鍛肌無地鐔 江府住並壽 -Kōfu-jū Naruhisa- 縦82.0ミリ 横78.5ミリ 切羽台厚5.65ミリ 重量183グラム 江戸後期 Late Edo period 附属 桐箱 江府住並壽は、江戸時代後期に江戸で活動した鐔工です。詳細な経歴や系譜は明らかではありませんが、江戸鐔工を紹介する資料には江府住辰寿、並寿、満喜らの名が記されており、並壽も江戸で鉄鐔を制作した刀装具師の一人であったことが確認できます。また、えさし郷土文化館には「銘 江府住並壽」の作品が所蔵されており、その存在を今日に伝えています。なお、本作では従来の呼称に従い「なるひさ」と読んでいますが、この読みを明確に裏付ける一次資料は現時点で確認できず、確実な読みについては今後の研究が待たれるところです。 本作は装飾を施さず、鍛え上げた鉄そのものを鑑賞の対象とした作で、板面には折り返し鍛錬によって生じた木目状の鍛肌が全面に鮮明に現れています。片櫃は赤銅によって丁寧に埋められ、実用に応じた改変が施されています。また、手貫緒を通すための二つの穴が穿たれており、武用鐔として実際に使用されたことを物語っています。経年による擦れ傷や錆落ちが認められるものの、地鉄は健全で、むしろ鍛肌の力強い景色を際立たせています。華美な彫刻や象嵌に頼ることなく、鍛え抜かれた鉄味そのもので見せる作域は実に潔く、実用品としての機能美と素材の美しさを兼ね備えた、江戸後期鉄鐔の魅力を存分に味わうことのできる佳作です。








鐔工 · 武蔵
現在7点販売中
鐔工 · 武蔵
現在57点販売中
伊藤派は武蔵国江戸神田を拠点とした金工の一派で、初代正長(元禄頃~享保十二年没)が宝永七年に将軍家宣に拝謁し、公儀お抱え鍔師に任ぜられたことに始まる。歴代当主はいずれも「正」の字を通字とし、十代にわたって鍔・小道具の制作を続けた。二代正恒は糸透かしと呼ばれる精緻な糸鋸透の技法を開発し、「武州住正恒」と銘する打刀拵では鐔・縁頭を同作とし、七宝・螺鈿・金打込を駆使した統一的な拵を手がけている。十代にして最後の当主となった伊藤勝見(文政十二年〈一八二九〉生、明治四十三年〈一九一〇〉没)は、十二歳で田中清寿の門人となり、弘化元年に師家の養子となって清重と名乗った。若くして法橋に叙され、師父から東竜斎の号を許されたが、清寿と不仲になって田中家を離れた後、柴田是真に蒔絵を学んだ。万延元年三月に伊藤正広家と養子縁組して正隆と名乗り、伊藤家十代目を継承、三十歳後半に勝見と改名した。金工の鍛錬に是真門下の蒔絵の薫陶が加わり、勝見の色金への鋭敏な感覚に結実した。 伊藤派の作風は、象嵌と色絵を的確に用いた精密な彩色金工を最大の特色とする。鉄・四分一・朧銀・赤銅の地板に、高彫・鋤出高彫・片切彫・毛彫といった多彩な彫技を駆使し、金・銀・素銅・緋色銅・真鍮など多種の色金による象嵌色絵を施す。正恒の拵作品では赤銅魚子地に高彫色絵の栗形・返角を配し、鐺には金地に桜花文を打込む手法が見られ、「すべてに取り合せがよく、当時の武士の好尚がうかがえる」[[c:1]]と評される。勝見の作品では、鳥羽僧正に因む鳥獣戯画蛙合戦図・蝦蟇仙人蛙合戦図・大聖不動明王図など物語性・信仰性の強い図柄が好まれ、いずれも「高彫から片切毛彫を駆使した抜群な彫技」[[c:2]]と「的確で優れた象嵌色絵」[[c:3]]が一体となった画面を構成する。小柄においても牡丹に胡蝶を金・銀・緋色銅など多彩な色金で豊かに表現し、「発色の良い色金の象嵌技術は勝見の本領が存分に発揮され」[[c:4]]た入念作と称される。据文象嵌・布目象嵌・消し込み象嵌など技法の使い分けも巧みで、清寿門下の伝統を踏まえつつ独自の境地を拓いた。 伊藤派は元禄から明治に至るまで江戸の鐔工として高い水準を維持した一門である。参勤交代を通じて各国の武士がその作品を求め、伊藤鐔は全国に広まった。説示において勝見の作品は繰り返し「真骨頂を示す優品」[[c:5]]「勝見の本領が存分に発揮された」[[c:6]]と評価され、蛙合戦図鐔については「諧謔な図を昇華させた鐔」[[c:7]]と、物語画を金工芸術の高みに引き上げた点が特筆されている。絵画的な構図力と高度な彫金・象嵌を融合させ、信仰や文学の主題を鐔上に再現し得た伊藤派は、幕末金工史において独自の位置を占める。 詳しく見る →
販売店の出品ページで鑑定書を確認できませんでした。日本刀および刀装具は通常、NBTHK(または NTHK)の鑑定を受けます。鑑定書がない場合、極めは販売店の見解にとどまり、第三者による確認は行われていません。ご購入前に販売店へ鑑定書の有無をお問い合わせのうえ、慎重にご判断ください。
お求めになられた商品とは異なる商品をお届けしてしまった場合や、表記内容と現物とに大きな隔たりなどがあった場合を除き、基本的に返品はお受けいたしません。返品をご要望の場合は、商品到着後3日以内に御連絡の上ご返送下さい。
¥66,000
