赤坂忠時(四代)と目される本作は、鉄地と透かしの妙により、物語性豊かな情景を鮮やかに描き出した一枚です。 意匠は「雲龍図」と推測され、流麗かつ力強い曲線と、鋭く切り立った透かしの造形がその主題を雄弁に物語っています。龍の体躯は優美な弧を描き、周囲の雲海が中心の切羽台に向かって渦巻くような、動的な躍動感を見事に表現しています。 地鉄は精緻に鍛えられ、密度が高く滑らかな仕上がりを見せており、江戸時代の金工師による洗練された職人技が光ります。 また、一説には大きく枝を広げた「老松」とも見て取れますが、筆者としてはこの力強い龍の意匠を支持したく存じます。 象徴学的に見れば、龍は権威、知恵、そして守護の象徴であり、知性を兼ね備えた強さを理想とする武士に深く好まれた画題です。湧き上がる雲の造形は上昇と超越を意味し、所持者が世俗を超えた高潔な理想を抱いていることを示唆しています。 流麗なフォルムと堅牢な鉄地との対比は、澄み渡る精神によって制御された武士の「力」という、武士道の根幹にある二面性を象徴しているかのようです。 当時の武士は、自らの志や精神的守護、あるいは高貴な象徴としての龍に己を重ね、このような鍔を選んだのでしょう。龍は指導力や戦略的洞察力とも結びつけられるため、指揮官や実務家、あるいは文武両道を志す武士にこそ相応しい逸品です。また、本作が放つ洗練された趣は、武術的な象徴性のみならず、芸術的な審美眼をも備えた所持者の教養を物語っています。 推定流派・年代:赤坂派(忠時)、江戸時代中期 迷いのない彫口、優美な透かし、そして均衡の取れた空間構成は、江戸中期の赤坂派が到達した様式美を如実に示しています。







鐔工 · Edo
現在80点販売中
赤坂鐔は、江戸時代の初頭に京都から江戸赤坂に移住し、以後幕末まで栄えた鐔工の一派である。初代の庄左衛門忠正は寛永から明暦にかけて活躍したと伝えられ、文政年間に子孫の忠時が幕府に提出した由緒書には、初代忠正が明暦三年(一六五七)に歿し、二代忠正が延宝五年(一六七七)に歿したと記されている。初代忠正、二代忠正、三代忠虎の所謂「上三代」の古赤坂には在銘作が確認されておらず、後代の極めに委ねられているのが実情である。元禄頃の四代忠時になって「武州住赤坂彦十郎忠時作」[[c:2]]銘をはじめとして在銘作が現れ、以後九代まで嫡流は忠時を名乗った。嫡流のほか、四代忠時に入門した太右衛門忠重が別系を立て、その嫡男忠好もまた赤坂派の一人として鐔作を残している。 鉄の地透鐔工として赤坂派は京・尾張・肥後などと共に高名であり、同派の鉄の鍛えには三枚合わせと称される合わせ鍛えのものが見られる。画題には自然の風物・故事等を凝らした意匠を以て表したものが多く、鉢の木・時雨亭・武蔵野・蟷螂・風竹・輪違・老松などが初代以来の得意とする意匠として知られる。造込みは肉置きが中高となり、透かしの繋ぎが耳際で広くなって安定感があり、耳は丸耳となるのが通例である。切羽台の上部が尖りごころとなる点、笄櫃孔が小柄櫃孔に比して小さめとなる造りは初・二代に顕著な見処として繰り返し指摘される。古い赤坂鐔の造り込みは落ち着いた槌目仕立で、力強い丸耳を備え、文様がシンメトリーにとらわれず自由な気風と手強さがあり、地透しの彫に尖った独特の鋭さがある。その作風には京透と尾張透の影響が感知されるとともに、古正阿弥の影響も窺われ、これらを融合して江戸独自の透鐔の様式を確立した。彫りの内側に顕著に表れた筋状の合わせ鍛え目や耳に見られる縞状の鉄骨には古様がよく示され、品位風格を一段と高めている。 赤坂鐔の見どころの一つに構図の斬新さがあり、その点で最も賞賛されるのが太右衛門忠重である。晩年は「行年八十四才・忠重作」[[c:5]]銘が知られる長寿の人で、技術も江戸中期以降の赤坂鐔工中「屈指の上手」と称えられた。忠重は特に意匠が優れており、尾形光琳の文様意匠を採り入れるなど進取の気性に富み、老松の大小二本の枝振りに三階松風の意匠を配した代表作は「肥後鐔にも見られない忠重の独創」[[c:6]]と評される。彫口は鋭く、鍛えは上々で鉄に艶があり、耳際の肉を落とした肉置きは忠重の特色をよく示している。また肥後の勘四郎を手本としつつさらに新味を加えた斬新な構図にも、赤坂の伝統を継承しつつ独自の境地を拓いた忠重の力量が窺える。古赤坂の堂々たる気韻から忠重・忠好の粋な透しに至るまで、赤坂派は「粋な透しを本領とした」[[c:7]]鐔工の系譜として、鉄透鐔の一大伝統を築き上げた。 詳しく見る →
本作はNBTHKの旧鑑定書(貴重・特別貴重)を有しますが、これらは現在発行されておらず、信頼性に欠けるとされています。極めを確認するには、公的な鑑定機関(NBTHK・NTHKなど)への再提出による現代の鑑定をご検討いただけます。
14-day return window in original/unused condition; antique items (swords, menuki, tsuba and similar) are expressly excluded from exchange; EU consumers retain a 14-day cancellation right; refunds within 10 business days of approval.
