駒曳猿図鐔 無銘(埋忠) -Mumei (Umetada)- 縦84.3ミリ 横77.3ミリ 切羽台厚3.9ミリ 重さ155.4グラム 江戸初期 The early period of Edo era 附属 保存刀装具鑑定書、桐箱 本作は埋忠と極められた、駒曳猿図の鉄地変り形鐔です。大振りな変り形の鉄地を用い、表裏に吉祥性と物語性を備えた情景を巧みに描き出しています。 地鉄はよく鍛えられ、時代を経た落ち着いた鉄味を呈しています。外形は定型に収まらない伸びやかな変り形で構成されており、埋忠派らしい自由な造形感覚と絵画的な意匠がよく表れています。 表には烏帽子を被り衣服をまとった猿が表され、右手には扇を持ち、左手で馬を曳く姿が高肉彫によって生き生きと描かれています。馬は力強い体躯で表現され、猿の仕草と相まって画面に豊かな動きを与えています。要所には金象嵌や色絵が施され、落ち着いた鉄地との対比によって上品な華やかさを添えています。 裏面には飛翔する鳥を配し、その上方には連なる山々と思われる景色が表されています。限られた鐔面の中に広がりのある風景を巧みに構成しており、表の駒曳猿図と呼応しながら一幅の絵巻を見るかのような趣を醸し出しています。 駒曳猿は古くから親しまれた吉祥図であり、猿が馬を曳く姿には平穏や繁栄への願いが込められています。本作は埋忠派ならではの自由闊達な意匠感覚と古雅な鉄味が見事に調和した作品であり、大振りな変り形の造込みも相まって、桃山から江戸初期にかけての金工美術の魅力を今に伝える見所豊かな優品です。
Certificate reading — 無銘(梅忠)








新刀 · Kyoto
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埋忠派は桃山時代を代表する金工集団であり、刀装具制作において後藤家と並び称される名流である。その鐔制作の技術は他の追随を許さず、古来より「埋忠鐔」の名を以て絶賛されている。特に埋忠彦次郎を中心とする本流は、吉川広家指料の「碇切り」に代表される苔鑢の妙技で知られ、金無垢地に施された鑢目の高尚な品格は筆舌に尽くせないほどである。桃山期における溌剌とした芸術精神を反映し、鐔の世界に新生面を拓いた。 作風の特徴として、金無垢、素銅、真鍮など多様な地金を用い、絶妙な肉取りの平地に締まった肉置きを見せる。斜めに掛けられた鑢や角耳の鑢仕立ては埋忠の真髄であり、切羽台外周に施された微妙な角度の配慮は、拵や刀装具を熟知した技術者ならではの工夫である。意匠は桜花透、胡蝶透、葡萄文、菊唐草文など図案化された文様を陰透や平象嵌で表し、明寿が創始した赤銅・銀・金の平象嵌研出しの技法は極めて効果的である。家紋を散らした刻印打込や七宝象嵌など装飾性に富み、絵画的で雅な雰囲気が満ちている。 江戸時代に入ると京都金工界において後藤、平田、正阿弥と各派が互いに影響し合い、埋忠派もその作風に変化を見せている。埋忠寿斉の銘がある慶長十年正月の縁頭は、金無垢地に家紋散図を施した豪華な仕立てであり、上層武家の需要に応えた作例として知られる。金無垢の鐔は度々の激動期に鋳潰されたため桃山期以前の作品は極めて少なく、現存する作例は資料的にも貴重である。埋忠二字銘の作品も江戸前期に見られ、明寿に近い出来を示すものもある。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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