粟穂梅花・唐獅子牡丹・秋虫図 三所物 【作品解説】 本作は、江戸時代に制作された目貫、小柄、縁頭からなる三所物でございます。 目貫には「粟穂(あわほ)」と「梅花(ばいか)」が彫り描かれております。粟穂は五穀豊穣と繁栄の象徴であり、厳しい冬を越えて真っ先に咲き誇る梅の花は、忍耐と再生の象徴とされてきました。これら二つの意匠の組み合わせには、実り豊かな人生への願いと、季節の移ろいを愛でる日本人の情緒が込められております。 小柄には「唐獅子牡丹(からじしぼたん)」が配されております。古来中国より伝わった想像上の瑞獣である唐獅子は、勇気と守護、そして威厳の象徴です。一方、百花の王とされる牡丹は、富貴や長寿、気品を表します。獅子は自らの身に寄生する「獅子身中の虫」を恐れますが、牡丹の花びらから滴る夜露にあたればその虫は死滅すると伝えられており、獅子は夜、牡丹の花の下で休息をとります。この故事から、唐獅子牡丹は「剛と柔」「勇気と慈愛」の調和を意味し、武士が理想とした精神性を象徴する画題となりました。 縁頭には「蟷螂(かまきり)」と「鈴虫(すずむし)」が施されております。前脚を合わせる姿が祈りを捧げる僧侶に見えることから「拝み虫」とも呼ばれる蟷螂は、誠実さや子孫繁栄の象徴です。また、鈴の鳴るような清らかな音色で鳴く鈴虫は、古くから秋の風物詩として親しまれてきました。平安時代の貴族から江戸時代の庶民に至るまで、日本人は虫の音に季節の移ろいを感じ、その美しさを愛でてまいりました。 粟穂と梅、獅子と牡丹、そして秋の虫たち。これら全ての意匠が一体となり、繁栄、生命力、そして自然との調和というテーマを体現しております。江戸武士の洗練された美意識と精神性が凝縮された逸品でございます。 【目貫(めぬき)とは】 目貫は日本刀の柄に装着される金具の一つです。元来は、刀身を柄に固定するための「目釘(めくぎ)」を覆う役割を担っておりましたが、時代とともに目釘と目貫は分離し、実用性と装飾性を兼ね備えた刀装具へと発展いたしました。 近世以降、目貫はより装飾的な意味合いを強めます。柄巻(つかまき)の下に据えられることで、刀を握る際の滑り止めとしての機能も果たし、実戦においても重要な役割を担いました。 【小柄(こづか)とは】 小柄は、鞘の側面に設けられた「小柄櫃(こづかひつ)」に納められる小刀の柄の部分を指します。多くの鍔には、中央の「切羽台(せっぱだい)」の両脇に、小柄や笄(こうがい)を通すための穴が開けられており、武士は刀を抜くことなくこれらを使用することができました。 当初は木を削るなどの工作用や、緊急時の投擲武器として用いられましたが、泰平の世となった江戸時代には、その装飾性が極めて重視されるようになりました。金工師たちの卓越した技術により、美術品としての価値が高まったのです。 【縁頭(ふちかしら)とは】 縁頭は、柄の強度を高めるための補強金具です。鍔に接する部分の「縁(ふち)」と、柄の先端に被せる「頭(かしら)」の二つで一組となります。実用的な補強具として始まりましたが、目貫や小柄と意匠を揃えることで、刀装全体の美しさを引き立てる重要な装飾要素となりました。 【武士にとっての刀装具】 日本刀の装具(鍔、目貫、縁頭など)には、多種多様な装飾が施されています。武士にとって日本刀は武器であると同時に、自らの身分や教養、そして信念を誇示するための象徴でもありました。





















江戸
無銘
販売店の出品ページで鑑定書を確認できませんでした。日本刀および刀装具は通常、NBTHK(または NTHK)の鑑定を受けます。鑑定書がない場合、極めは販売店の見解にとどまり、第三者による確認は行われていません。ご購入前に販売店へ鑑定書の有無をお問い合わせのうえ、慎重にご判断ください。
