瀧登鯉図共小柄 無銘 -Mumei- 小刀を含めた全長202.0ミリ 小柄部分の全長95.8ミリ 幅13.9ミリ 重さ40.2グラム 江戸中期~後期 The middle to late Edo period 附属 桐箱 瀧を登る鯉は、中国・黄河上流の急流「龍門」を登り切った鯉が龍へ変じるという登龍門の故事に基づき、立身出世、飛躍、困難を乗り越える強さを象徴する吉祥画題です。激流に逆らって上を目指す姿は武家の精神とも響き合い、端午の節句に鯉幟が掲げられる由来にも通じることから、刀装具にも繰り返し取り上げられてきました。 本品は温かみのある黄褐色を呈する宣徳地で小柄と小刀を揃えた共小柄とし、細長い画面を縦に使って瀧の流れへ果敢に挑む一匹の鯉を片切彫と毛彫で力強く表しています。大きく開いた鰓、幾重にも重なる鱗、勢いよく翻る尾鰭を鏨線の太細と密度によって描き分け、下方から上方へ連なる水流と、その周囲へ飛び散る水しぶきを添えることで、鯉が激しい瀧を一気に登っていく瞬間を生き生きと捉えています。 装飾を色金へ頼らず、宣徳地の渋い光沢と鏨線だけで鯉の量感、鱗の重なり、水の激しい動きを描き切っており、光の角度を変えるたびに彫りの深浅が浮かび上がって、金属一色の画面とは思えない豊かな表情を見せます。小柄と小刀の色調が一体となる共小柄ならではの端正な姿も魅力で、実用の道具としての潔さと登龍門の力強い願意を兼ね備え、困難を越えて高みを目指す鯉の姿を身近に愛玩できる、古雅で縁起のよい一口です。




江戸
無銘
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