互の目を交えて焼き、匂口が締まりごころとなり、小沸がつき、刃縁に細かなほつれや打のけ、喰違い刃などが頻りに交じり、匂口が沈みごころとなるのが特徴的である。帽子は直ぐに小丸または大丸風に返り、先を細かに掃きかける、いわゆる「三原もの独特の滝落とし風」となって穏やかな趣を示す。姿は南北朝時代の特色を反映し、身幅が広めで元先の幅差が目立たず、反りが浅くつき、中鋒または大鋒に結んだ堂々とした体配を呈するものが多く、また鎬が高めとなり、この点にも大和気質の影響が認められる。 伝承と文化的意義 古三原の作刀は、大和伝の技術的影響を受けながらも備後国独自の個性を確立した点において、日本刀史上重要な位置を占めている。その地刃の様相に大和色を強くあらわしながらも、白け映りの立つ独特の地鉄や締まった匂口など、大和本国とは異なる特質を顕現させており、大和伝亜流としての独自性を如実に物語っている。堂々とかつ雄渾な姿形には迫力があり、刃縁にあらわれた細かな働きは味わい深く、頑健な体配と相俟って武用に適した実践的な美を備えている。藩政時代には吉川家など諸大名家に伝来したものも多く、その評価の高さが窺われる。本阿弥家による鑑定においても三原極めの折紙が数多く伝存しており、江戸時代以降の刀剣鑑賞史においても重視されてきた一派である。 詳しく見る →
室町時代の大和
大和を支えた大寺の力は室町を通じて衰え、諸派もこれとともに細った。末手掻が古風な柾目を量産のうちに伝えている。1567年の東大寺大仏殿の炎上が、寺院の時代の幕を引いた。
保存刀剣のうち、出来が一層優れ、保存状態も良好と認められたものです。再刃や、室町・江戸期の多くの無銘作は対象外となり、保存刀剣より高い基準が課されます。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
NBTHK公式サイトReturns/exchanges limited to defects caused by shipping (except willful misconduct or gross negligence by the company); customers must contact within 72 hours of receiving the product.