月下双兎図鐔 無銘(金象嵌花押) -Mumei (Gold-inlaid Kao)- 縦79.0ミリ 横70.6ミリ 切羽台厚4.2ミリ 重さ139.0グラム 江戸中期~後期 The middle to latter Edo period 附属 桐箱 兎は古くから月と深く結び付けられ、飛躍、長寿、子孫繁栄を象徴する吉祥の動物として絵画や工芸に親しまれてきました。本図では左の一匹が月を仰ぎ、その背後へもう一匹が寄り添う姿を描いています。二匹の関係を親子または雌雄と限定せず「双兎」と捉えていますが、身を寄せ合う姿には夫婦円満や家庭の安泰、生命の繁栄を願う意匠としても味わえる温かな趣があります。 本品は縦79ミリの堂々とした撫角形の鉄地を広く残し、表の左上方へ横にたなびく雲と満月、右下へ二匹の兎を配した、対角線の流れと余白が美しい構成です。月を覆いながら流れる雲が夜空の奥行きを生み、左の兎が上方へ顔を向ける一方、右の兎はその後ろで静かに寄り添い、二匹の視線と姿勢の違いから月夜の一瞬へ自然な物語が立ち上がっています。 左の兎は銀、右の兎は赤銅でふっくらと彫り起こし、いずれも眼へ金象嵌を施して生命感を与えています。二匹の左右には蕨と草を配し、細く伸びる茎葉へ金色絵を加えることで、深い鉄色の中へ月光に照らされたような繊細な輝きを添えています。銀の清明な色、赤銅の温かな色、金の小さな光が互いを引き立て、色金の違いそのものが二匹の個性として感じられる巧みな仕立てです。 小柄櫃孔は赤銅で丁寧に埋められ、切羽台には作者の花押が金象嵌されています。裏面は左下へ草と蕨を簡潔に表し、表の情景を静かに受け継ぎながら、広い鉄地の落ち着いた肌を十分に鑑賞できる構成。重量139グラムの充実した手取り、大振りな画面、月下の双兎という人気の高い吉祥画題に加え、銀、赤銅、金を的確に使い分けた品格ある仕事が揃い、拵へ合わせても独立した金工作品として飾っても豊かな存在感を楽しめる一枚です。
取扱店 刀心
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金象嵌銘
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