孔明透鐔 無銘(長州) -Mumei(Choshu)- 縦75.6ミリ 横70.5ミリ 切羽台厚4.4ミリ 重さ105.4グラム 江戸後期 The late Edo period 附属 保存刀装具鑑定書、桐箱 諸葛亮孔明は中国三国時代の蜀漢に仕えた軍師で、卓越した知略と忠誠を備えた名臣として尊ばれ、羽扇を手に思索する姿は冷静な判断力や深い学識を象徴する画題として、絵画をはじめ刀装具にも数多く表されています。 長州鐔は周防国および長門国で発展した鐔工の一群によって製作され、良質な鉄地へ精巧な肉彫地透を施し、人物、山水、草木、故事などを絵画的に構成した作を得意としており、本作も日本美術刀剣保存協会の保存刀装具鑑定書によって長州と極められています。 本作は堅丸形の鉄地に羽扇を手に座す孔明を肉彫で表し、上方にたなびく雲、右方から大きく枝を巡らせる松、左下に葉を広げる棕櫚を地透として配するとともに、切羽台を挟んで上下へ柱を通し、下部左右に低い壁と方形の敷瓦を表すことで、館内に座す孔明とその周囲に広がる庭景を奥行き豊かに描き出しています。 孔明の顔や手には素銅の象嵌を用い、細く整えられた髭、穏やかな表情、羽扇を持つ手元まで丁寧に表す一方、衣装、柱、壁、雲などへ金色の象嵌を施し、床を形作る敷瓦の継ぎ目には点状の銀象嵌を配することで、黒褐色の鉄地の中に建物の構造と人物の姿を鮮明に浮かび上がらせています。 裏面は別の情景を表したものではなく、表に描かれた館と庭を反対側から眺めた構成となっており、上方を流れる雲、左方から右方へ大きく枝を巡らせる松、右側に葉を広げる棕櫚、下部の緩やかな丘が表面の景物と連続することで、鐔の表裏を巡りながら同じ空間を異なる方向から鑑賞できる立体的な画面を形作っています。 厚さ4.4ミリの鉄地には十分な量感があり、小肉を付けた角耳と大きな切羽台が全体を引き締め、精緻な肉彫地透と金、銀、素銅の象嵌を用いて一つの情景を表裏から描き分けるという巧みな構想に、長州鐔らしい絵画性と高度な彫技を味わえる一枚です。










鐔工 · 長門
現在24点販売中
長州(長門国)における鐔工の伝統は、京都の平安城透の鐔工が周防・長門の大内家に招かれて移住したことに始まる。この移住により古萩と呼ばれる一派が成立し、室町時代末期から江戸時代初期にかけて繁栄した。その後、毛利家の庇護のもとで長州は「東の会津、西の長州」と称されるほどの鐔の一大産地へと発展し、鐔工の数と作品数において全国有数の地位を占めるに至った。河治・中原・八道・岡田・岡本・金子・中井など多くの流派が輩出し、なかでも中井派の友恒(善助)は毛利家の抱え工として宝暦八年より三人扶持四石を支給され、萩鐔隆盛の一翼を担う名工として聞こえている。 長州鐔の作風は鉄地を基調とする。古萩は、画題が殆ど枝菊の鉄鐔であり、陰陽の透しを施して陰透しの線の細いところは京透に近似する一方、陽透しの部分は薄肉風に表され、「他工には見られない独特の雅味」と「繊細さと豊艶を併せ持つ渋みと柔らかな雅趣」を生み出している。後代の中井派はこの鉄地の伝統を継承しつつ、より広範な技法を駆使した。薄手の鉄地あるいは槌目鍛の鉄鐔を用い、鋤出高彫・肉彫地透・象嵌色絵・金布目象嵌など種々の工法を展開し、手長猿の遊ぶ山間の景や式三番を演じる翁と三番叟など、動きのある構図を見事に造形している。引き締まった肉取り、効果的な色金の配置、鋭く切り立った角耳に施された金布目象嵌など、鋭敏にして華麗な仕上げに特色がある。 長州鐔の伝統は、地方の鐔工群の枠を超えた存在として刀装具史上に独自の位置を占める。中井善助友恒の傑出した作品について、審査では「いわゆる萩鐔の範疇を超越した出来栄え」[[c:1]]であり「構図、彫技、鉄味ともに傑出している」[[c:2]]と評している。一方、古萩の作域は京都の透鐔の系譜に根ざしながらも「他の透鐔工には見られない古萩特有のもの」へと昇華されており、長門国における金工の深い蓄積と数世紀にわたる連続性を物語っている。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
NBTHK公式サイトお求めになられた商品とは異なる商品をお届けしてしまった場合や、表記内容と現物とに大きな隔たりなどがあった場合を除き、基本的に返品はお受けいたしません。返品をご要望の場合は、商品到着後3日以内に御連絡の上ご返送下さい。
