南蛮鐔は海外交易を通じてもたらされた意匠や造形感覚を取り込み、龍、宝珠、雲、唐草などを密な肉彫地透で表した一群で、江戸時代には長崎を窓口として各地へ広まりました。文様を表裏へ連続させながら画面を埋め尽くす構成、異国風の装飾を加えた切羽台、額縁のように幾重にも巡らせた耳際の造形は南蛮鐔ならではの見どころであり、本品にもその濃密で力強い美意識がよく示されています。 隅入角形の大きな画面を多重の縁で引き締め、上方に三つの雲、その周囲へ複雑に入り組む唐草を配し、左右から向かい合う一対の雨龍を肉彫地透で力強く表しています。二頭の龍が中央の宝珠を求めて相対する構図には緊張感があり、雲と唐草の曲線へ龍体を巧みに溶け込ませた密度の高い彫りは、見るほどに新たな細部が現れる南蛮鐔らしい奥深さを備えています。切羽台にも異国趣味の濃い独特の文様を彫り込み、実用部分まで装飾を途切れさせない徹底した作り込みが見逃せません。 耳の縁には縄目模様を巡らせ、太く堂々とした外郭へ細やかな変化を添えています。一方の櫃孔は赤銅で丁寧に埋められており、黒みを帯びた色合いが鉄地へ自然になじむとともに、実際の拵へ用いられてきた来歴を静かに物語ります。深く沈んだ鉄色、大ぶりで風格ある輪郭、画面を埋め尽くす緻密な仕事量、東西文化が交差する独特の意匠を一度に味わえるため、拵の中心として強い個性を求める方はもちろん、細部を時間をかけて読み解く南蛮鐔の醍醐味を堪能したい愛好家にも薦めたい一枚です。








無銘
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