€1,200
赤坂忠時(四代)と目される本作は、鉄地と透かしの妙により、物語性豊かな情景を鮮やかに描き出した一枚です。 意匠は「雲龍図」と推測され、流麗かつ力強い曲線と、鋭く切り立った透かしの造形がその主題を雄弁に物語っています。龍の体躯は優美な弧を描き、周囲の雲海が中心の切羽台に向かって渦巻くような、動的な躍動感を見事に表現しています。 地鉄は精緻に鍛えられ、密度が高く滑らかな仕上がりを見せており、江戸時代の金工師による洗練された職人技が光ります。 また、一説には大きく枝を広げた「老松」とも見て取れますが、筆者としてはこの力強い龍の意匠を支持したく存じます。 象徴学的に見れば、龍は権威、知恵、そして守護の象徴であり、知性を兼ね備えた強さを理想とする武士に深く好まれた画題です。湧き上がる雲の造形は上昇と超越を意味し、所持者が世俗を超えた高潔な理想を抱いていることを示唆しています。 流麗なフォルムと堅牢な鉄地との対比は、澄み渡る精神によって制御された武士の「力」という、武士道の根幹にある二面性を象徴しているかのようです。 当時の武士は、自らの志や精神的守護、あるいは高貴な象徴としての龍に己を重ね、このような鍔を選んだのでしょう。龍は指導力や戦略的洞察力とも結びつけられるため、指揮官や実務家、あるいは文武両道を志す武士にこそ相応しい逸品です。また、本作が放つ洗練された趣は、武術的な象徴性のみならず、芸術的な審美眼をも備えた所持者の教養を物語っています。 推定流派・年代:赤坂派(忠時)、江戸時代中期 迷いのない彫口、優美な透かし、そして均衡の取れた空間構成は、江戸中期の赤坂派が到達した様式美を如実に示しています。







鐔工 · Edo
現在80点販売中
赤坂鐔は、江戸時代の初頭に京都から江戸赤坂に移住し、以後幕末まで栄えた鐔工の一派である。初代の庄左衛門忠正は寛永から明暦にかけて活躍したと伝えられ、文政年間に子孫の忠時が幕府に提出した由緒書には、初代忠正が明暦三年(一六五七)に歿し、二代忠正が延宝五年(一六七七)に歿したと記されている。初代忠正、二代忠正、三代忠虎の所謂「上三代」の古赤坂には在銘作が確認されておらず、後代の極めに委ねられているのが実情である。元禄頃の四代忠時になって「武州住赤坂彦十郎忠時作」[[c:2]]銘をはじめとして在銘作が現れ、以後九代まで嫡流は忠時を名乗った。嫡流のほか、四代忠時に入門した太右衛門忠重が別系を立て、その嫡男忠好もまた赤坂派の一人として鐔作を残している。 鉄の地透鐔工として赤坂派は京・尾張・肥後などと共に高名であり、同派の鉄の鍛えには三枚合わせと称される合わせ鍛えのものが見られる。画題には自然の風物・故事等を凝らした意匠を以て表したものが多く、鉢の木・時雨亭・武蔵野・蟷螂・風竹・輪違・老松などが初代以来の得意とする意匠として知られる。造込みは肉置きが中高となり、透かしの繋ぎが耳際で広くなって安定感があり、耳は丸耳となるのが通例である。切羽台の上部が尖りごころとなる点、笄櫃孔が小柄櫃孔に比して小さめとなる造りは初・二代に顕著な見処として繰り返し指摘される。古い赤坂鐔の造り込みは落ち着いた槌目仕立で、力強い丸耳を備え、文様がシンメトリーにとらわれず自由な気風と手強さがあり、地透しの彫に尖った独特の鋭さがある。その作風には京透と尾張透の影響が感知されるとともに、古正阿弥の影響も窺われ、これらを融合して江戸独自の透鐔の様式を確立した。彫りの内側に顕著に表れた筋状の合わせ鍛え目や耳に見られる縞状の鉄骨には古様がよく示され、品位風格を一段と高めている。 赤坂鐔の見どころの一つに構図の斬新さがあり、その点で最も賞賛されるのが太右衛門忠重である。晩年は「行年八十四才・忠重作」[[c:5]]銘が知られる長寿の人で、技術も江戸中期以降の赤坂鐔工中「屈指の上手」と称えられた。忠重は特に意匠が優れており、尾形光琳の文様意匠を採り入れるなど進取の気性に富み、老松の大小二本の枝振りに三階松風の意匠を配した代表作は「肥後鐔にも見られない忠重の独創」[[c:6]]と評される。彫口は鋭く、鍛えは上々で鉄に艶があり、耳際の肉を落とした肉置きは忠重の特色をよく示している。また肥後の勘四郎を手本としつつさらに新味を加えた斬新な構図にも、赤坂の伝統を継承しつつ独自の境地を拓いた忠重の力量が窺える。古赤坂の堂々たる気韻から忠重・忠好の粋な透しに至るまで、赤坂派は「粋な透しを本領とした」[[c:7]]鐔工の系譜として、鉄透鐔の一大伝統を築き上げた。 詳しく見る →
本作はNBTHKの旧鑑定書(貴重・特別貴重)を有しますが、これらは現在発行されておらず、信頼性に欠けるとされています。極めを確認するには、公的な鑑定機関(NBTHK・NTHKなど)への再提出による現代の鑑定をご検討いただけます。
14-day return window in original/unused condition; antique items (swords, menuki, tsuba and similar) are expressly excluded from exchange; EU consumers retain a 14-day cancellation right; refunds within 10 business days of approval.
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