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$648
粟穂梅花・唐獅子牡丹・秋虫図 三所物 【作品解説】 本作は、江戸時代に制作された目貫、小柄、縁頭からなる三所物でございます。 目貫には「粟穂(あわほ)」と「梅花(ばいか)」が彫り描かれております。粟穂は五穀豊穣と繁栄の象徴であり、厳しい冬を越えて真っ先に咲き誇る梅の花は、忍耐と再生の象徴とされてきました。これら二つの意匠の組み合わせには、実り豊かな人生への願いと、季節の移ろいを愛でる日本人の情緒が込められております。 小柄には「唐獅子牡丹(からじしぼたん)」が配されております。古来中国より伝わった想像上の瑞獣である唐獅子は、勇気と守護、そして威厳の象徴です。一方、百花の王とされる牡丹は、富貴や長寿、気品を表します。獅子は自らの身に寄生する「獅子身中の虫」を恐れますが、牡丹の花びらから滴る夜露にあたればその虫は死滅すると伝えられており、獅子は夜、牡丹の花の下で休息をとります。この故事から、唐獅子牡丹は「剛と柔」「勇気と慈愛」の調和を意味し、武士が理想とした精神性を象徴する画題となりました。 縁頭には「蟷螂(かまきり)」と「鈴虫(すずむし)」が施されております。前脚を合わせる姿が祈りを捧げる僧侶に見えることから「拝み虫」とも呼ばれる蟷螂は、誠実さや子孫繁栄の象徴です。また、鈴の鳴るような清らかな音色で鳴く鈴虫は、古くから秋の風物詩として親しまれてきました。平安時代の貴族から江戸時代の庶民に至るまで、日本人は虫の音に季節の移ろいを感じ、その美しさを愛でてまいりました。 粟穂と梅、獅子と牡丹、そして秋の虫たち。これら全ての意匠が一体となり、繁栄、生命力、そして自然との調和というテーマを体現しております。江戸武士の洗練された美意識と精神性が凝縮された逸品でございます。 【目貫(めぬき)とは】 目貫は日本刀の柄に装着される金具の一つです。元来は、刀身を柄に固定するための「目釘(めくぎ)」を覆う役割を担っておりましたが、時代とともに目釘と目貫は分離し、実用性と装飾性を兼ね備えた刀装具へと発展いたしました。 近世以降、目貫はより装飾的な意味合いを強めます。柄巻(つかまき)の下に据えられることで、刀を握る際の滑り止めとしての機能も果たし、実戦においても重要な役割を担いました。 【小柄(こづか)とは】 小柄は、鞘の側面に設けられた「小柄櫃(こづかひつ)」に納められる小刀の柄の部分を指します。多くの鍔には、中央の「切羽台(せっぱだい)」の両脇に、小柄や笄(こうがい)を通すための穴が開けられており、武士は刀を抜くことなくこれらを使用することができました。 当初は木を削るなどの工作用や、緊急時の投擲武器として用いられましたが、泰平の世となった江戸時代には、その装飾性が極めて重視されるようになりました。金工師たちの卓越した技術により、美術品としての価値が高まったのです。 【縁頭(ふちかしら)とは】 縁頭は、柄の強度を高めるための補強金具です。鍔に接する部分の「縁(ふち)」と、柄の先端に被せる「頭(かしら)」の二つで一組となります。実用的な補強具として始まりましたが、目貫や小柄と意匠を揃えることで、刀装全体の美しさを引き立てる重要な装飾要素となりました。 【武士にとっての刀装具】 日本刀の装具(鍔、目貫、縁頭など)には、多種多様な装飾が施されています。武士にとって日本刀は武器であると同時に、自らの身分や教養、そして信念を誇示するための象徴でもありました。





















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