Q608. 鉄地佐波理象嵌鍔 銘 貞栄 寸法:7.5cm × 7.6cm 耳厚:0.3cm(切羽台厚:0.4cm) 茎孔:0.9cm × 2.5cm 本作は銅、錫、亜鉛、鉛の合金である「佐波理(さはり)」を用いた象嵌鍔です。佐波理象嵌は、合金を一度硬化させた後に粉末状にし、地鉄の彫り込みに充填して熱を加え、溶着させた後に表面を平らに研ぎ出すという非常に高度な技術を要します。 佐波理特有の性質として、溶着時の気泡による微細な「巣(ピンホール)」が生じますが、これこそが真の佐波理である証左と言えます。また、象嵌の中に点在する黒い箇所は、あらかじめ地鉄を高く残したまま象嵌を施し、研ぎ出すことで表面に現れるもので、緻密な計算と熟練の技が求められます。 佐波理象嵌の第一人者といえば間(はざま)派が知られますが、元禄頃の貞栄はその中でも屈指の名工として高く評価されています。 本作には「鍔 貞栄 雷紋」と記された座布団付きの落込箱が付属しております。貞栄は古来より名声が高く、偽銘の懸念も拭いきれない銘鑑物ですが、本作は令和4年に日本美術刀剣保存協会(NBTHK)の鑑定を受け、「雷紋衝立図鍔 銘 貞栄」として保存刀剣鑑定書が付されております。 私見ではありますが、本作の出来映えからすれば特別保存刀剣への合格も十分に狙える優品です。今回は銘の真贋を確定させることを主眼としたため、保存鑑定に留めております。 状態は極めて健全で、製作当時のままのような瑞々しさを保っています。名工の技が光るまさに正真の代表作であり、自信を持ってご紹介できる一枚です。 3,200ドル









金工 · 伊勢
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間派は、元禄頃(1688〜1704)より伊勢国亀山に住した鐔工の一群であり、その所在地にちなんで「亀山鐔」とも称される。開祖にあたる国友家は、もと近江国の鉄砲鍛冶であった。説示に「元和以来、天下の泰平につれて鉄砲は無用となったところから、鐔工に転じたものも少くない」[[c:1]]とあるように、泰平の世の到来とともに軍需技術を鐔制作へと転換した工人群のひとつである。代表工・国友貞栄(くにともさだえい)は亀山に移住後、「火縄銃の象嵌を鐔にこころみた」[[c:2]]と伝えられ、銃器装飾に由来する砂張象嵌の技法を鐔制作に確立した。銘は「間」一字を切るものと、国友貞栄・正栄などの個名を切るものとがあり、いずれも同派の工房伝統に連なる作として位置づけられている。 間派の最大の特色は、砂張象嵌(さはりぞうがん)と呼ばれる独自の象嵌技法にある。砂張は銅・錫・鉛からなる合金で、説示に「砂張は古くは正倉院御物の中にもあるが鐔に用いたものはこの一派以外にはない」[[c:3]]と明記されるとおり、鐔装飾への応用は間派のみに認められる技法である。作風は「異風」「個性的」と評され、鉄・素銅・山銅などの地金に「大模様の意匠」を施し、「表裏をガラリと変える大胆で秀れた意匠」[[c:4]]が高く評価されている。碁石形の造込み、木瓜形や軍配形などの変り形を用い、据文象嵌・高肉彫据文・赤銅平象嵌・焼手くさらかしといった多彩な技法を駆使する。また砂張象嵌に特有の細かな剥落痕については、「決して美観を損なうものではなく、却って作品の雅趣を高める効果を与えている」[[c:5]]と説示が述べており、技法固有の景色として積極的に評価されている点が注目される。 間派は、鐔制作において砂張象嵌を用いた唯一の一派として、金工伝統のなかに独自の位置を占める。説示において「意匠にすぐれ、象嵌の味も面白く人気がある」[[c:6]]「珍重されている」と繰り返し評されるように、その作品は古くより珍重されてきた。代表工・国友貞栄は「同派の代表工」と称され、その作には「同派の作中もっとも上手な代表的な一枚」[[c:7]]との最高評価が与えられている。鉄砲鍛冶としての金属加工技術を平和の世の芸術へと昇華させ、他に類例のない装飾語彙を創出した間派は、江戸中期における最も個性的な地方鐔工群のひとつとして、その伝統的価値が認められている。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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