敦盛熊谷図縁頭 無銘(水戸) -Mumei(Mito)- 縁 縦38.1ミリ 幅12.1ミリ 頭 縦34.0ミリ 重さ37.0グラム 江戸中期 The middle period of Edo era 附属 保存刀装具鑑定書、桐箱 水戸金工とは、現在の茨城県水戸を中心として江戸時代に活躍した金工群を総称するもので、精緻な彫技と巧みな色絵を特色とし、人物、故事、動植物など幅広い題材に優品を残しています。 その発展に大きな役割を果たした人物の一人が谷田部通寿で、元禄十年(1697)に生まれ、はじめ軍地功阿弥に師事し、のち江戸に出て奈良利寿に学んだと伝えられています。 その系統から玉川派をはじめ多くの優工が輩出し、水戸彫の隆盛に大きく寄与しました。 本作は四分一地に、『平家物語』で名高い一ノ谷合戦における熊谷直実と平敦盛の物語を、頭と縁を連続する一つの画面として表した作品です。 頭金具には扇を手に敦盛を呼び止める熊谷直実、縁金具にはその呼びかけに応じて振り返る平敦盛を配し、二つの金具を組み合わせることによって物語の一瞬が完成する巧みな構成となっています。 人物は肉高く彫り上げ、甲冑、兜、弓、馬具などの細部に豊富な金色絵を施すほか、赤銅や素銅系の色金を巧みに使い分け、四分一地の渋い地色を背景として武者と馬を鮮やかに浮かび上がらせています。 とりわけ見どころとなるのが縁に展開する敦盛の姿で、波濤の中を進みながら熊谷の声に応じて振り返る刹那を、馬の動きとともに躍動感豊かに捉えています。盛り上がる波を高低差のある彫りによって幾重にも重ね、その間へ細かな金の飛沫を散らし、武者の甲冑や弓、馬具にも繊細な金色絵を施すことで、わずか十数ミリの幅しかない縁の上に奥行きのある情景を作り出しています。 さらに画面が背面へ回るにつれて人物の姿が消え、波濤と飛沫と浜辺の松樹のみが残されてゆく構成にも余韻があり、単に正面だけを華やかに飾った作品ではありません。 頭金具の熊谷から縁金具の敦盛へと視線を移すことで、呼び止める者と振り返る者が呼応し、一組の縁頭そのものが物語を語り始めます。 人物の表情、甲冑の細部、馬の姿態から荒々しくうねる波濤に至るまで鏨を細かく使い分け、そこへ金を中心とする色金を効果的に配した仕事は見応えがあり、物語性と彫金技術、そして四分一地ならではの落ち着いた色調が見事に調和した、水戸金工の魅力を存分に味わえる逸品です。









水戸
江戸
常陸
無銘
保存 (NBTHK)
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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