耳より高く厚みのある図像に金象嵌をふんだんに施した、さながら煌びやかな立体合戦絵巻である。波頭を立てて走り、大きくうねる波。金の色味に変化をつけた極細の布目象嵌がその動きを強調している。鐔上部に配された船の船首には女性の姿が。その前方の船には錨を抱いた武将も見える。几帳(それとも陣幕であろうか)には紗綾形文に揚羽蝶紋の金布目象嵌。何とも雅やかな風情であるが、仔細に見れば下方では凄惨な場面が繰り広げられている。海に転落した裸同然の兵が美々しい大鎧の武者の足を抱え込んで海へ引きずり込もうとしている。はたまた刀を手にし、背後から甲冑武者に組み付かれた武者が、一人を後方へ投げ飛ばし、別の一人を前方の海に落としている。頭から落とされた兵は海面に草摺を広げ、足を上に突き出している。詳細かつ臨場感たっぷりに描かれた壇ノ浦の合戦は、さらにその先へ続く悲劇をも連想させる。





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