¥297,000
孔明透鐔 無銘(長州) -Mumei(Choshu)- 縦75.6ミリ 横70.5ミリ 切羽台厚4.4ミリ 重さ105.4グラム 江戸後期 The late Edo period 附属 保存刀装具鑑定書、桐箱 諸葛亮孔明は中国三国時代の蜀漢に仕えた軍師で、卓越した知略と忠誠を備えた名臣として尊ばれ、羽扇を手に思索する姿は冷静な判断力や深い学識を象徴する画題として、絵画をはじめ刀装具にも数多く表されています。 長州鐔は周防国および長門国で発展した鐔工の一群によって製作され、良質な鉄地へ精巧な肉彫地透を施し、人物、山水、草木、故事などを絵画的に構成した作を得意としており、本作も日本美術刀剣保存協会の保存刀装具鑑定書によって長州と極められています。 本作は堅丸形の鉄地に羽扇を手に座す孔明を肉彫で表し、上方にたなびく雲、右方から大きく枝を巡らせる松、左下に葉を広げる棕櫚を地透として配するとともに、切羽台を挟んで上下へ柱を通し、下部左右に低い壁と方形の敷瓦を表すことで、館内に座す孔明とその周囲に広がる庭景を奥行き豊かに描き出しています。 孔明の顔や手には素銅の象嵌を用い、細く整えられた髭、穏やかな表情、羽扇を持つ手元まで丁寧に表す一方、衣装、柱、壁、雲などへ金色の象嵌を施し、床を形作る敷瓦の継ぎ目には点状の銀象嵌を配することで、黒褐色の鉄地の中に建物の構造と人物の姿を鮮明に浮かび上がらせています。 裏面は別の情景を表したものではなく、表に描かれた館と庭を反対側から眺めた構成となっており、上方を流れる雲、左方から右方へ大きく枝を巡らせる松、右側に葉を広げる棕櫚、下部の緩やかな丘が表面の景物と連続することで、鐔の表裏を巡りながら同じ空間を異なる方向から鑑賞できる立体的な画面を形作っています。 厚さ4.4ミリの鉄地には十分な量感があり、小肉を付けた角耳と大きな切羽台が全体を引き締め、精緻な肉彫地透と金、銀、素銅の象嵌を用いて一つの情景を表裏から描き分けるという巧みな構想に、長州鐔らしい絵画性と高度な彫技を味わえる一枚です。










鐔工 · 長門
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長州(長門国)における鐔工の伝統は、京都の平安城透の鐔工が周防・長門の大内家に招かれて移住したことに始まる。この移住により古萩と呼ばれる一派が成立し、室町時代末期から江戸時代初期にかけて繁栄した。その後、毛利家の庇護のもとで長州は「東の会津、西の長州」と称されるほどの鐔の一大産地へと発展し、鐔工の数と作品数において全国有数の地位を占めるに至った。河治・中原・八道・岡田・岡本・金子・中井など多くの流派が輩出し、なかでも中井派の友恒(善助)は毛利家の抱え工として宝暦八年より三人扶持四石を支給され、萩鐔隆盛の一翼を担う名工として聞こえている。 長州鐔の作風は鉄地を基調とする。古萩は、画題が殆ど枝菊の鉄鐔であり、陰陽の透しを施して陰透しの線の細いところは京透に近似する一方、陽透しの部分は薄肉風に表され、「他工には見られない独特の雅味」と「繊細さと豊艶を併せ持つ渋みと柔らかな雅趣」を生み出している。後代の中井派はこの鉄地の伝統を継承しつつ、より広範な技法を駆使した。薄手の鉄地あるいは槌目鍛の鉄鐔を用い、鋤出高彫・肉彫地透・象嵌色絵・金布目象嵌など種々の工法を展開し、手長猿の遊ぶ山間の景や式三番を演じる翁と三番叟など、動きのある構図を見事に造形している。引き締まった肉取り、効果的な色金の配置、鋭く切り立った角耳に施された金布目象嵌など、鋭敏にして華麗な仕上げに特色がある。 長州鐔の伝統は、地方の鐔工群の枠を超えた存在として刀装具史上に独自の位置を占める。中井善助友恒の傑出した作品について、審査では「いわゆる萩鐔の範疇を超越した出来栄え」[[c:1]]であり「構図、彫技、鉄味ともに傑出している」[[c:2]]と評している。一方、古萩の作域は京都の透鐔の系譜に根ざしながらも「他の透鐔工には見られない古萩特有のもの」へと昇華されており、長門国における金工の深い蓄積と数世紀にわたる連続性を物語っている。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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