説明

大江山図鐔 江州彦根住藻柄子入道宗典製 -Goshu Hikone ju Soheishi Nyudo Soten- 縦84.8ミリ 横81.4ミリ 切羽台厚5.0ミリ 重さ138.5グラム 江戸中期 The middle period of Edo era 附属 桐箱 本鐔の画題である大江山の酒呑童子退治の伝説は、源頼光とその四天王、そして藤原保昌らが、都から次々と若い女性を拐う鬼の討伐へと向かう壮大な英雄譚です。 物語の大きな転換点であり、古くから絵巻物や浮世絵などの美術工芸品でも好んで描かれる名場面が、山伏に変装した頼光一行が大江山の奥深くで出会う「川辺の姫君」の場面であり、険しい山中を潜入する一行の前に現れたのは、鬼の城から流れる川のほとりで、血の付いた着物を洗いながら涙を流す、さらわれた都の貴族の姫君でした。 彼女は頼光たちに対し、捕らえられた女性たちが鬼の酒宴で生血を絞られ、肉を食われるという城内の凄惨極まる恐怖の状況を伝えて助けを求め、一行を鬼の城へと導く重要な道案内を果たします。 その後、鬼の城の酒宴で怯えながら給仕をさせられる姫君たちの痛ましい姿を目の当たりにした頼光らは、激しい怒りを胸に機を伺い、見事に酒呑童子の首をはねて鬼一味を壊滅させます。力強い武勇だけでなく、恐怖の地獄から都の姫君たちを救い出すという劇的な救出劇としての側面が、この伝説を不朽の名作たらしめています。 この鐔は、上述の酒呑童子退治を画題とした作品で、表裏の両面にわたり、切り立った険しい霊山や湧き立つ瑞雲を背景に、頭巾(ときん)を被り、錫杖を手にして山伏の姿に変装した源頼光らの一行と、大江山に捕らわれ、川辺で涙を流しながら着物を洗う都の姫君の姿が、極めて立体的な肉彫りで表現されています。衣服の篠懸(すずかけ)の細やかな文様や姫君の優美な衣装、登場人物たちの表情、山肌の意匠に至るまで、驚くほどの細やかさで彫り込まれており、細密彫刻の技が遺憾なく発揮されています。 黒々とした鉄地に美しく映える金・銀・銅の象嵌も実に見事であり、さらに耳には布目象嵌の手法を用い、全体を黄金色に仕立て、全体の気品を格段に引き締めています。 保存状態も頗る良く、鑑賞用としても極めて満足度の高い優品です。

大江山図鐔 江州彦根住藻柄子入道宗典製 -Goshu Hikone ju Soheishi Nyudo Soten- 12-1490

大江山図鐔 江州彦根住藻柄子入道宗典製 -Goshu Hikone ju Soheishi Nyudo Soten- 12-1490

¥330,000

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時代

Edo

流派について

Hikone School彦根派

彦根派は、近江国彦根に興った刀装具の一流派であり、その彫法は世に彦根彫の名をもって知られる。開祖は藻柄子入道宗典で、『装剣奇賞』によれば元来は京都の出身と伝えられ、後に江州彦根に移住して彦根彫の祖となったという。彦根御家中川北氏の抱え工となり、氏を喜多川(喜多河)と改め、初銘を秀典と称した。同名二代があるといい、現存する行年紀作などから初代は承応元年に生まれたことが知られ、その活躍期は江戸時代前期から中期にかけてである。美濃彫の流れを汲むとも伝えられ、作風に後藤風、美濃風が見られるとする見解もある。宗典の門からは野村包教をはじめとする有力な作者が輩出し、包教は宗典門第一の上手と称され、同派の有力な分派として独自の地位を確立した。 作風は、鉄地または赤銅魚子地を用い、鋤出高彫に金・銀・赤銅・素銅などの各種の色金を駆使した象嵌色絵をもって飾るものが多い。たっぷりとした地の表裏画面一杯に主題を肉置き豊かな高彫で表し、各種の色金にかつ金の種類をも複数使用して、壮大な画面に仕立てる点に大きな特色がある。題材は武者、竹林の七賢、花鳥、藻貝尽くし、唐人物、群仙図、十二支など多岐にわたり、また『源氏物語』の「明石」や『小督』の物語に取材した作例も見られる。賑やかに華やかに展開する様はまさに宗典の真骨頂であり、その彫口はおおらかでゆったりとしており、観る者を幽玄の世界に誘うと評される。包教もまた、大胆な構成力と繊細な色がね象嵌をもって画面を広く使い物語を演出し、師の作風を継承しつつ独自の魅力を加えた。 彦根派の作は、その濃密な彫法によって名を馳せ、宗典は代表工として多くの鐔好きを魅了した。ともすれば賑々しい鐔は行き過ぎの感を否めないこともあるが、宗典の手にかかると不思議と行き過ぎ感がないばかりか、品格をも兼ね備えた豪華な優鐔となる。包教の作もまた、師である宗典の傑作に勝るとも劣らない出来と評され、その白眉と見られる一枚も伝えられている。一方、宗典の名はあまりにも有名であったために、後代の彦根彫の作品に宗典の刻銘が多用され、土産物といわれる粗悪な作品にまで刻銘されているのが現実である。それゆえ真作においては、賑々しい作柄に品格を兼ね備えた豪華な優鐔が多く、行年銘が貴重であり、保存状態が良いことも好ましい評価の点とされる。

刀剣商

刀心

shop.nihontou.jp

¥330,000

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