説明

鑑定書内容:財)日本美術刀剣保存協会 特別保存刀装具 [N.B.T.H.K] Tokubetsu Hozon Tousougu 肥後の平田家に生まれ、桃山時代に肥後金工の中でも異彩を放つ上手であった彦三の特別保存刀装具指定作品。旧姓を松本氏といい、江戸時代初頭に肥後(熊本県)で栄えた肥後金工の名工。細川忠興に従って京都から移住したと伝えられる。その門下からは志水甚五(甥)、西垣勘四郎が輩出し、尾張系の林又七と共に肥後金工の四大流派を形成した。技術的には古正阿弥の伝統を多く継承し、素材には鉄地もあるが、山銅、真鍮、赤銅などの色金が多く、象嵌はもとより阿弥陀鑢や翁鑢を施すなどして細川三歳の求めた雅趣溢れる世界観を最も深く体現した作家である。本作は柔らかみのある山銅地に翁鑢を施し、雪輪型の穴を配置することで格調高さに洒脱さを併せ持った造形に仕上がっている。茎穴周りの責鏨に耳には銀の小田原覆輪が添えられ銀の光沢と山銅の渋みが見事に調和しまさに『侘び寂び』の精神を体現した造形美とも言えるだろう。

刀装具
Tokuho

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作者について

Hirata Hikozo彦三

1 重要美術品2 特別重要刀剣47 重要刀剣

平田彦三は、肥後金工の祖として知られる刀装具師である。正阿弥系の出自で、初代彦三は京において細川三斎(忠興)に仕え、後に細川家の移封に伴い丹後、小倉を経て熊本へと下向し、寛永十二年(1635年)に同地で没した。彦三の門下からは、志水甚五(甥)、西垣勘四郎といった名工が輩出し、尾張系の林又七と共に肥後金工の四大流派を形成するに至った。細川三斎の指導を受け、武人好みの実用性と格調高い美術性を兼ね備えた作風を確立した。 彦三の作風は、正阿弥の伝統を多く継承している点が特徴である。素材には鉄地もみられるが、山銅、真鍮、赤銅などの色金を多用し、象嵌の技術に加え、阿弥陀鑢や翁鑢を施すことで雅趣溢れる装飾性を加えている。地鉄は「彦三がね」と呼称される独特の深みのある色合いを呈し、味わい深い変化を見せる。鑢目は翁鑢が多用され、その出来栄えは評価が高い。作風としては、左右対称の意匠や、洲浜、笠、蕨手、枡といったモチーフを透かし彫りで表現することが多く、中には唐人笠の透かしなど南蛮文化の影響を感じさせるものもある。また、七宝象嵌を施した作も稀にみられ、その技術の高さが窺える。覆輪にも特色があり、小田原覆輪と呼ばれる特殊な覆輪を創始したことで知られる。小田原覆輪は、山銅、真鍮、赤銅など様々な素材が用いられ、中には黒四分一を用いたものもみられる。また、縄目覆輪を施した作例も存在する。漆を効果的に使用し、長い年月を経ることで鐔と馴染み、深い味わいを醸し出す点も彦三作品の魅力の一つである。 彦三の刀装具は、その格調高い美意識と洗練された技術により高く評価されている。「雅趣溢れる装飾性」「閑寂にして荘厳な世界」「古雅さと優美さ、そして華麗さが同居」「時代性と野趣の中にも優雅さが同居」「寂の風雅」といった言葉が、その作風を特徴づけるものとして説示に繰り返し見られる。彦三の作品は、単なる刀装具としてだけでなく、茶道の精神にも通じる侘び寂びの世界観を表現したものとして、高く評価されている。肥後金工の祖として、後世に多大な影響を与えたことは疑いなく、その作品は現在もなお多くの人々を魅了し続けている。

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