蟹図小柄(素銅製穂先付) 無銘 -Mumei- 小刀を含めた全長222.5ミリ 小柄の全長97.3ミリ 幅14.5ミリ 小刀を含めた重さ46.0グラム 小柄 江戸中期~後期 The middle to late Edo period 附属 桐箱 蟹は堅い甲羅を鎧に重ね、鋏で福運をつかむ吉祥の生き物として武家の意匠に親しまれました。横へ歩く独特の動きや、甲羅、脚、鋏が作る明快な輪郭は金工表現にも適し、水辺の草や葦と組み合わせることで、愛嬌と武張った力強さを併せ持つ画題となります。 本品は深い黒色の赤銅魚子地を長く整え、その中央へ草の茎につかまる一匹の蟹を肉高く据えています。丸みのある甲羅、胴の周囲へ引き寄せた鋏と脚、節を重ねる細部を丁寧に彫り分け、蟹と茎へ金色を施すことで、漆黒の魚子地から図柄が鮮明に浮かび上がります。整然と連なる魚子の粒と、蟹の立体的な量感との対照も見どころです。 意匠を画面中央へ絞り、前後に十分な余白を置いた構成は、蟹の姿を小さな家紋のように明快に見せ、拵へ収めても図柄がよく映えます。精緻な魚子地、高彫、金色の取り合わせを端正にまとめ、親しみある生き物へ武運と福運の願いを託した、手元で長く楽しめる小柄です。 附属する素銅製の刃は、明治時代に刀装具を海外へ紹介する輸出工芸品として、実用の小柄へペーパーナイフを仕立てたものです。江戸時代の刀装金工が培った繊細な意匠と、明治期における新たな鑑賞用途とが一体となって残されており、単なる後補の刃ではなく、日本の刀装具が海外の生活文化へ取り入れられていった時代を伝える興味深い姿となっています。




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