説明

鐔:加賀 「虫籠に秋虫図」 銘:宮津住友正(花押) 素材:赤銅地、金象嵌 時代:江戸時代 寸法:縦 74.5mm / 横 70.6mm / 厚さ 4.5mm 付属品:座布団付落込桐箱 鑑定:日本美術刀剣保存協会 保存刀装具(2021年) 価格:400,000円 / €2,500 / $2,800 本作は、加賀金工の手による「虫籠に秋虫図」の鐔です。加賀彫りの作品は無銘のものが多く、本作のように銘が切られた個体は非常に稀少と言えます。江戸時代の加賀には「友正」を名乗る工が複数名確認されており、本作がどの時期の誰によるものか、さらなる研究の余地を残している点も愛好家にとっての醍醐味でしょう。 形状は一見すると丸形ですが、わずかに縦が長い「丸形(なら丸形)」を呈しています。この絶妙な均衡が、全体の印象に奥深い美しさを与えています。中振りのサイズながら、切羽台を耳の高さまで盛り上げ、平地を一段低く仕立てた造り込みは、視覚的にも非常に興味深い構成です。 意匠は右側に集中させ、左上をあえて空間として残しています。これは刀に仕組んだ際、指(親指)が掛かる位置を考慮した意図的な配置です。江戸時代、経済力を付けた町人階級は脇差の帯刀を許されていました。本作のサイズ感は脇差に誂えるのに最適であり、また用いられている赤銅の質や細工の良さから、当時としても非常に高価な注文品であったことが推察されます。武士の困窮が進んだ江戸後期において、これほど贅を尽くした鐔を所持できたのは、裕福な豪商か、あるいは相当に身分の高い武士であったに違いありません。

Kaga – Tomomasa – Crickets and Cage

Kaga – Tomomasa – Crickets and Cage

€2,500

世界81社の刀剣商を横断追跡 · 価格履歴 · 売却アーカイブ

流派について

Kaga School加賀派

加賀象嵌は、江戸時代初期から享保期にかけて金沢を中心とする加賀国で発達した独特の平象嵌技法である。その起源は、加賀地方の鐙工が行っていた平象嵌を、鐔や刀装具に応用したことに始まるとされる。加賀藩の庇護のもと、献上品として制作された作例も多く、金沢の工芸文化の高い水準を示す技術として栄えた。室町期には鏡師と呼ばれる工人による山金地の鋳出鐔が見られ、これらが後の加賀象嵌の源流の一つとなったと考えられる。 加賀象嵌の技術的特徴は、赤銅、四分一、素銅などの磨地に、金・銀・銅など多種の色金を駆使した精緻な平象嵌にある。漆黒の赤銅磨地に色金を緻密に嵌め込む手法が主流だが、素銅地に明るい色調で景物を表した古調な作例も存在する。構図は絢爛にして巧みであり、秋草蝶図や鴛鴦図など、画面一杯に展開された図案文様化した表現が特徴的である。毛彫を併用し、内覆輪や埋金など細部にまで丁寧な仕上げが施され、未使用のまま伝世した保存状態の良い献上品級の作も少なくない。 鏡師系の作品は、真鍮地や山金地に鋤出高彫で大胆な文様を配し、格子形花文や菊花文など古雅な意匠を持つ。室町末期から桃山初期にかけての作風を示し、土手耳の構造や鋳出による立体的な表現が見られる。加賀象嵌と総称される一群には、こうした鏡師の流れを汲む古式な様相を呈するものから、江戸中期以降の洗練された平象嵌作品まで幅広い作域が含まれ、加賀国における刀装具制作の伝統の深さを物語っている。

刀剣商

Nihon Collection

nihoncollection.com

€2,500

Nihon Collectionで見る