特別貴重資料鑑定書(A-63)附 江戸時代中期 古甲冑 鑑定:一般社団法人 日本甲冑武具研究保存会 鑑定年月日:2026年(令和8年)3月15日 時代:江戸時代中期(1688年-1800年頃) 【兜】 ■鉢:筋兜 兜は侍の頭部を守る極めて重要な防具です。初期の兜は実用性が重視されていましたが、時代が下るにつれ、武士の威厳や個性、さらには信仰心をも象徴するものへと進化しました。室町時代後期から江戸時代にかけては、獣毛や貝殻、植物、紙などを用いた装飾性の高い「変わり兜」も登場します。 実戦的な意匠の中でも、特に高く評価されたのが「筋兜」です。鉢の表面に盛り上がった「筋」を立てることで、刀の打撃を受け流し、衝撃を和らげる構造となっています。この工夫は同時に軽量化も実現し、14世紀から16世紀にかけての戦術の変化にも対応しました。筋兜の製作は室町時代に全盛期を迎えます。 本作は「六十四間筋兜」であり、64枚もの鉄板を矧ぎ合わせて鉢を形成しています。放射状に広がる筋は機能美と堅牢さを兼ね備えており、これほど多間の板を用いることで、より滑らかで円形に近いシルエットを実現しています。当時の甲冑師の高度な技術が凝縮された逸品といえます。 また、鉢の頂部には「天辺の穴(てっぺんのあな)」があり、本作には精緻な菊座が据えられています。菊は日本文化において高貴さと長寿の象徴であり、皇室とも縁の深い文様です。さらに、途切れることなく伸びる唐草文様は、生命力、繁栄、そして子孫繁栄を象徴しています。もともと天辺の穴は、武士が「髷(まげ)」を出すための実用的な開口部でしたが、鎌倉時代頃には敵の攻撃の的となることを避けるため、その習慣は廃れていきました。以降、この穴は実用を離れ、本作に見られるような華麗な装飾を施す場へと変化を遂げたのです。 ■錣(しころ): 黒漆塗板物素懸縅(薄紺糸) ■吹返(ふきかえし): 吹返は兜の両端に備えられた吹き返しの板で、顔面を刀剣の打撃から守る防御の役割を果たすとともに、武士の家格や所属を示す装飾の場でもありました。本作の吹返は、鉢と同様に「鉄錆色漆塗」で仕上げられています。家紋や華美な装飾を排した無地の仕立ては、質実剛健で武骨な趣を湛えており、実戦を意識した力強い印象を与えます。 ■面頬(めんぽう):烈勢面(れっせいめん) この面頬は「烈勢面」と呼ばれる形式です。その名の通り、戦場において着用者を勇猛に見せるために作られました。顔面を保護するだけでなく、敵を威圧し、武士の闘志を鼓舞するという心理的な効果も備えています。 ■前立(まえだて):笹 この兜には、全体の威容を整え、品格を高める「鍬形(くわがた)」が備わっています。 この鍬形は、竹および「笹」を意匠化したものです。竹は天に向かって真っ直ぐに伸びる強い生命力から、高潔さと強さの象徴とされてきました。同時に、強靭でありながら中が空洞であることから、古来より清廉潔白や謙虚さの象徴としても親しまれています。 伝承によれば、霊鳥である鳳凰(ほうおう)は……





























当世具足 · 二枚胴
具足一連(完備)
64間 · 筋鉢
無銘
Light Navy
cherry blossom (kote), peach (kote)
江戸
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
Returns/exchanges limited to defects caused by shipping (except willful misconduct or gross negligence by the company); customers must contact within 72 hours of receiving the product.








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特別貴重資料鑑定書(A-63)附 江戸時代中期 古甲冑 鑑定:一般社団法人 日本甲冑武具研究保存会 鑑定年月日:2026年(令和8年)3月15日 時代:江戸時代中期(1688年-1800年頃) 【兜】 ■鉢:筋兜 兜は侍の頭部を守る極めて重要な防具です。初期の兜は実用性が重視されていましたが、時代が下るにつれ、武士の威厳や個性、さらには信仰心をも象徴するものへと進化しました。室町時代後期から江戸時代にかけては、獣毛や貝殻、植物、紙などを用いた装飾性の高い「変わり兜」も登場します。 実戦的な意匠の中でも、特に高く評価されたのが「筋兜」です。鉢の表面に盛り上がった「筋」を立てることで、刀の打撃を受け流し、衝撃を和らげる構造となっています。この工夫は同時に軽量化も実現し、14世紀から16世紀にかけての戦術の変化にも対応しました。筋兜の製作は室町時代に全盛期を迎えます。 本作は「六十四間筋兜」であり、64枚もの鉄板を矧ぎ合わせて鉢を形成しています。放射状に広がる筋は機能美と堅牢さを兼ね備えており、これほど多間の板を用いることで、より滑らかで円形に近いシルエットを実現しています。当時の甲冑師の高度な技術が凝縮された逸品といえます。 また、鉢の頂部には「天辺の穴(てっぺんのあな)」があり、本作には精緻な菊座が据えられています。菊は日本文化において高貴さと長寿の象徴であり、皇室とも縁の深い文様です。さらに、途切れることなく伸びる唐草文様は、生命力、繁栄、そして子孫繁栄を象徴しています。もともと天辺の穴は、武士が「髷(まげ)」を出すための実用的な開口部でしたが、鎌倉時代頃には敵の攻撃の的となることを避けるため、その習慣は廃れていきました。以降、この穴は実用を離れ、本作に見られるような華麗な装飾を施す場へと変化を遂げたのです。 ■錣(しころ): 黒漆塗板物素懸縅(薄紺糸) ■吹返(ふきかえし): 吹返は兜の両端に備えられた吹き返しの板で、顔面を刀剣の打撃から守る防御の役割を果たすとともに、武士の家格や所属を示す装飾の場でもありました。本作の吹返は、鉢と同様に「鉄錆色漆塗」で仕上げられています。家紋や華美な装飾を排した無地の仕立ては、質実剛健で武骨な趣を湛えており、実戦を意識した力強い印象を与えます。 ■面頬(めんぽう):烈勢面(れっせいめん) この面頬は「烈勢面」と呼ばれる形式です。その名の通り、戦場において着用者を勇猛に見せるために作られました。顔面を保護するだけでなく、敵を威圧し、武士の闘志を鼓舞するという心理的な効果も備えています。 ■前立(まえだて):笹 この兜には、全体の威容を整え、品格を高める「鍬形(くわがた)」が備わっています。 この鍬形は、竹および「笹」を意匠化したものです。竹は天に向かって真っ直ぐに伸びる強い生命力から、高潔さと強さの象徴とされてきました。同時に、強靭でありながら中が空洞であることから、古来より清廉潔白や謙虚さの象徴としても親しまれています。 伝承によれば、霊鳥である鳳凰(ほうおう)は……





























当世具足 · 二枚胴
具足一連(完備)
64間 · 筋鉢
無銘
Light Navy
cherry blossom (kote), peach (kote)
江戸
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
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