埋忠重成は、京都西陣に連なる埋忠派の金工で、埋忠重義の門人と伝えられます。埋忠派は刀剣や鐔の制作に加え、名刀の仕立て直しや鎺の製作など幅広い仕事を手がけた一門であり、重成にも鉄地の彫りへ金銀の象嵌を取り合わせた作例が伝わります。本品には切羽台を挟んで「山城國西陣住」「埋忠重成」と長銘が切られています。 画題は、雲間から昇る旭日と岩へ打ち寄せる波濤であり、海上の初日の出にも通じる清新で吉祥性豊かな景色を表しています。左上の旭日には金布目象嵌を広く施して、黒褐色の鉄地から朝の光が鮮やかに現れるさまを描き、右下には波間に屹立する岩を肉彫で起こして、その岩肌へ金象嵌を散らしています。鐔面の大半を満たす波は細く連続する筋彫とふくらみのある波頭によって表され、右下で岩へ砕ける激しい流れから左下へうねりながら広がる波筋まで視線が自然に導かれ、飛び散る飛沫へ点々と置かれた金象嵌が、朝日を受けて一瞬きらめく水滴のような生気を添えています。 表面では旭日、雲、岩、波を一つの景色として組み立て、金の面、点、細片を使い分けることで光の強弱まで描き分ける一方、裏面は波濤のみを簡潔に配し、広い鉄地の静けさを残しています。華やかな表と抑制された裏を返しながら鑑賞すると、旭日の下で岩へ砕ける波の力強さから、遠くへ連なる海面の余韻へと景色が続き、限られた鐔面の表裏に異なる距離感を作り出した構成の巧みさを味わえます。 竪丸形の鉄地は脇指用として引き締まった姿に整えられ、耳には銀覆輪を巡らせて黒褐色の鉄地と黄金色の旭日を端正に引き締め、金、銀、鉄という3つの色調が互いを引き立てる格調高い仕立てとなっており、茎孔の上下に残る責金からは、実際に拵へ合わせて大切に用いられてきた来歴もうかがわれます。 埋忠派らしい鉄味、彫りと金布目象嵌の取り合わせ、長銘、銀覆輪という見どころを備え、旭日と荒波の対照によって小振りな鐔面へ雄大な海景を凝縮した作品です。光を受ける角度によって旭日と飛沫の金が浮かんでは沈み、正面では緊張感ある構図、斜めからは波頭と岩の肉彫、側面では銀覆輪の輝きを楽しめるため、埋忠金工の収集品としてはもちろん、脇指拵へ品格ある古作金工を合わせたい方にもおすすめしたい、鑑賞性に富む一枚です。
取扱店 刀心
この品の現在有効な鑑定書は確認できませんでした。審査に出されたことがあるか、出せるかを刀剣商にお尋ねください。 — Hoshi
販売中 2点











新刀
現在2点販売中
新刀 · Kyoto
現在43点販売中
埋忠派は桃山時代を代表する金工集団であり、刀装具制作において後藤家と並び称される名流である。その鐔制作の技術は他の追随を許さず、古来より「埋忠鐔」の名を以て絶賛されている。特に埋忠彦次郎を中心とする本流は、吉川広家指料の「碇切り」に代表される苔鑢の妙技で知られ、金無垢地に施された鑢目の高尚な品格は筆舌に尽くせないほどである。桃山期における溌剌とした芸術精神を反映し、鐔の世界に新生面を拓いた。 作風の特徴として、金無垢、素銅、真鍮など多様な地金を用い、絶妙な肉取りの平地に締まった肉置きを見せる。斜めに掛けられた鑢や角耳の鑢仕立ては埋忠の真髄であり、切羽台外周に施された微妙な角度の配慮は、拵や刀装具を熟知した技術者ならではの工夫である。意匠は桜花透、胡蝶透、葡萄文、菊唐草文など図案化された文様を陰透や平象嵌で表し、明寿が創始した赤銅・銀・金の平象嵌研出しの技法は極めて効果的である。家紋を散らした刻印打込や七宝象嵌など装飾性に富み、絵画的で雅な雰囲気が満ちている。 江戸時代に入ると京都金工界において後藤、平田、正阿弥と各派が互いに影響し合い、埋忠派もその作風に変化を見せている。埋忠寿斉の銘がある慶長十年正月の縁頭は、金無垢地に家紋散図を施した豪華な仕立てであり、上層武家の需要に応えた作例として知られる。金無垢の鐔は度々の激動期に鋳潰されたため桃山期以前の作品は極めて少なく、現存する作例は資料的にも貴重である。埋忠二字銘の作品も江戸前期に見られ、明寿に近い出来を示すものもある。 詳しく見る →
刀剣商の出品ページで鑑定書を確認できませんでした。日本刀および刀装具は通常、NBTHK(または NTHK)の鑑定を受けます。鑑定書がない場合、極めは刀剣商の見解にとどまり、第三者による確認は行われていません。ご購入前に刀剣商へ鑑定書の有無をお問い合わせのうえ、慎重にご判断ください。
お求めになられた商品とは異なる商品をお届けしてしまった場合や、表記内容と現物とに大きな隔たりなどがあった場合を除き、基本的に返品はお受けいたしません。返品をご要望の場合は、商品到着後3日以内に御連絡の上ご返送下さい。
¥363,000