説明

コールドウェル・コレクション旧蔵 金無垢 獅子図目貫 状態:販売中 鑑定書:特別保存刀装具 本作は、江戸時代における金工技術の最高到達点を示す、後藤家正系の金無垢獅子図目貫です。 モチーフの獅子は、力強く躍動感あふれる姿で表され、流れるような鬣(たてがみ)と引き締まった筋肉の造形が、生命力と抑制された力強さを同時に体現しています。彫りは深く自信に満ち、肉置きの妙、鋭い表情、そして精緻に彫り込まれた四肢や爪に至るまで、後藤家当主クラスの卓越した技量が遺憾なく発揮されています。 地金は金無垢ならではの深く温かみのある光沢を湛え、経年による落ち着いた風合いの中に、鬣や腰周り、顔立ちに施された繊細な鏨使いが際立ちます。裏面は高級金工目貫特有の丁寧な力金(ちからがね)の仕立てとなっており、縁の処理も極めて美しく、後藤宗家あるいはそれに準ずる上級工房の作であることを裏付けています。彫刻としての力強さと細部の洗練された美しさの調和は実に見事で、古典的な後藤獅子の白眉といえる逸品です。 本作には日本美術刀剣保存協会(NBTHK)による「特別保存刀装具」の鑑定書が付属し、後藤家正系の真作であること、そしてその芸術的価値が公に証明されています。 また、歴史的資料としても極めて貴重であり、西洋における日本刀装具の最高峰の蒐集として名高い「ランドルフ・B・コールドウェル・コレクション」の旧蔵品です。同氏の図録『Masterpieces from the Randolph B. Caldwell Collection』にも掲載・解説されており、江戸金工の精華を代表する作例として高く評価されています。 金無垢という贅沢な素材、後藤家の正統な風格、特別保存の格付け、そしてコールドウェル家旧蔵という確かな伝来。これら全ての条件を兼ね備えた目貫が市場に出ることは極めて稀です。単なる装飾品としてだけでなく、後藤家金工の研究や蒐集における重要な基準作(リファレンス)となり得る、格調高い名品です。

Goto shishi menuki from the Caldwell collection
Tokuho

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流派について

Goto School後藤派

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後藤派は、室町時代中期に初代祐乗が将軍足利義政に仕えて創始した彫金の宗家であり、「日本彫物の元祖」と仰がれ、「古今独歩の鏨師」と賞賛される祐乗を祖として十五代にわたり嫡流の技を継承した。祐乗の作品は東山御物として数多く取り上げられ、後世に名を残した名工は挙って後藤家の祐乗に範をとっている。四代光乗・五代徳乗は織田信長、次いで豊臣秀吉に仕え、大判・分銅・彫物の三役を担い、桃山時代の豪華美を格調高く表示した。幕末には一乗が「後藤家の掉尾を飾る名工」として家風を大成し、門下の荒木東明・中川一勝らが一派の技を継承した。 後藤派の作域は三所物・縁頭・鐔・揃金具と多岐にわたり、赤銅魚子地を基調とした高彫金色絵を家風の根幹とする。金紋裏哺金仕立の小柄笄、金無垢地容彫の目貫など、素材と技法の選択に一貫した格式が認められる。三代乗真は「大振りで力強く、量感の豊かな彫技」を特徴とし、紋の肉取りが豊かで鏨使いが手強く、赤銅の色相も漆黒で麗わしい。桃山期の作には鋤出高彫に金・銀・素銅の象嵌色絵を駆使した豪華絢爛の大名道具が見られ、近世には四分一磨地や朧銀地に甲鋤毛彫・平象嵌を組み合わせた多彩な表現も展開された。龍・獅子・鶏・犀・鯰といった動物意匠から、松竹梅・桐紋・粟穂・四季草花に至るまで画題は広範であり、各代が武家好みの吉祥意匠を格調高く仕上げている。 後藤派に帰せられる作品には「気品があって格調が高く」「力漲る」と評される一貫した品格が通底する。歴代の折紙制度によって初代祐乗以来の作が厳格に鑑定・伝承され、「家彫の誇りは確実に後代に伝わっている」と繰り返し認められる。後藤流に熟達した門弟の作が「後藤家御家彫と見紛うまでの出来」と称されることからも、その規範性の高さが窺える。日本金工史において、後藤派は赤銅魚子地高彫金色絵という技法体系を確立し、室町から明治に至る四百余年の間、彫金の最高規範として君臨した一門である。

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