説明

後藤程乗 三所物(後藤家九代当主) 小柄:長さ 96 mm × 縦 14.5 mm 笄:長さ 211 mm × 縦 12.5 mm 目貫:長さ 34.5 mm × 縦 11 mm / 35.5 mm × 縦 11.5 mm 程乗は顕乗の長男として慶長八年(1603年)に生まれました。幼名は嬽市、後に源一郎、利兵衛と称し、諱は光昌、光伊。叔父である覚乗の招きにより加賀前田家に仕えました。当時の加賀藩主・前田利常公(1594-1658)の厚い信任を得て、金沢郊外に屋敷を拝領したほか、百石の禄と二十人の扶持を与えられています。即乗の没後は、当時わずか四歳であった甥の光倫(後の十代当主・廉乗)を後見しました。寛文十三年(1673年)九月十七日、七十一歳で没。 本作は無銘ながら、日本美術刀剣保存協会(NBTHK)により程乗の作と極められています。後藤家の伝統において程乗の作風は確立されており、その様式美は銘がなくとも極めを付すに足る顕著な特色を備えています。製作年代は程乗の円熟期にあたる寛文頃(1660年頃)と推測されます。 保存状態は極めて良好であり、赤銅魚子地の精緻さ、高彫の力強さ、そして「濡烏」と形容される赤銅特有の深い黒色の色揚げが見事です。作者の技量を仔細に鑑賞できるほど、当時のままの姿を留めています。金工技術の精密さと、肉置(ししおき)の絶妙な匙加減は、後藤本家の高い格式を如実に物語っています。 題材は「橘(たちばな)」です。橘は古来より長寿や吉祥を象徴する文様として日本の装飾美術で重用され、江戸時代の刀装具にも頻繁に用いられました。程乗の手による本作は、写実的な細部と様式化された造形が調和し、植物としての正確さと芸術的な気品を兼ね備えています。 加賀前田藩という、洗練された工芸文化が花開いた地で活躍した程乗の作品には、藩主好みの優雅で控えめながらも、高度な技術に裏打ちされた品格が漂います。本作はその特徴を体現しており、彫りは鮮明ながらも抑制が効き、構図の均衡も完璧です。その優れた保存状態と明確な意匠は、愛好家のみならず研究者にとっても貴重な資料となるでしょう。 専用桐箱入、日本美術刀剣保存協会(NBTHK)保存刀装具鑑定書付。 nihontocraft@bellsouth.net 戻る

後藤程乗 Goto Teijo Mitokoromono

後藤程乗 Goto Teijo Mitokoromono

三所物

$4,500

世界81社の刀剣商を横断追跡 · 価格履歴 · 売却アーカイブ

流派

Goto

時代

Early Edo (1603-1673)

作者について

Goto Teijo後藤程乗

1 特別重要刀剣40 重要刀剣

後藤光昌(ごとうみつまさ)は、後藤家九代目を務めた刀装金工である。七代顕乗(けんじょう)の次男として慶長八年(1603年)に京都で生まれ、幼名を源一郎、諱を光尹と称した。寛永元年(1624年)、父正継が剃髪して顕乗と号した際に、理兵衛家を相続し、名を理兵衛光昌と改めた。その後、宗家八代目光重(みつしげ、即乗)が若くして没したため、後継者の亀市(かめいち、後の廉乗)が幼少であったことから、一時的に宗家を預かり、後に九代目を相続した。廉乗が成長すると宗家を譲り、その後見役を務めた。また、加賀前田家に覚乗の子である演乗と隔年交代で勤務し、加賀百万石文化の発展に大きく貢献した。 光昌の作風は、後藤家の伝統を受け継ぎつつも、独自の意匠と技法を加味した格調高いものである。赤銅魚子地(しゃくどうななこじ)の高彫(たかぼり)、色絵(いろえ)を多用し、金、銀、赤銅などの素材を巧みに用いて、写実的かつ装飾的な表現を追求した。題材は、源平合戦の武将の勇戦を描いた合戦図、牽牛織女(けんぎゅうしょくじょ)のような故事、鶴退治(つるたいじ)や羅生門(らしょうもん)のような物語、獅子虎豹(ししこひょう)や龍のような吉祥文様など、多岐にわたる。特に獅子や龍の意匠は得意とし、その姿態は躍動感に溢れ、筋肉の動きや毛並みまで細密に表現されている。また、金象嵌(きんぞうがん)や金無垢地(きんむくじ)を用いることで、作品に豪華さを加えている点も特徴である。作風は「格調高く堂々たる出来栄え」と評され、「悠揚迫らず格調の高い」銘振りが王者の風格を感じさせると評される。 光昌は、後藤家における鐔(つば)製作の初期の作者としても知られ、自身銘のある鐔は極めて珍しいとされる。その作品は、後藤家の伝統的な技法を踏襲しながらも、名工としての技量の高さを示し、狭い鐔の面に堂々とした景色を表現している。また、光昌銘の三所物(みところもの)は貴重であり、その出来栄えは勇壮で躍動感に溢れ、壮年期の撥剌とした空気を発散していると評される。後藤家では龍と獅子の作品が多いが、二疋を組み合わせた龍の作品はあまり見受けられない中、光昌の作には数少ない二疋龍図の目貫も存在する。総じて、光昌は後藤家の中でも特に優れた技量を持つ金工家として高く評価されており、その作品は「品位が高く、程乗の傑作といい得る」と評されている。

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