説明

後藤光美(真乗) 葵葉散図 鐔 後藤家十五代当主、後藤光美(真乗)による傑作鐔です。 光美は十四代桂乗の長男として天明元年に江戸で生まれ、後藤家宗家を継承しました。また、歴代の無銘作品に対して極め(銘を記すこと)を行ったことでも知られ、その鑑定眼の高さは広く認められています。 本作は、光美の技量が遺憾なく発揮された代表作の一枚です。 地鉄は色に深みのある極上の赤銅地を用い、その表面には極めて精緻な魚子(ななこ)が施されています。その粒立ちはあまりに繊細かつ完璧で、まるで濡れているかのような潤いのある質感を湛えています。 形状は堂々たる木瓜形。表裏および耳に至るまで、赤銅と金の色絵で表された五十九枚もの葵葉が散らされています。葉の大きさは様々で、重なり合いながらも無造作に配置されたその構図は、自然界のありのままの美しさを写し取ったかのようです。 また、独特な形状を呈する両小柄・馬針穴には銀の埋忠(地板)が嵌められ、繊細な線刻が施されるなど、細部に至るまで一切の妥協がありません。 銘:後藤光美(花押) 鑑定:日本美術刀剣保存協会(NBTHK) 特別保存刀装具 付属:特注専用木箱入 後藤宗家十五代、真乗光美の美意識が凝縮された、まさに名品と呼ぶに相応しい逸品です。

TSUBA BY GOTÔ MITSUYOSHI 後藤光美000094
Tokuho

TSUBA BY GOTÔ MITSUYOSHI 後藤光美000094

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作者について

Goto Shinjo後藤真乗

8 重要刀剣

後藤光美(ごとうみつよし)は、後藤家十五代目を相続した刀工である。十四代光守(みつもり、桂乗)の嫡男として安永九年(1780年)に生まれ、幼名を亀市、俗名を源之丞と称した。享和四年(1804年)に父光守が没し、文化元年(1804年)六月三日に名を四郎兵衛光美と改め、宗家を継承した。後藤家は代々将軍家や大名に仕え、武具や刀装具の制作を家業とした名門であり、光美もまたその伝統を受け継ぎ、幕末期にかけて活躍した。 光美の作風は、赤銅魚子地を高彫色絵で飾るものが多く、金、銀、素銅などの素材を巧みに用いて、写実的かつ装飾的な表現を特徴とする。題材は、富嶽東海図、漁舟図、秋草に月兎図など、風景や動植物をモチーフとしたものが多く見られる。特に海浜風景を得意とし、波の表現や漁網の細密な描写に優れる。また、四分一磨地を用いた作品も残されており、素材の特性を生かした表現を試みていることが窺える。作風は、豪華さの中にも清清しさが溢れ、静と動を対比させるなど、独自の意匠も見られる。ただし、後藤家各代の中では些か技量が下まわるとされる向きもある。 光美の作品は、刀装具一式として揃いで制作されたものも存在し、武士の正装を彷彿とさせる格調高い作風を示す。小柄や笄などの小道具においても、その技量は遺憾なく発揮され、緻密な彫刻と鮮やかな色絵によって、独自の美意識を表現している。重要刀装具に指定されている作品の中には、光美の銘と共に、他の刀工との合作が見られるものもあり、当時の刀装具制作における共同作業の一端を窺い知ることができる。後藤家の伝統を守りつつ、独自の作風を確立した後藤光美は、江戸時代後期を代表する刀装工の一人として評価されている。

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