猪目窓重ね図小柄 無銘(古金工) -Mumei (Ko-kinko)- 全長98.8ミリ 幅14.5ミリ 重さ24.3グラム 桃山時代~江戸初期 The Momoyama to early Edo period 附属 桐箱 古金工とは、主として桃山時代以前から江戸初期にかけて制作された無銘の色金金具のうち、特定の流派や作者へ帰属し難いものを総称する呼び名です。後世の町彫に見られる精緻さとは異なり、柔らかな地金、素朴で力強い造形、長い使用によって馴染んだ色絵や魚子地に、古作ならではの深い味わいが現れます。 猪目は、猪の目をかたどったとされる上部が内側へくぼむ意匠で、古くから社寺建築や武具の金具に用いられ、魔除けや火除けに通じる文様として親しまれてきました。本品では猪目形を単なる紋として置くのではなく、二つの窓を前後へ重ねるように配し、細長い小柄の中央へ視線を集めながら、限られた画面に奥行きと変化を生み出しています。 地板には本来、細かな魚子が丹念に打たれていましたが、長い年月にわたり実用されたことで粒立ちが擦れ、現在は一見すると磨地のような穏やかな表情を呈しています。この摩耗は後世の平滑な仕上げとは異なり、手に取られ、装具として受け継がれてきた時間そのものを物語る景色であり、光を受けたときに残存する魚子がかすかに浮かぶところも見どころです。左手前の猪目窓には金色絵を施して華やかな焦点を作っていますが、ここにも摩耗によって下の地金が現れた部分があり、鮮やかな金と露出した古い地金が交わる色調から、古作ならではの重厚な風合いを味わえます。 もう一つの猪目窓を暗色のまま重ねることで、金色に輝く手前の窓との間に静かな遠近を設けており、輪郭の柔らかさや据紋の高低差にも桃山時代から江戸初期へ通じる古雅な趣が漂います。小刀を差し込む戸口(小口)には、長い年月の中で本来の鑞付けが外れた箇所を補うため、素銅地に金鍍金を施した口金が後補として添えられています。この補修は状態面では価格を抑える要素となる一方、実用の中で大切に繕われてきた来歴を示すものでもあり、魚子の摩耗や色絵の擦れとともに本品の長い時間を率直に伝えています。桃山時代から江戸初期の色金小柄らしい素朴な力強さ、吉祥性を備えた猪目の意匠、使い込まれて落ち着いた地金の景色が一口に凝縮された、古金工の魅力を身近に鑑賞できる味わい深い作品です。
取扱店 刀心
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桃山
無銘
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