本品は底銘になっているものの「江府住□吉□」と銘が読み取れます。 黒く澄んだ色艶を持つ赤銅無垢の地金を丸形に整え、空から水辺へ続く景色を透かしだけで組み立てた一枚で、上方にたなびく雲と三日月、下方に三羽の雁と網干しを配した構図は、月明かりの下で静まる水辺の気配を端正な輪郭の中に凝縮しています。 上部の左右には雲を横へ長く流し、その間から細い三日月をすっと立ち上がらせ、黒い赤銅と透けた余白との対照によって、夜空に浮かぶ月の姿を際立たせています。雲の縁には細かな起伏を付け、平らな影として終わらせず、月の明るさを引き立てる奥行きを生み、鐔を光にかざせば、左右にたなびく雲の間に三日月が鮮やかに浮かび上がります。 下方には三羽の雁が翼を広げて飛ぶ姿を透かし表し、左下では竿を立てて網を干す様子を直線的な構成で示して、柔らかな雲と月の曲線へ水辺の人の営みを添えています。三羽はいずれも左方へ向かい、翼の開き方に変化を付けながら月下を渡り、画面下方へ流れのある群れを形作っているため、上方に広がる静かな夜空との対照が生まれ、網干しの斜線が構図全体を端正に引き締めています。 小柄櫃穴のくぼみには地金と同じ赤銅の埋金を嵌め、丁寧に櫃埋めしています。黒い地色になじませた細やかな仕事を確かめると、この鐔が図柄だけでなく、手元の仕立てまで意識して整えられていることが伝わります。切羽台には銘とともに茎穴の上下に素銅の責金が見られ、厚みを保った赤銅無垢の地を大きく抜きながらも、雲、月、雁、網干しの各部が耳と確かにつながる造りは、佩刀に用いる金具としての力強さを備えています。 月と雁は季節の深まりを思わせ、そこへ網干しを添えた本品には、夜の空と川辺を一つの画面に取り込む詩情があり、表から見ても裏から見ても透かしの輪郭がすっきりと通り、傾けるたびに赤銅の艶と余白の明るさが表情を変えます。三日月の細い弧、三羽の雁の姿、網を干す竿の直線を順に追うほど、簡潔な線で豊かな景色を語る金工の工夫が見えてくる、拵にも手元での鑑賞にも魅力ある一枚です。
取扱店 刀心
この品の現在有効な鑑定書は確認できませんでした。審査に出されたことがあるか、出せるかを刀剣商にお尋ねください。 — Hoshi











刀剣商の出品ページで鑑定書を確認できませんでした。日本刀および刀装具は通常、NBTHK(または NTHK)の鑑定を受けます。鑑定書がない場合、極めは刀剣商の見解にとどまり、第三者による確認は行われていません。ご購入前に刀剣商へ鑑定書の有無をお問い合わせのうえ、慎重にご判断ください。
お求めになられた商品とは異なる商品をお届けしてしまった場合や、表記内容と現物とに大きな隔たりなどがあった場合を除き、基本的に返品はお受けいたしません。返品をご要望の場合は、商品到着後3日以内に御連絡の上ご返送下さい。
¥242,000