T292. 鉄地焼手仕上銀布目象嵌 銘:清水甚吾(日本美術刀剣保存協会 鑑定書付) 寸法:7.5cm x 7.9cm x 0.4cm 中心穴:0.9cm x 2.8cm 表には雨龍、裏には図案化された文字(銘の一部か)が配されています。地鉄は潤いに満ち、極めて優れた質感を呈しています。写真ではその真価を伝えきれませんが、実物を手に取れば、まるで濡れているかのような独特の光沢に目を奪われることでしょう。 本作を「三代甚吾」と比定する根拠について述べます。肥後鐔の識者によれば、鑑定書の「甚吾」の表記にその鍵があるとのことです。初代・二代は「甚五」と記されるのが通例ですが、本作の鑑定書にある通り、三代・四代は「甚吾」の字が当てられます。意匠の洗練された簡潔さと、地鉄の卓越した仕上がりから、私は三代・四代のうちでも特に名工として名高い三代の作と判断いたしました。いずれにせよ、本作が名品であることに疑いの余地はありません。 追記:ある愛好家より、本作が東京の刀剣博物館で開催された「鉄鐔ーくろがねの花」展の図録に掲載されている作品とほぼ同型であるとの指摘を受けました。参考までに同図録の写真を添付します。図録内の解説(二代甚吾、17世紀初頭)によれば、「不規則な木瓜形が、円熟した雨龍の象嵌と見事に調和しており、二代甚吾らしい個性に溢れた一枚」と評されています。 2010年付の鑑定書、および座布団付の専用桐箱が付属します。箱の側面には「NBTHK Shimizu 3rd master water dragon」との英語のラベルが貼られています。 2,500ドル









肥後 · 肥後
現在26点販売中
志水派は、林・平田・西垣と並び肥後金工の本流を代表する四家の一つである。初代志水仁兵衛は平田彦三の甥と伝えられ、その指導を受けた。四家の初代はいずれも細川三斎忠興に抱えられ、直接の指導を受けている。寛永九年(一六三二)、加藤家改易ののち三斎の子忠利が熊本五十四万石に封ぜられると、三斎は隠居の身となり肥後国八代城を隠棲の場と定めた。初代甚五はこのとき彦三と共に三斎に従い八代に移住し、以後志水家は細川家の庇護のもと八代の地で代々栄えた。二代目以降、家督を継ぐ者は甚五(甚五)の名を襲名したが、初代・二代には在銘作が皆無であり、無銘ながら鑑定により世代が判別される。 志水派の作風は、肥後金工諸派の中にあって「ひときわ強烈な個性」[[c:2]]を発揮するものとして一貫して評される。その技法上の最大の特色は、槌目焼手仕立ての鉄地に大胆な真鍮据紋象嵌を施す手法にある。表には猛禽・鶏・梟・雨龍・蛸・蟹などの画題を大きく力強く配し、一方裏は意図的に空間を広くとり、文様は小さく、彩色や肉置きも穏やかにして表裏のバランスをとる。一見非対称に感ぜられるこの表裏の構図こそが志水派の真骨頂であり、説示は繰り返し「総体的にきわめて均整のとれた趣の深い作品」[[c:3]]と評している。表の躍動感と裏の静寂感が渾然一体となり、寂(さび)ないし侘寂の趣を深くする剛毅な作風がそこに成立する。真鍮据紋象嵌は「恐らく平安城象嵌にならったもの」[[c:4]]とされるが、「平安城象嵌と異なるところは大胆な図柄にあって、これが今日なお斬新な感じを与える」と説示に明記されている。また鋤出高彫に金銀布目象嵌を施した作や、素銅地の作もあり、素銅でありながら重厚な趣を醸し出せるのは「甚五の技量の高さを伺うに十分」[[c:5]]と評されるように、地金を問わず深い造形力を示す。撫角形・障泥形を得意の鐔姿とし、変り櫃孔もまた同派に見る特色である。 志水派は肥後金工の伝統において最も異色かつ芸術的迫力に満ちた一派としての地位を占める。とりわけ初代甚五は卓越した作家として説示に高く讃えられ、松上の梟図や松上の猛禽図はその名と「ほとんど同義」とされるほどに密接に結びつく。説示は初代の最高作について「大智は愚の如し」の語を引き、「大巧は拙なるが如し――拙に見えて拙でないが故に常識を超越した力を発揮した」と述べ、技巧を超えた境地に達した芸術家として位置づけている。武人の魂を猛禽に託して無双の覇気を示す一方、余白を十分に生かした画面からは「物深い閑かな雅趣」[[c:6]]が感じとられ、文武両道の達人であった三斎の指導に応えた入念の作と評される。また「魚金甚五」の銘を持つ稀少な在銘作や、銀布目象嵌・毛彫・色金を駆使した後世代の展開は同派の技法的幅の広さを証するものである。「他の金工にはみられない大らかな雰囲気」を醸し出し、「近代的感覚にもうったえる」[[c:7]]と繰り返し評される志水派の絵画的造形は、肥後金工の枠を超えて刀装具史に独自の存在感を刻んでいる。 詳しく見る →
販売店の出品ページで鑑定書を確認できませんでした。日本刀および刀装具は通常、NBTHK(または NTHK)の鑑定を受けます。鑑定書がない場合、極めは販売店の見解にとどまり、第三者による確認は行われていません。ご購入前に販売店へ鑑定書の有無をお問い合わせのうえ、慎重にご判断ください。
