江戸時代中期 三十二間筋兜 (日本甲冑武具研究保存会 特別貴重資料認定書付) 時代: 江戸時代中期(1688年-1800年頃) (日本甲冑武具研究保存会 鑑定済み) 主材質:鉄 ※前立ては明治以降(1868年-1912年)の製作と推測されます。 本作は、多数の鉄板を矧ぎ合わせて鉢を形成する「筋兜(すじかぶと)」で、三十二枚の鉄板から成る「三十二間(さんじゅうにけん)」の仕立てとなっております。その名の通り、鉢の表面には三十二本の筋が美しく並んでおり、当時、身分の高い武士が所用していたものと思われます。 兜は頭部を保護するための防具ですが、その役割は時代とともに変遷してきました。当初は実用性が重視されていましたが、次第に武士の威厳や個性、あるいは信仰を象徴するものへと変化していきました。室町時代後期から江戸時代にかけては、動物の毛、貝殻、植物、紙など多種多様な素材を用いた「変わり兜」が登場し、その独特な意匠が競われました。 この変わり兜が普及する以前、南北朝時代(1337年-1392年)に登場したのが「筋兜」です。当時の戦闘様式が騎馬戦から、太刀や薙刀を用いた徒立ち(歩兵戦)へと移行する中で、兜の軽量化が求められるようになりました。また、刀剣による打撃を受け流すための構造として考案されたのが筋兜であり、その形状は攻撃を滑らせる実利を兼ね備えていました。室町時代に全盛期を迎えた筋兜は、江戸時代に入っても引き続き製作されましたが、戦国期のものに比べて鉄板が厚く、重量が増す傾向にあります。これは実戦用としてだけでなく、古式ゆかしい様式美を愛でる観賞用、あるいは儀礼用としての需要が高まったことを示しています。 本作の鉢は「鉄錆色漆塗(てつさびいろうるしぬり)」で仕上げられています。これは生鉄を露出させたり、派手な色漆を塗ったりするのではなく、あえて酸化した鉄のような渋みのある質感を漆で表現したものです。耐久性を高めると同時に、武士が理想とした「静かなる強さと気品」を体現した、洗練された美しさを放っています。 前立てには、三日月を模した意匠が据えられています。 一説によれば、三日月の前立てはインドに起源を持つ「妙見信仰」に由来するとされています。妙見信仰は北極星や北斗七星を神格化したもので、大陸を経て日本に伝わりました。この信仰において月や星は聖なる象徴であり、妙見菩薩は五穀豊穣、天下泰平、家内安全、病気平癒、延命長寿、商売繁盛、交通安全、学業成就、良縁など、あらゆる願いを叶える守護神として崇められました。 こうした背景から、月をモチーフにした意匠は武士の間で深く浸透し、自らの信仰の証として兜に飾られました。本作の旧蔵者もまた、篤い信仰心をこの三日月に託したのかもしれません。 三日月の前立てを用いた著名な武将としては、伊達政宗(1567年-1636年)が挙げられます。17歳で家督を継ぎ、東北地方の繁栄に大きく貢献した政宗の兜は、大きな三日月が特徴であり、今日でも五月人形やレプリカにおいて絶大な人気を誇っています。 また、本作には三日月の意匠に加え、歴史的に極めて重要な紋章である黄金色の「三つ葉葵(みつばあおい)」紋が施されています。















Kawari Kabuto
兜のみ
32間 · 筋鉢
無銘
Mitsuba Aoi (three-leaf hollyhock), crescent moon (mikaduki)
江戸
Tokugawa
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
Returns/exchanges limited to defects caused by shipping (except willful misconduct or gross negligence by the company); customers must contact within 72 hours of receiving the product.








$4,813
江戸時代中期 三十二間筋兜 (日本甲冑武具研究保存会 特別貴重資料認定書付) 時代: 江戸時代中期(1688年-1800年頃) (日本甲冑武具研究保存会 鑑定済み) 主材質:鉄 ※前立ては明治以降(1868年-1912年)の製作と推測されます。 本作は、多数の鉄板を矧ぎ合わせて鉢を形成する「筋兜(すじかぶと)」で、三十二枚の鉄板から成る「三十二間(さんじゅうにけん)」の仕立てとなっております。その名の通り、鉢の表面には三十二本の筋が美しく並んでおり、当時、身分の高い武士が所用していたものと思われます。 兜は頭部を保護するための防具ですが、その役割は時代とともに変遷してきました。当初は実用性が重視されていましたが、次第に武士の威厳や個性、あるいは信仰を象徴するものへと変化していきました。室町時代後期から江戸時代にかけては、動物の毛、貝殻、植物、紙など多種多様な素材を用いた「変わり兜」が登場し、その独特な意匠が競われました。 この変わり兜が普及する以前、南北朝時代(1337年-1392年)に登場したのが「筋兜」です。当時の戦闘様式が騎馬戦から、太刀や薙刀を用いた徒立ち(歩兵戦)へと移行する中で、兜の軽量化が求められるようになりました。また、刀剣による打撃を受け流すための構造として考案されたのが筋兜であり、その形状は攻撃を滑らせる実利を兼ね備えていました。室町時代に全盛期を迎えた筋兜は、江戸時代に入っても引き続き製作されましたが、戦国期のものに比べて鉄板が厚く、重量が増す傾向にあります。これは実戦用としてだけでなく、古式ゆかしい様式美を愛でる観賞用、あるいは儀礼用としての需要が高まったことを示しています。 本作の鉢は「鉄錆色漆塗(てつさびいろうるしぬり)」で仕上げられています。これは生鉄を露出させたり、派手な色漆を塗ったりするのではなく、あえて酸化した鉄のような渋みのある質感を漆で表現したものです。耐久性を高めると同時に、武士が理想とした「静かなる強さと気品」を体現した、洗練された美しさを放っています。 前立てには、三日月を模した意匠が据えられています。 一説によれば、三日月の前立てはインドに起源を持つ「妙見信仰」に由来するとされています。妙見信仰は北極星や北斗七星を神格化したもので、大陸を経て日本に伝わりました。この信仰において月や星は聖なる象徴であり、妙見菩薩は五穀豊穣、天下泰平、家内安全、病気平癒、延命長寿、商売繁盛、交通安全、学業成就、良縁など、あらゆる願いを叶える守護神として崇められました。 こうした背景から、月をモチーフにした意匠は武士の間で深く浸透し、自らの信仰の証として兜に飾られました。本作の旧蔵者もまた、篤い信仰心をこの三日月に託したのかもしれません。 三日月の前立てを用いた著名な武将としては、伊達政宗(1567年-1636年)が挙げられます。17歳で家督を継ぎ、東北地方の繁栄に大きく貢献した政宗の兜は、大きな三日月が特徴であり、今日でも五月人形やレプリカにおいて絶大な人気を誇っています。 また、本作には三日月の意匠に加え、歴史的に極めて重要な紋章である黄金色の「三つ葉葵(みつばあおい)」紋が施されています。















Kawari Kabuto
兜のみ
32間 · 筋鉢
無銘
Mitsuba Aoi (three-leaf hollyhock), crescent moon (mikaduki)
江戸
Tokugawa
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
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