鍛肌無地鐔 江府住並壽 -Kōfu-jū Naruhisa- 縦82.0ミリ 横78.5ミリ 切羽台厚5.65ミリ 重量183グラム 江戸後期 Late Edo period 附属 桐箱 江府住並壽は、江戸時代後期に江戸で活動した鐔工です。詳細な経歴や系譜は明らかではありませんが、江戸鐔工を紹介する資料には江府住辰寿、並寿、満喜らの名が記されており、並壽も江戸で鉄鐔を制作した刀装具師の一人であったことが確認できます。また、えさし郷土文化館には「銘 江府住並壽」の作品が所蔵されており、その存在を今日に伝えています。なお、本作では従来の呼称に従い「なるひさ」と読んでいますが、この読みを明確に裏付ける一次資料は現時点で確認できず、確実な読みについては今後の研究が待たれるところです。 本作は装飾を施さず、鍛え上げた鉄そのものを鑑賞の対象とした作で、板面には折り返し鍛錬によって生じた木目状の鍛肌が全面に鮮明に現れています。片櫃は赤銅によって丁寧に埋められ、実用に応じた改変が施されています。また、手貫緒を通すための二つの穴が穿たれており、武用鐔として実際に使用されたことを物語っています。経年による擦れ傷や錆落ちが認められるものの、地鉄は健全で、むしろ鍛肌の力強い景色を際立たせています。華美な彫刻や象嵌に頼ることなく、鍛え抜かれた鉄味そのもので見せる作域は実に潔く、実用品としての機能美と素材の美しさを兼ね備えた、江戸後期鉄鐔の魅力を存分に味わうことのできる佳作です。








鐔工 · 武蔵
現在7点販売中
鐔工 · 武蔵
現在57点販売中
伊藤派は武蔵国江戸神田を拠点とした金工の一派で、初代正長(元禄頃~享保十二年没)が宝永七年に将軍家宣に拝謁し、公儀お抱え鍔師に任ぜられたことに始まる。歴代当主はいずれも「正」の字を通字とし、十代にわたって鍔・小道具の制作を続けた。二代正恒は糸透かしと呼ばれる精緻な糸鋸透の技法を開発し、「武州住正恒」と銘する打刀拵では鐔・縁頭を同作とし、七宝・螺鈿・金打込を駆使した統一的な拵を手がけている。十代にして最後の当主となった伊藤勝見(文政十二年〈一八二九〉生、明治四十三年〈一九一〇〉没)は、十二歳で田中清寿の門人となり、弘化元年に師家の養子となって清重と名乗った。若くして法橋に叙され、師父から東竜斎の号を許されたが、清寿と不仲になって田中家を離れた後、柴田是真に蒔絵を学んだ。万延元年三月に伊藤正広家と養子縁組して正隆と名乗り、伊藤家十代目を継承、三十歳後半に勝見と改名した。金工の鍛錬に是真門下の蒔絵の薫陶が加わり、勝見の色金への鋭敏な感覚に結実した。 伊藤派の作風は、象嵌と色絵を的確に用いた精密な彩色金工を最大の特色とする。鉄・四分一・朧銀・赤銅の地板に、高彫・鋤出高彫・片切彫・毛彫といった多彩な彫技を駆使し、金・銀・素銅・緋色銅・真鍮など多種の色金による象嵌色絵を施す。正恒の拵作品では赤銅魚子地に高彫色絵の栗形・返角を配し、鐺には金地に桜花文を打込む手法が見られ、「すべてに取り合せがよく、当時の武士の好尚がうかがえる」[[c:1]]と評される。勝見の作品では、鳥羽僧正に因む鳥獣戯画蛙合戦図・蝦蟇仙人蛙合戦図・大聖不動明王図など物語性・信仰性の強い図柄が好まれ、いずれも「高彫から片切毛彫を駆使した抜群な彫技」[[c:2]]と「的確で優れた象嵌色絵」[[c:3]]が一体となった画面を構成する。小柄においても牡丹に胡蝶を金・銀・緋色銅など多彩な色金で豊かに表現し、「発色の良い色金の象嵌技術は勝見の本領が存分に発揮され」[[c:4]]た入念作と称される。据文象嵌・布目象嵌・消し込み象嵌など技法の使い分けも巧みで、清寿門下の伝統を踏まえつつ独自の境地を拓いた。 伊藤派は元禄から明治に至るまで江戸の鐔工として高い水準を維持した一門である。参勤交代を通じて各国の武士がその作品を求め、伊藤鐔は全国に広まった。説示において勝見の作品は繰り返し「真骨頂を示す優品」[[c:5]]「勝見の本領が存分に発揮された」[[c:6]]と評価され、蛙合戦図鐔については「諧謔な図を昇華させた鐔」[[c:7]]と、物語画を金工芸術の高みに引き上げた点が特筆されている。絵画的な構図力と高度な彫金・象嵌を融合させ、信仰や文学の主題を鐔上に再現し得た伊藤派は、幕末金工史において独自の位置を占める。 詳しく見る →
販売店の出品ページで鑑定書を確認できませんでした。日本刀および刀装具は通常、NBTHK(または NTHK)の鑑定を受けます。鑑定書がない場合、極めは販売店の見解にとどまり、第三者による確認は行われていません。ご購入前に販売店へ鑑定書の有無をお問い合わせのうえ、慎重にご判断ください。
お求めになられた商品とは異なる商品をお届けしてしまった場合や、表記内容と現物とに大きな隔たりなどがあった場合を除き、基本的に返品はお受けいたしません。返品をご要望の場合は、商品到着後3日以内に御連絡の上ご返送下さい。
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