六十二間筋兜 (日本甲冑武具研究保存会 特別貴重資料認定) 時代: 江戸時代中期 (日本甲冑武具研究保存会 鑑定) 主材質:鉄 本作は江戸時代中期(1690年〜1780年頃)に制作された兜です。 筋兜(すじかぶと)は、多数の鉄板を矧ぎ合わせ、その接合部である「筋」を高く盛り上げた形式の兜です。本作は六十二枚もの鉄板を用いて仕立てられた「六十二間」の多間物であり、その精緻な筋立てからは、当時の高級武士が所用したであろう風格が漂います。 兜は本来、頭部を保護する実戦的な防具として誕生しました。しかし時代の変遷とともに、武士の威厳や個性、あるいは信仰を象徴するものへとその役割を広げていきました。室町時代後期から江戸時代にかけては、動物の毛や貝殻、植物、紙など多種多様な素材を用いた「変わり兜」が流行し、武士たちは意匠を凝らしました。 この筋兜の形式が誕生したのは南北朝時代(1337年〜1392年)に遡ります。当時の戦闘様式が騎馬戦から、太刀や薙刀を用いた徒歩(かち)戦へと変化したことで、兜の軽量化が求められるようになりました。また、敵の打撃を左右に受け流すための構造として考案されたのが筋兜です。室町時代に全盛期を迎えた筋兜ですが、江戸時代に入ると、実戦よりも格式や鑑賞が重んじられるようになります。そのため、室町期のものに比べて鉄板が厚く、重厚な造りとなっているのが江戸期筋兜の特徴であり、当時の武士たちが古式ゆかしい美を愛で、家宝として大切に伝えてきた歴史が伺えます。 吹き返し(ふきかえし)は、顔面を刀から守る実用的な機能とともに、兜の装飾美を象徴する部位でもあります。本作の吹き返しには、金家紋が据えられています。 家紋は「丸に加賀梅鉢(まるにかがうめばち)」です。梅は寒さの残る時期にいち早く開花することから、春の訪れを告げる花として古来より日本人に愛されてきました。その愛らしい花びらや香り、気品ある枝ぶりは多くの詩歌に詠まれ、厳しい冬を耐え抜く「忍耐」と「生命力」の象徴とされています。「鉢」は太鼓を叩く「桴(ばち)」を模した意匠で、中心から放射状に五つの桴が配されています。この紋は、加賀百万石を治めた前田家が使用したことで非常に名高く、格式高い紋として知られています。 前立(まえだて)には「三日月」の意匠が据えられています。三日月は武士の間で非常に人気のあったモチーフです。一説には、インドに起源を持ち大陸を経て伝わった「妙見(みょうけん)信仰」に由来するとされています。妙見菩薩は北極星や北斗七星、そして月を神格化したもので、五穀豊穣や一族繁栄、武運長久、さらには諸願成就を司る守護神として、武家文化と深く結びついていました。 また、兜の頂辺にある八幡座(はちまんざ)は……





















兜のみ
62間 · 筋鉢
無銘
Maru ni Kaga Ume Bachi (Maeda clan crest)
江戸
Maeda
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
Returns/exchanges limited to defects caused by shipping (except willful misconduct or gross negligence by the company); customers must contact within 72 hours of receiving the product.








$4,171
六十二間筋兜 (日本甲冑武具研究保存会 特別貴重資料認定) 時代: 江戸時代中期 (日本甲冑武具研究保存会 鑑定) 主材質:鉄 本作は江戸時代中期(1690年〜1780年頃)に制作された兜です。 筋兜(すじかぶと)は、多数の鉄板を矧ぎ合わせ、その接合部である「筋」を高く盛り上げた形式の兜です。本作は六十二枚もの鉄板を用いて仕立てられた「六十二間」の多間物であり、その精緻な筋立てからは、当時の高級武士が所用したであろう風格が漂います。 兜は本来、頭部を保護する実戦的な防具として誕生しました。しかし時代の変遷とともに、武士の威厳や個性、あるいは信仰を象徴するものへとその役割を広げていきました。室町時代後期から江戸時代にかけては、動物の毛や貝殻、植物、紙など多種多様な素材を用いた「変わり兜」が流行し、武士たちは意匠を凝らしました。 この筋兜の形式が誕生したのは南北朝時代(1337年〜1392年)に遡ります。当時の戦闘様式が騎馬戦から、太刀や薙刀を用いた徒歩(かち)戦へと変化したことで、兜の軽量化が求められるようになりました。また、敵の打撃を左右に受け流すための構造として考案されたのが筋兜です。室町時代に全盛期を迎えた筋兜ですが、江戸時代に入ると、実戦よりも格式や鑑賞が重んじられるようになります。そのため、室町期のものに比べて鉄板が厚く、重厚な造りとなっているのが江戸期筋兜の特徴であり、当時の武士たちが古式ゆかしい美を愛で、家宝として大切に伝えてきた歴史が伺えます。 吹き返し(ふきかえし)は、顔面を刀から守る実用的な機能とともに、兜の装飾美を象徴する部位でもあります。本作の吹き返しには、金家紋が据えられています。 家紋は「丸に加賀梅鉢(まるにかがうめばち)」です。梅は寒さの残る時期にいち早く開花することから、春の訪れを告げる花として古来より日本人に愛されてきました。その愛らしい花びらや香り、気品ある枝ぶりは多くの詩歌に詠まれ、厳しい冬を耐え抜く「忍耐」と「生命力」の象徴とされています。「鉢」は太鼓を叩く「桴(ばち)」を模した意匠で、中心から放射状に五つの桴が配されています。この紋は、加賀百万石を治めた前田家が使用したことで非常に名高く、格式高い紋として知られています。 前立(まえだて)には「三日月」の意匠が据えられています。三日月は武士の間で非常に人気のあったモチーフです。一説には、インドに起源を持ち大陸を経て伝わった「妙見(みょうけん)信仰」に由来するとされています。妙見菩薩は北極星や北斗七星、そして月を神格化したもので、五穀豊穣や一族繁栄、武運長久、さらには諸願成就を司る守護神として、武家文化と深く結びついていました。 また、兜の頂辺にある八幡座(はちまんざ)は……





















兜のみ
62間 · 筋鉢
無銘
Maru ni Kaga Ume Bachi (Maeda clan crest)
江戸
Maeda
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
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