
Antique Japanese Sword Wakizashi attributed to Fuyuhiro NBTHK Hozon Certificate
売却済
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Muromachi
仕様
38.9 cm
1 cm
作者について
Wakasa Fuyuhiro冬廣
冬広は若狭国小浜の刀工で、末室町の天文・永禄頃に活動した。永禄十一年(一五六八)の年紀作があり、十六世紀第三四半期の作刀がはっきりと裏付けられる。彼は若狭冬広の祖と位置づけられ、相州系の修業を経て若狭にその作風を伝えた地方の鍛冶である。説明書は、後に相州綱広の門に学んだと記し、「後、相州綱広の門に学んだ」とある一方、別伝では相州広次の後と伝えている。いずれにせよ系譜は相州にあり、彼とともに若狭へ及んだのは当代の末相州の作風である。現存する重要刀剣五口はいずれも「冬広」と棟寄りに三字銘を切り、すべて刀であって、紙の上の記録は珍しく一貫している。 その記録を貫く手は、肌立ち流れの板目である。地鉄は肌立ちごころの板目に鍛え、地沸がつき、しばしば板目肌が流れると評される。この肌立ち・流れごころの地鉄こそ彼の刀がまず共有するもので、説明書が分けて説く二様の作風を通して現れる。その地に対し彼は二つの異なる調子で焼く。穏やかな一作では、太い直刃調に小互の目を交え、小足・葉が刃中に働き、匂口は締まりごころに小沸がつく。豊かな一作では、焼幅を広く取り、処々大のたれ調に箱がかった互の目乱れを焼き、沸よくつき、砂流し・金筋がかかり、匂口は明るい。 この二様こそ、説明書がいう作風の二面そのものである。説明書は「その作風は末相州物のものと、末備前風のものとがあり」、直刃出来と乱れ出来のものとがあって上手であると記す。末相州の側は、締まった匂口と静かな小沸を伴う穏やかな直刃調に対応し、末備前風の側は、明るく焼いた沸づく互の目乱れに対応する。帽子はその下の刃に従う。直刃の上では直ぐに深く返り、時に殆んど一枚風となり、乱れの上では乱れ込んで掃きかけとなり、一口では焼詰めごころへと走る。地刃は一口ごとに健全と判じられ、優品に至れば説明書はこれを同作中の傑出と呼ぶ。倶利迦羅と梵字を彫った広直刃の一口は「同作中の傑出の一である」と称され、明るい匂口と堂々とした姿の大のたれの一口は「同作中の傑作の一口である」と称される。 第三の一面は彫物である。冬広は彫物をも得意とし、直刃調の作では表に草の倶利迦羅、裏に梵字と護摩箸が見られ、備中年紀の作には角止めの棒樋がある。説明書はこの彫物について鋭い判断を下す。相州風というよりむしろ「むしろ平安城長吉などの作に近い」とし、両者の間に何か関係があるのかもしれないと示唆する。この評は冬広を地方伝統の交差点に置くものであり、地鉄は系譜の上で相州ながら、鏨は京風を帯びた平安城の鍛冶へと向く。その刀は無傷のものは生ぶで三字銘を残すが、五口のうち一口は磨上げられ、本来の長い茎を詰めて、銘を茎尻寄りに切り直している。 彼の名を巡る最も論じられる問題は地理にある。説明書は、ほぼ時を同じくして若州・伯州・雲州・備前・備中などの住所銘を切った作が伝わり、これらが同人か否か検討の余地があると記し、「これ等が同人か否か検討の余地がある」とする。永禄十一年紀の刀は「備中国於松山」と銘して備中松山で作られたが、地刃ともに出来がよく若狭の作と一連であって、まさにそれゆえ問題は決し難い。日本美術刀剣保存協会はこれを断定せず、多国の作を一名のもとに括りつつ疑いを明示する。系譜における彼の位置はそれに応じて祖のそれであり、相州に学んだ地方の鍛冶が末相州の作風を若狭へ伝え、銘の証す限り山陰・山陽の沿岸に及ぶ一派にその名を与えた。その一派の中で彼自身の刀を分かつものは、借り物の比較ではなく、その記述に即した肌立ち流れの地鉄と明るい沸出来の乱れにある。 冬広を巡る鑑賞は、名声の高い名工というより、上手な地方の名手のそれである。参考書は彼を藤代の位列で上作に置き、刀工大鑑で四百点とする。これは当代第一級には遠く及ばぬ、堅実で収集に値する刀工の評価である。彼に国宝はなく重要文化財もない。指定を受けた作は五口で、いずれも重要刀剣の位にあり、特別重要刀剣にはまだ上っていない。五口のいずれにも伝来の記録はなく、この資料の範囲では大名伝来は名に付かず、所持者として記録されるのも博物館や社寺ではなく私蔵家である。収集家にとってこのことは、相州・備前の大名跡とは異なり、彼を静かに手の届く存在とする。直刃の生ぶ在銘冬広刀、あるいは倶利迦羅と梵字を備えた広く明るい乱れの一口は、末室町の作として時に市場に現れ、忍耐ある眼に応えるものであり、若狭冬広の祖の手になる、地刃健全で出来のよい一刀である。それは末相州の地鉄と京風を帯びた鏨を、一人の地方の手に併せ持つ。




