撫子透鐔 無銘(古金工) -Mumei (Ko-kinko)- 縦83.05ミリ 横80.1ミリ 切羽台厚4.5ミリ 重量153.4グラム 桃山時代 The Momoyama period 附属 日本刀装具研究会鑑定書、桐箱 古金工は、主として室町時代から桃山時代を中心に制作された無銘の軟金属製刀装具のうち、後藤家をはじめとする特定の流派や作者へ極め難い作品に対して用いられる鑑定上の呼称で、作例によっては江戸前期頃まで含めて扱われます。山金や赤銅などの色金を地とし、彫刻、透かし、象嵌、色絵、覆輪といった技法を用いた多彩な作品が残されており、古い地金に育った深い色艶、大らかな意匠、時に驚くほど繊細な細工を併せ持つところに大きな魅力があります。 本品のように山金地へ銀象嵌を施し、赤銅覆輪と鉛による重量調整まで備えた鐔は、古金工の中でも意匠と技法を凝らした珍しい作例です。 撫子は秋の七草の一つに数えられ、繊細に裂けた花弁と可憐な姿から、優美さ、慎ましさ、変わらぬ愛情を象徴する花として和歌や工芸に親しまれてきました。本品は鐔面の各所へ咲く撫子と伸びやかな茎葉を透かし、銀象嵌を交えて表すことで、量感ある山金地の中へ風に揺れる草花の軽やかさを映し出し、桃山時代らしい大胆さと雅な趣を一つの画面へまとめています。 深い古色を呈する山金地には長い歳月を経た柔らかな艶が育ち、地板へ細やかに刻まれた草花の線、明快に開かれた撫子の透かし、静かに光を添える銀象嵌が豊かな表情を作り上げています。耳には赤銅の覆輪を巡らせ、小柄櫃孔も赤銅で端正に埋めることで、温かみのある山金の色調を深い黒が引き締め、鐔面へ落ち着きのある色彩の対照を生み出しています。 さらに透かしの一部へ鉛を巧みに入れて重量の均衡を整えており、装飾性と実用性を同時に追求した古金工としても珍しい周到な仕事が見どころです。 表面左下の撫子透かしには補修の跡があり、地板の一部にはひび割れが認められます。また、切羽台の茎孔周辺には異なる刀の茎へ合わせて幾度も加工された痕跡が重なり、本品が単なる鑑賞品としてではなく、400年以上もの間、実際の拵へ装着されながら大切に受け継がれてきた歩みを今に伝えています。 均一に整えられた後代の作品にはない、使い継がれた古金工ならではの歴史が鐔面そのものへ刻まれており、補修と調整を重ねながら桃山時代から今日まで姿を留めたことにも大きな価値があります。 大振りの山金地、銀象嵌、赤銅覆輪、鉛による重量調整という珍しい作域に、日本刀装具研究会鑑定書による古金工・桃山時代の極めが加わり、古い刀装具の伝来と実用の美を深く味わえる、資料性と鑑賞性を兼ね備えた貴重な一枚です。 ※委託品
取扱店 刀心
写真に鑑定書が写っており、出品ページには日本刀装具研究会の鑑定書と記されていますが、当サイトの記録にはまだありません。鑑定書は発行する団体によって異なり、私たちが第三者による確認として頼りにしているのは、現在有効な日刀保・日本刀剣保存会の審査の鑑定書だけです。鑑定書の内容を刀剣商にお尋ねになるとよいでしょう。 — Hoshi











無銘
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