江戸時代後期 特別貴重資料(A-62)認定 侍具足 時代: 江戸時代後期(1781年-1867年) 日本甲冑武具研究保存会による鑑定(2026年3月15日付) 【兜】 ■鉢:筋兜 兜は侍の頭部を守る極めて重要な防具です。初期の兜は実用性を主眼に製作されていましたが、時代が下るにつれ、武士の威厳や個性、さらには信仰心をも象徴するものへと変化していきました。室町時代後期から江戸時代にかけては、獣毛や貝殻、植物、和紙などを用いた装飾性の高い「変わり兜」も登場します。 実用的な意匠の中でも、特に高く評価されたのが「筋兜(すじかぶと)」です。鉢の表面に盛り上がった「筋」を立てることで、刀の打撃を逸らし、衝撃を軽減する構造となっています。この技術革新は軽量化にも繋がり、14世紀から16世紀にかけての変化する戦術にも対応しました。室町時代に全盛を迎えた筋兜ですが、本作は「三十二間筋兜(さんじゅうにけんすじかぶと)」であり、32枚の鉄板を矧ぎ合わせて鉢を形成しています。放射状に広がる筋は機能美と堅牢さを兼ね備えており、これほど多くの枚数を用いることで、より滑らかで円熟したシルエットを実現しています。当時の甲冑師の高度な技術が窺える逸品です。 また、鉢の頂部には「天辺の穴(てっぺんのあな)」があり、本作には中心に菊の花をあしらった緻密な装飾が施されています。菊は日本文化において高貴さと長寿の象徴であり、皇室ゆかりの紋章としても知られています。また、周囲の唐草文様は途切れることなく伸びる蔓を描いており、生命力や繁栄、子孫繁栄を象徴する吉祥文様です。本来、天辺の穴は侍の「髷(まげ)」を出すための実用的な開口部でしたが、鎌倉時代頃には敵の攻撃の的となることを避けるためその習慣は廃れました。以降、この部分は本作のように華やかな装飾を施す場へと変化を遂げたのです。 ■しころ(頸部保護具) ■吹返(ふきかえし) 吹返は兜の両端に備えられた吹き出し部分で、顔面を刀撃から守る防御機能とともに、武士の家格や所属を示す装飾的な役割も果たしました。 本作の吹返には、日本を代表する家紋の一つである「鷹の羽紋(たかのはもん)」が据えられています。鷹はその優雅な飛翔と、獲物を追う際の猛々しさから古来より人々を魅了してきました。特に武家階級にとって、鷹は憧憬の対象でありました。 また、鷹は「鷹狩り」を通じて人間と密接に関わり、狩猟において活躍した動物です。その力強いイメージと人間との深い繋がりから、鷹は強さと権威の象徴となり、武家の間で鷹の羽紋が広く普及する背景となりました。 地紋には「唐獅子牡丹(からじしぼたん)」の意匠が見て取れます。唐獅子と牡丹を組み合わせたこの伝統的な図柄は、勇気、高貴、そして守護を象徴しています。百獣の王である獅子と、富貴の象徴であり「百花の王」と称される牡丹の組み合わせは、武士の力強さと気品を体現する極めて縁起の良い意匠です。 ■面頬(めんぽう):烈勢面(れっせいめん) この面頬は「烈勢面」と呼ばれる形式です。その名の通り、戦場において着用者を勇猛に見せるために製作されました。こうした面頬は、単に顔面を保護するだけでなく……
江戸




















当世具足 · 二枚胴
具足一連(完備)
32間 · 筋鉢
無銘
Orange, Green, White
Taka no ha-mon (hawk feather crest)
江戸
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
Returns/exchanges limited to defects caused by shipping (except willful misconduct or gross negligence by the company); customers must contact within 72 hours of receiving the product.








江戸時代後期 特別貴重資料(A-62)認定 侍具足 時代: 江戸時代後期(1781年-1867年) 日本甲冑武具研究保存会による鑑定(2026年3月15日付) 【兜】 ■鉢:筋兜 兜は侍の頭部を守る極めて重要な防具です。初期の兜は実用性を主眼に製作されていましたが、時代が下るにつれ、武士の威厳や個性、さらには信仰心をも象徴するものへと変化していきました。室町時代後期から江戸時代にかけては、獣毛や貝殻、植物、和紙などを用いた装飾性の高い「変わり兜」も登場します。 実用的な意匠の中でも、特に高く評価されたのが「筋兜(すじかぶと)」です。鉢の表面に盛り上がった「筋」を立てることで、刀の打撃を逸らし、衝撃を軽減する構造となっています。この技術革新は軽量化にも繋がり、14世紀から16世紀にかけての変化する戦術にも対応しました。室町時代に全盛を迎えた筋兜ですが、本作は「三十二間筋兜(さんじゅうにけんすじかぶと)」であり、32枚の鉄板を矧ぎ合わせて鉢を形成しています。放射状に広がる筋は機能美と堅牢さを兼ね備えており、これほど多くの枚数を用いることで、より滑らかで円熟したシルエットを実現しています。当時の甲冑師の高度な技術が窺える逸品です。 また、鉢の頂部には「天辺の穴(てっぺんのあな)」があり、本作には中心に菊の花をあしらった緻密な装飾が施されています。菊は日本文化において高貴さと長寿の象徴であり、皇室ゆかりの紋章としても知られています。また、周囲の唐草文様は途切れることなく伸びる蔓を描いており、生命力や繁栄、子孫繁栄を象徴する吉祥文様です。本来、天辺の穴は侍の「髷(まげ)」を出すための実用的な開口部でしたが、鎌倉時代頃には敵の攻撃の的となることを避けるためその習慣は廃れました。以降、この部分は本作のように華やかな装飾を施す場へと変化を遂げたのです。 ■しころ(頸部保護具) ■吹返(ふきかえし) 吹返は兜の両端に備えられた吹き出し部分で、顔面を刀撃から守る防御機能とともに、武士の家格や所属を示す装飾的な役割も果たしました。 本作の吹返には、日本を代表する家紋の一つである「鷹の羽紋(たかのはもん)」が据えられています。鷹はその優雅な飛翔と、獲物を追う際の猛々しさから古来より人々を魅了してきました。特に武家階級にとって、鷹は憧憬の対象でありました。 また、鷹は「鷹狩り」を通じて人間と密接に関わり、狩猟において活躍した動物です。その力強いイメージと人間との深い繋がりから、鷹は強さと権威の象徴となり、武家の間で鷹の羽紋が広く普及する背景となりました。 地紋には「唐獅子牡丹(からじしぼたん)」の意匠が見て取れます。唐獅子と牡丹を組み合わせたこの伝統的な図柄は、勇気、高貴、そして守護を象徴しています。百獣の王である獅子と、富貴の象徴であり「百花の王」と称される牡丹の組み合わせは、武士の力強さと気品を体現する極めて縁起の良い意匠です。 ■面頬(めんぽう):烈勢面(れっせいめん) この面頬は「烈勢面」と呼ばれる形式です。その名の通り、戦場において着用者を勇猛に見せるために製作されました。こうした面頬は、単に顔面を保護するだけでなく……
江戸




















当世具足 · 二枚胴
具足一連(完備)
32間 · 筋鉢
無銘
Orange, Green, White
Taka no ha-mon (hawk feather crest)
江戸
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
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