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T292. 鉄地焼手仕上銀布目象嵌 銘:清水甚吾(日本美術刀剣保存協会 鑑定書付) 寸法:7.5cm x 7.9cm x 0.4cm 中心穴:0.9cm x 2.8cm 表には雨龍、裏には図案化された文字(銘の一部か)が配されています。地鉄は潤いに満ち、極めて優れた質感を呈しています。写真ではその真価を伝えきれませんが、実物を手に取れば、まるで濡れているかのような独特の光沢に目を奪われることでしょう。 本作を「三代甚吾」と比定する根拠について述べます。肥後鐔の識者によれば、鑑定書の「甚吾」の表記にその鍵があるとのことです。初代・二代は「甚五」と記されるのが通例ですが、本作の鑑定書にある通り、三代・四代は「甚吾」の字が当てられます。意匠の洗練された簡潔さと、地鉄の卓越した仕上がりから、私は三代・四代のうちでも特に名工として名高い三代の作と判断いたしました。いずれにせよ、本作が名品であることに疑いの余地はありません。 追記:ある愛好家より、本作が東京の刀剣博物館で開催された「鉄鐔ーくろがねの花」展の図録に掲載されている作品とほぼ同型であるとの指摘を受けました。参考までに同図録の写真を添付します。図録内の解説(二代甚吾、17世紀初頭)によれば、「不規則な木瓜形が、円熟した雨龍の象嵌と見事に調和しており、二代甚吾らしい個性に溢れた一枚」と評されています。 2010年付の鑑定書、および座布団付の専用桐箱が付属します。箱の側面には「NBTHK Shimizu 3rd master water dragon」との英語のラベルが貼られています。 2,500ドル









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志水派は、林・平田・西垣と並び肥後金工の本流を代表する四家の一つである。初代志水仁兵衛は平田彦三の甥と伝えられ、その指導を受けた。四家の初代はいずれも細川三斎忠興に抱えられ、直接の指導を受けている。寛永九年(一六三二)、加藤家改易ののち三斎の子忠利が熊本五十四万石に封ぜられると、三斎は隠居の身となり肥後国八代城を隠棲の場と定めた。初代甚五はこのとき彦三と共に三斎に従い八代に移住し、以後志水家は細川家の庇護のもと八代の地で代々栄えた。二代目以降、家督を継ぐ者は甚五(甚五)の名を襲名したが、初代・二代には在銘作が皆無であり、無銘ながら鑑定により世代が判別される。 志水派の作風は、肥後金工諸派の中にあって「ひときわ強烈な個性」[[c:2]]を発揮するものとして一貫して評される。その技法上の最大の特色は、槌目焼手仕立ての鉄地に大胆な真鍮据紋象嵌を施す手法にある。表には猛禽・鶏・梟・雨龍・蛸・蟹などの画題を大きく力強く配し、一方裏は意図的に空間を広くとり、文様は小さく、彩色や肉置きも穏やかにして表裏のバランスをとる。一見非対称に感ぜられるこの表裏の構図こそが志水派の真骨頂であり、説示は繰り返し「総体的にきわめて均整のとれた趣の深い作品」[[c:3]]と評している。表の躍動感と裏の静寂感が渾然一体となり、寂(さび)ないし侘寂の趣を深くする剛毅な作風がそこに成立する。真鍮据紋象嵌は「恐らく平安城象嵌にならったもの」[[c:4]]とされるが、「平安城象嵌と異なるところは大胆な図柄にあって、これが今日なお斬新な感じを与える」と説示に明記されている。また鋤出高彫に金銀布目象嵌を施した作や、素銅地の作もあり、素銅でありながら重厚な趣を醸し出せるのは「甚五の技量の高さを伺うに十分」[[c:5]]と評されるように、地金を問わず深い造形力を示す。撫角形・障泥形を得意の鐔姿とし、変り櫃孔もまた同派に見る特色である。 志水派は肥後金工の伝統において最も異色かつ芸術的迫力に満ちた一派としての地位を占める。とりわけ初代甚五は卓越した作家として説示に高く讃えられ、松上の梟図や松上の猛禽図はその名と「ほとんど同義」とされるほどに密接に結びつく。説示は初代の最高作について「大智は愚の如し」の語を引き、「大巧は拙なるが如し――拙に見えて拙でないが故に常識を超越した力を発揮した」と述べ、技巧を超えた境地に達した芸術家として位置づけている。武人の魂を猛禽に託して無双の覇気を示す一方、余白を十分に生かした画面からは「物深い閑かな雅趣」[[c:6]]が感じとられ、文武両道の達人であった三斎の指導に応えた入念の作と評される。また「魚金甚五」の銘を持つ稀少な在銘作や、銀布目象嵌・毛彫・色金を駆使した後世代の展開は同派の技法的幅の広さを証するものである。「他の金工にはみられない大らかな雰囲気」を醸し出し、「近代的感覚にもうったえる」[[c:7]]と繰り返し評される志水派の絵画的造形は、肥後金工の枠を超えて刀装具史に独自の存在感を刻んでいる。 詳しく見る →
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