説明

鐔:埋忠「葡萄文図鐔」 銘:埋忠 地鉄:赤銅地 色々金象嵌 時代:江戸時代 寸法(縦/横/耳厚):66.8 x 61.1 x 4.1 mm 落込布張桐箱入 鑑定:日本美術刀剣保存協会 特別保存刀装具(2022年) 価格:1,500,000円(€8,100 / $9,750) 【埋忠派について】 埋忠派は室町時代末期より続く名門で、代々足利将軍家に仕えてきました。その技量は極めて多才であり、作刀のみならず、鎺、切羽、縁頭、そして鐔の制作においても優れた手腕を発揮しました。また、刀身の磨上げや金象嵌銘の施銘、彫物(刀身彫)なども手掛けています。一方で、目貫、笄、小柄に関しては、主に後藤家がその御用を担っていたため、埋忠の手による作例は殆ど見られません。 本図の「葡萄文」は、埋忠派の絵師や職人たちが得意とした意匠の一つです。比較資料1に挙げる埋忠明寿作の「葡萄に胡蝶文図鐔」は重要文化財に指定されており、本作と非常に近い意匠を持っています。両作ともにほぼ同サイズで、磨き上げられた赤銅地を用い、葡萄の実は平象嵌の技法で精緻に表現されています。 形状は赤銅の覆輪を施した竪丸形で、一穴の小柄穴と繊細な透かしが施されています。埋忠の鐔、特にこの葡萄文の意匠においては、比較資料4に見られるような糸透かしなどの透かし技法が特徴的です。本作においても、小柄穴の下に配された控えめな透かしが、全体の意匠をより一層風雅に引き立てています。「埋忠」銘を切った、正に名品と呼ぶに相応しい一枚です。 (埋忠重義による同図の鐔も併せてご参照ください) 【比較資料1】 「葡萄に胡蝶文図鐔」 重要文化財指定 銘:埋忠明寿 二ツ木瓜形 赤銅磨地 平象嵌 色絵 土手耳 一穴 (出典:『刀装具教室』より)

Umetada – Budō-mon no tsuba
Tokuho

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流派について

Umetada School埋忠派

1 重要美術品1 特別重要刀剣4 重要刀剣

埋忠派は桃山時代を代表する金工集団であり、刀装具制作において後藤家と並び称される名流である。その鐔制作の技術は他の追随を許さず、古来より「埋忠鐔」の名を以て絶賛されている。特に埋忠彦次郎を中心とする本流は、吉川広家指料の「碇切り」に代表される苔鑢の妙技で知られ、金無垢地に施された鑢目の高尚な品格は筆舌に尽くせないほどである。桃山期における溌剌とした芸術精神を反映し、鐔の世界に新生面を拓いた。 作風の特徴として、金無垢、素銅、真鍮など多様な地金を用い、絶妙な肉取りの平地に締まった肉置きを見せる。斜めに掛けられた鑢や角耳の鑢仕立ては埋忠の真髄であり、切羽台外周に施された微妙な角度の配慮は、拵や刀装具を熟知した技術者ならではの工夫である。意匠は桜花透、胡蝶透、葡萄文、菊唐草文など図案化された文様を陰透や平象嵌で表し、明寿が創始した赤銅・銀・金の平象嵌研出しの技法は極めて効果的である。家紋を散らした刻印打込や七宝象嵌など装飾性に富み、絵画的で雅な雰囲気が満ちている。 江戸時代に入ると京都金工界において後藤、平田、正阿弥と各派が互いに影響し合い、埋忠派もその作風に変化を見せている。埋忠寿斉の銘がある慶長十年正月の縁頭は、金無垢地に家紋散図を施した豪華な仕立てであり、上層武家の需要に応えた作例として知られる。金無垢の鐔は度々の激動期に鋳潰されたため桃山期以前の作品は極めて少なく、現存する作例は資料的にも貴重である。埋忠二字銘の作品も江戸前期に見られ、明寿に近い出来を示すものもある。

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