説明

近江守法城寺橘正弘 刀:法城寺橘正弘(新刀上作) 鑑定:日本美術刀剣保存協会(NBTHK)特別保存刀剣 流派:法城寺派 時代:新刀 延宝頃(1673-1681年) 銘:近江守法城寺橘正弘 形状:刀 刀工大鑑評価:450万円 藤代正義評価:上作 長さ:70.4 cm(二尺三寸二分) 反り:2.1 cm 形状:鎬造、鳥居反り 棟:庵棟 重ね:8 mm 元幅:3.0 cm 先幅:2.0 cm 茎の状態:磨上げ 茎形状:標準、尻は切り 目釘穴:二個 鑢目:勝手下がり 【刃文】 小沸出来の互の目乱れ。匂口は深く明るく冴える。小沸が刃先に向かって霧のように均一に広がり、互の目の谷には足が入る。一部に数珠刃風の丸みを帯びた互の目が連なり、各所に二重刃が見て取れる。 【帽子】 小丸に短く返る。掃き掛けを伴い、帽子の中にも地沸がつく。 【鍛え】 小板目肌がよく詰み、精緻な肌合いが際立つ。地沸厚くつく。 【解説】 本作は武蔵国で活躍した法城寺正弘の優れた刀であり、二代正弘の手によるものです。二代正弘は延宝(1673-1681年)から正徳(1711-1716年)にかけて活動しました。 姿は元禄(1688-1704年)頃の様式を示しています。反りが浅く先細りとなる「寛文新刀」の姿とは対照的に、この時期には再び反りが深くなり、古刀の優美な姿を彷彿とさせる体配へと回帰しています。 正弘の本名は滝川庄之助といい、水戸藩主・徳川光圀(義公)に仕えた名工として知られています。藤代氏の評価では上作、刀工大鑑では450万円と高く格付けされています。 新刀において磨上げの作品は、往々にして非常に出来が良いものが多く見受けられます。これは、実戦や帯刀のために特に優れた刀が選ばれ、持ち主の体格に合わせて仕立て直された証でもあります。最高の道具を選ぶという観点から見れば、極めて合理的な背景と言えるでしょう。刀の斬れ味は視覚的な特徴からも推し量ることができ、それが現代の鑑賞の基礎となっています。 新刀は「内反り・産茎(うぶなかご)」を尊ぶのが通説ですが、本作のように長寸で銘がしっかりと残り、かつ出来の優れた「区送り(まちおくり)」や「磨上げ」の作品は、研究対象としても非常に価値があります。 本作はNBTHKの特別保存刀剣に指定されており、田野辺道宏先生による精緻な鞘書が施されています。鑑定書および鞘書の両者において、本作が二代正弘の真作であることが明記されています。銘振りには二代特有の特徴が顕著に表れており、作品自体の質の高さに加え、資料的価値も非常に高い一振りです。 研磨は最高級の状態で施されており、鎬筋や棟のラインも極めて鮮明です。化粧研ぎ(刃取り)は匂口に忠実に沿っており、疵や欠点はありません。健全で覇気に満ちた名品です。 白鞘(田野辺道宏先生鞘書付) 鞘書内容:「武州近江守法城寺橘正弘…」

