左三つ巴紋小柄(小刀付) 無銘(古金工) -Mumei (Ko-kinko)- 全長201.0ミリ 小柄全長96.8ミリ 小柄幅14.1ミリ 重さ37.4グラム 桃山時代~江戸初期 The Momoyama to early Edo period 附属 桐箱 古金工とは、主として室町時代から江戸初期にかけて制作された無銘の色金金具のうち、特定の作者や流派へ帰属し難いものを総称する呼び名です。後世の町彫に見られる精緻で絵画的な表現とは異なり、良質な赤銅、素朴で力強い造形、古様な魚子、長い使用によって馴染んだ色絵などに独特の魅力があり、制作当初の華やかさと数百年を経た静かな古色を同時に味わえます。 巴紋は水が渦巻く姿、あるいは弓を射る際に腕へ着ける鞆を図案化したものともいわれ、回転する形から水の力や災厄除けへ結び付けられ、社寺の装飾や武家の家紋に広く用いられてきました。三つの巴が一つの円内を巡る三つ巴紋には、簡潔な輪郭の中に絶え間ない運動と均衡があり、尚武性と守護の意味を併せ持つ意匠として刀装具にもよく映えます。 本作は深い黒色を呈する赤銅地へ左三つ巴紋を三つ、縦一列に整然と据え、上下の紋には金色絵を施し、中央は赤銅の黒味をそのまま生かすことで、同じ紋の反復に明暗と色彩の変化を与えています。画面全体には本来、細かな魚子が丹念に打たれていましたが、長い年月にわたり実用されたことで中央部を中心に粒立ちが擦れ、現在は一見すると磨地のような穏やかな光沢を帯びています。上下の巴紋に施された金色絵にも同様の摩耗があり、とりわけ上の紋では金の下から赤銅の地金が現れ、鮮やかな金、黒い赤銅、擦れて柔らかくなった魚子が混ざり合う古作ならではの景色を見せています。 紋の輪郭は後世の作に見られる硬質な均整とは異なり、肉取りと線にわずかな揺らぎを残しながら、古金工らしいおおらかな存在感を備えています。裏面は文様を置かない赤銅磨地に仕立て、表の魚子地と三つの巴紋を際立たせており、附属する小刀には時代相応の錆や研ぎ減りが認められるものの、小柄へ収めた姿には古い刀装具としてのまとまりがあります。魚子や色絵の摩耗は状態面では価格を抑える要素となる一方、後世に古色を装ったものでは得難い、長年にわたり実際に用いられてきた時間の蓄積を雄弁に伝えています。赤銅の深い黒味、古様な魚子、簡潔な巴紋に残る金色絵を通じて古金工の魅力を存分に味わえる、古雅で収集性の高い一口です。
取扱店 刀心
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桃山
無銘
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