徳川の泰平のもと、大小は法度の定める身分の制服となり、需要は城下町、とりわけ江戸に集まった。工芸は二つに分かれる。目利きのための華やかな鑑賞の作と、截断の結果を金象嵌に刻む実証の刀である。
日本刀 諸刃造短刀 銘:青木元長(文化八年) NBTHK特別保存刀剣鑑定書付 【解説】 本作は、江戸時代後期の文化八年(1811年)に青木元長によって制作された一振りです。元長は尾張の六代信高、摂津の尾崎助隆、そして薩摩の奥元平といった諸国の名工に師事し、その高度な技術を貪欲に吸収したことで知られています。 本名を喜兵衛といい、当初は尾張の六代信高の門下に入り「信直」と銘じました。「信」の一字は師である信高より許されたものと推測されます。尾張で研鑽を積んだ後、濤瀾乱の第一人者として名高い大坂の尾崎助隆に師事。さらなる高みを目指して享和三年(1803年)には薩摩へと渡り、当時九州随一の名工であった奥元平の門を叩きました。この薩摩修行の折、師である元平より「元」の字を授かり、名を「元長」へと改めています。各地の伝法を修めた元長は、後に名古屋城下へと戻り、その卓越した技量を振るいました。 (体配) 本作は大変希少な「諸刃造(もろはづくり)」の体配を呈しています。鎬を境に棟側にも刃が施された構造で、左右対称の「剣(つるぎ)」とは異なり、日本刀特有の反りや構造を保ちつつ両刃とした、力強くも独特な造り込みが魅力です。 (鑑定) 本作は公益財団法人 日本美術刀剣保存協会(NBTHK)より「特別保存刀剣」に指定されています。これは保存状態が極めて良好であり、かつ美術的価値が高い真作の刀剣にのみ与えられる格調高い鑑定書です。 【刀身】 長さ(刃長):26.2 cm 反り:0 cm 刃文:焼入れによって生じる刃先の結晶構造 地紋(地肌):鍛錬の過程で現れる鋼の表面模様 切先:刀身の先端部分 茎(なかご):柄に収まる中心部分。古来より施された黒錆は赤錆を防ぐ役割を持ち、その錆色は制作年代を特定する重要な指標となります。 【外装】 拵(こしらえ):鞘、柄、鍔などを含めた日本刀の外装一式 縁頭(ふちかしら):柄の両端を保護する一対の金具 本作の縁頭には「桔梗唐草(ききょうからくさ)」が施されています。蔓が途切れることなく伸びる唐草文様は、強い生命力の象徴として「繁栄」や「長寿」を願う吉祥文様です。また、星型の可憐な花を咲かせる桔梗は、古くは「吉凶」を占う花として尊ばれ、平安時代より和歌や絵画の題材として親しまれてきました。その根は薬用としても重宝され、実用と美を兼ね備えた意匠として愛されています。
























摂津 · 1801-1804頃
藤代 Chu-jo saku · 刀剣大鑑 上位76%
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江戸時代
徳川の泰平のもと、大小は法度の定める身分の制服となり、需要は城下町、とりわけ江戸に集まった。工芸は二つに分かれる。目利きのための華やかな鑑賞の作と、截断の結果を金象嵌に刻む実証の刀である。
保存刀剣のうち、出来が一層優れ、保存状態も良好と認められたものです。再刃や、室町・江戸期の多くの無銘作は対象外となり、保存刀剣より高い基準が課されます。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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