特別貴重資料認定(A-68) 江戸時代前期〜中期 侍甲冑 時代: 江戸時代中期(1688年-1800年頃) 本品は、令和8年7月26日付にて一般社団法人 日本甲冑武具研究保存会より「特別貴重資料」として認定されました。認定証の発行は本年9月から10月頃を予定しております。 兜(かぶと) ■鉢:筋兜(すじかぶと) 兜は侍の頭部を守る極めて重要な防具です。初期の兜は実用性が重視されていましたが、時代が下るにつれ、武士の威厳や個性、さらには信仰心をも象徴するものへと変化していきました。室町時代後期から江戸時代にかけては、獣毛や貝殻、植物、和紙などを用いた装飾性の高い「変わり兜」も登場します。 実用的な意匠の中でも、特に高く評価されたのが「筋兜」です。鉢の地板を繋ぎ合わせる際に、その端を高く盛り上げた「筋」を立てることで、刀の打撃を逸らし、衝撃を和らげる構造となっています。この工夫は軽量化にも繋がり、14世紀から16世紀にかけての戦術の変化に対応しました。室町時代には筋兜の製作が隆盛を極めます。 本作は「六十四間筋兜」であり、64枚もの鉄板を矧ぎ合わせて鉢を形成しています。放射状に広がる筋は機能美と堅牢さを兼ね備えており、これほど多間の鉢は、より滑らかで円熟したシルエットを生み出し、当時の甲冑師の高度な技術を物語っています。 さらに、鉢の頂部には「天辺の穴(てへんのあな)」が開けられており、本作には精緻な菊枝文の装飾が施されています。菊は日本文化において高貴と長寿の象徴であり、皇室とも深い関わりを持つ文様です。また、途切れることなく伸びる唐草文様は、生命力や繁栄、子孫繁栄を象徴しています。本来、天辺の穴は髻(もとどり)を出すための実用的な開口部でしたが、鎌倉時代頃には敵の攻撃の標的となることを避けるため、その習慣は廃れていきました。以降、この穴は実用を離れ、本作に見られるような華麗な装飾を施す場へと昇華したのです。 兜の裏前方には、室町時代後期(16世紀後半)の甲冑師「勝正」による銘が刻まれています。銘振りと製作年代から、本作は「明珍勝正」の手によるものと推定されます。勝正は室町末期の戦国時代、上野国(現在の群馬県)で活躍した名工であり、当時最も高名な甲冑師の一人であった明珍信家の門人と伝えられています。 明珍家は、平安時代に京都で興ったとされ、日本を代表する甲冑師の家系です。その後、一族は日本各地へ広がり、代々にわたり優れた武具を世に送り出しました。 ■錣(しころ): 黒漆塗板物、浅葱糸素懸威(あさぎいとすがけおどし)。 ■吹返(ふきかえし): 吹返は兜の両端に張り出した部分で、顔面を刀撃から守る防具としての機能に加え、着用者の地位や美意識を反映する装飾の場でもありました。 本作の吹返には、三輪の菊の花が優美な透かし彫りで施されています。菊は古来より長寿、高貴、そして吉兆の象徴として日本人に愛されてきた花です。その気高くも力強い美しさは、後に皇室の紋章(菊花紋章)としても定着しました。 ■面頬(めんぽう):








































当世具足 · 桶側胴
具足一連(完備)
64間 · 筋鉢
Myochin
Katsumasa
在銘 · 兜鉢
紺
ume-bachi
江戸
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
Returns/exchanges limited to defects caused by shipping (except willful misconduct or gross negligence by the company); customers must contact within 72 hours of receiving the product.





特別貴重資料認定(A-68) 江戸時代前期〜中期 侍甲冑 時代: 江戸時代中期(1688年-1800年頃) 本品は、令和8年7月26日付にて一般社団法人 日本甲冑武具研究保存会より「特別貴重資料」として認定されました。認定証の発行は本年9月から10月頃を予定しております。 兜(かぶと) ■鉢:筋兜(すじかぶと) 兜は侍の頭部を守る極めて重要な防具です。初期の兜は実用性が重視されていましたが、時代が下るにつれ、武士の威厳や個性、さらには信仰心をも象徴するものへと変化していきました。室町時代後期から江戸時代にかけては、獣毛や貝殻、植物、和紙などを用いた装飾性の高い「変わり兜」も登場します。 実用的な意匠の中でも、特に高く評価されたのが「筋兜」です。鉢の地板を繋ぎ合わせる際に、その端を高く盛り上げた「筋」を立てることで、刀の打撃を逸らし、衝撃を和らげる構造となっています。この工夫は軽量化にも繋がり、14世紀から16世紀にかけての戦術の変化に対応しました。室町時代には筋兜の製作が隆盛を極めます。 本作は「六十四間筋兜」であり、64枚もの鉄板を矧ぎ合わせて鉢を形成しています。放射状に広がる筋は機能美と堅牢さを兼ね備えており、これほど多間の鉢は、より滑らかで円熟したシルエットを生み出し、当時の甲冑師の高度な技術を物語っています。 さらに、鉢の頂部には「天辺の穴(てへんのあな)」が開けられており、本作には精緻な菊枝文の装飾が施されています。菊は日本文化において高貴と長寿の象徴であり、皇室とも深い関わりを持つ文様です。また、途切れることなく伸びる唐草文様は、生命力や繁栄、子孫繁栄を象徴しています。本来、天辺の穴は髻(もとどり)を出すための実用的な開口部でしたが、鎌倉時代頃には敵の攻撃の標的となることを避けるため、その習慣は廃れていきました。以降、この穴は実用を離れ、本作に見られるような華麗な装飾を施す場へと昇華したのです。 兜の裏前方には、室町時代後期(16世紀後半)の甲冑師「勝正」による銘が刻まれています。銘振りと製作年代から、本作は「明珍勝正」の手によるものと推定されます。勝正は室町末期の戦国時代、上野国(現在の群馬県)で活躍した名工であり、当時最も高名な甲冑師の一人であった明珍信家の門人と伝えられています。 明珍家は、平安時代に京都で興ったとされ、日本を代表する甲冑師の家系です。その後、一族は日本各地へ広がり、代々にわたり優れた武具を世に送り出しました。 ■錣(しころ): 黒漆塗板物、浅葱糸素懸威(あさぎいとすがけおどし)。 ■吹返(ふきかえし): 吹返は兜の両端に張り出した部分で、顔面を刀撃から守る防具としての機能に加え、着用者の地位や美意識を反映する装飾の場でもありました。 本作の吹返には、三輪の菊の花が優美な透かし彫りで施されています。菊は古来より長寿、高貴、そして吉兆の象徴として日本人に愛されてきた花です。その気高くも力強い美しさは、後に皇室の紋章(菊花紋章)としても定着しました。 ■面頬(めんぽう):








































当世具足 · 桶側胴
具足一連(完備)
64間 · 筋鉢
Myochin
Katsumasa
在銘 · 兜鉢
紺
ume-bachi
江戸
出来・保存状態が特に優れ、特別に貴重と認められた甲冑武具で、五段階の第三位にあたります。
甲冑はNBTHKの鑑定対象ではありません。日本甲冑武具研究保存会(1961年設立)が甲冑武具の研究・保存を担う中心的団体で、その審査は作品を「資料」として、保存資料・貴重資料・特別貴重資料・甲種特別貴重資料・最高位の重要文化資料という五段階で格付けします。「資料」という呼称は、刀剣の鑑定とは別に、甲冑を文化的・歴史的な資料として保存するという会の趣旨を表しています。
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