近江守法城寺橘正弘
Tokuho

近江守法城寺橘正弘

$8,700

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仕様

長さ

70.4 cm

反り

2.1 cm

元幅

3 cm

先幅

2 cm

流派について

Hojoji School法城寺派

1 重要美術品1 特別重要刀剣39 重要刀剣

法城寺は但馬国の地名であり、この派の名はそこに発する。各工の説明書がまず立ち返るのは、南北朝期この地に住んだ薙刀の名手国光であって、国光のことを地名をもって法城寺と呼び習わしたと繰り返し記される。古刀の法城寺はこの国光を源とし、銘鑑に初・二代を挙げて初代を貞治、二代を応永とするが、有銘の太刀・薙刀は伝わらず、その盛名を担う薙刀および薙刀直しはことごとく無銘極めである。古来「相州貞宗の三哲の一人」に数える伝を、説明書は引くたびに「多くの疑問があり、俄かに賛成出来ない」「妥当を欠く」と退け、むしろ備前物の影響が強いと結ぶ。新刀期に至り、この但馬の流れを汲む一門が江戸に移って大いに栄えた。その初代を近江守正弘とし、これに直ぐ次ぐ貞国、吉次・正照・永国らの良工を輩出して、寛文・延宝の頃には江戸で最も多くの人数をもった鍛冶集団と呼ばれた。古刀の但馬法城寺と、江戸に分流した新刀の法城寺と、この二つの活動地・時代を一派の両端として読むべきである。 作風は古刀と新刀とで趣を異にする。古刀の無銘極めは、華やかな丁子乱れを焼いて一見備前一文字に見紛うほどでありながら、地刃の沸が一段と強く、大模様の鍛えに地景が入って肌立ち、刃中に金筋・砂流しを頻りにあしらう点で備前から分かたれる。地鉄は板目に大板目・流れ肌を交えて大模様に肌立ち、乱れ映りは鮮明な口少なく淡い口が多く、その淡さこそ但州法城寺の見どころと記される。在銘の短刀は趣を全く異にし、細直刃・中直刃に二重刃を交える手と、小のたれに互の目を交え砂流しさかんにかかる手とに分かれる。これに対し江戸新刀は、各工が一様に直刃を本領とする。正弘は匂深い直刃を得意とし、広直刃に小互の目を連れ、小沸むらなく厚くつき、二重刃をまま交え、地鉄は小板目をよくつめ地沸を微塵に厚くつけてかね明るい。貞国はこれに酷似して互の目を交え砂流しを走らせ、ただ地刃の冴えと匂口の力強さが正弘に僅かに及ばないとされる。吉次は一門中で互の目が最も目立ち、小のたれに数珠刃風の互の目を連ね、覇気に満ちた作域を示す。正照は中直刃に優れ、永国は直刃の焼出しより連なる互の目を一定の軸とする。帽子はおおむね直ぐに小丸へ返り先掃きかけるのを常とし、姿は鎬低く元先の幅差目立ち反り浅く中鋒つまる寛文新刀の体配を、各工がそれぞれの手で読んでいる。 鑑定の勘所は、この古刀と新刀の二つの面にそれぞれ立つ。古刀では、淡い乱れ映りと大模様に肌立つ鍛え、地刃の顕著な働きをもって備前と分かち、無銘極めの薙刀直しと在銘短刀との間に出来口の通うところを見出して一人の工に繋ぐのが眼目である。本間順治はこの手の薙刀直しを初代但州国光とし、無銘物には本阿弥光温・光忠ら代々の極めが付く。新刀では、各工の説明書がそろって長曽祢虎徹に近いことを記し、就中正弘を諸工のうち最も虎徹に近いとして、山野家の截断金象嵌を多く帯びる縁から法城寺一派と虎徹一門の相当近い関係を推す。判者が引く類比はみな上に向かい、貞国・吉次の優品は兼重ら江戸の名手に迫るとされ、その匂深く匂口明るい刃と微塵の地沸が、この一派を共通して支える。主要工の格は、古刀の国光が藤代上々作で重要文化財をも数えるのに対し、新刀の各工は上作ないし作に位し、その指定はおおむね重要刀剣の級にとどまる。伝来は、古刀国光の短刀が秋元家・前田家・徳松ゆかりの名物として伝わるのに対し、新刀の各工は大名家への古い伝来をほとんど記されず、山野家の截断銘がしばしば伝来の名を補う。市に現れるのは新刀の在銘作が折々のことに過ぎず、截断銘を帯びた出来のよい一口は、探すより俟つに値する。

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