鑑定書には桜花透とあります。確かに上下には桜花が彫り込んであります。では左右に彫られた図柄は一体何でしょう。・・・判りません。その領域を囲むように太目の縁で区切られた形状は、団扇のようにも見えますが、この時代は扇子のはずで途中から竹骨もありません。何かモノには違いないと思われますが、一段低くなった個所には金の布目象嵌と何やら松の葉のような花らしき模様が散りばめられています。桜に関係した何かを連想したいところですが、参りました、お手上げです。鑑定書に記載された画題も、唯一判る形状である「桜花」と書くしかなかったのでしょう。画題はともかく、色付けに関してはよく見ないと判らない凝った所作がふんだんに盛込まれています。まずは桜の花びらの先辺り、金の露象嵌のほかに布目象嵌が施されています。左右の団扇の骨みたいな個所にも布目象嵌の跡が。そして一段低くなった個所には、象嵌を施すためか全面に布目の鑢痕があり、その上に金片が散りばめられ、松の葉のような文様が彫られているのです。様々な個所に布目象嵌を施すための鑢痕の所作が見てとれるのです。なかなか繊細な仕事をしている作のようです。体配は丸目を帯びてフックラとした印象があり、艶やかで潤みのある鉄味はしっとりとしていて存在感があります。ちょっと上品で優雅な見せる鐔にも思えますが、決して派手ではなく実用的な強さも感じとれ、画題同様なんとも捉え所のない作といったら、本作に失礼かもしれませんね。



鐔工 · 武蔵
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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