吉岡・後藤 三面鏡図小柄 本作は、日本美術刀剣保存協会(日刀保)により江戸時代(17世紀後半)の吉岡因幡介派と極められた、非常に興味深く、かつ美しい小柄です。 意匠は簡潔ながらも気品に満ちています。表面の地は、作者の卓越した技量を示す極めて精緻な赤銅魚子地(しゃくどうななこじ)で埋め尽くされています。一粒一粒の魚子の大きさや間隔は驚くほど細かく、拡大鏡を用いなければ個々の鏨(たがね)の跡を判別できないほど見事な仕上がりです。 その魚子地に配された図案は三面の鏡で、左右の二面は華やかな金の色絵、中央の一面は素朴な四分一(しぶいち)で表現されています。 小柄の穂先側(左側)に位置する金の鏡には、松竹の彫りとともに「天正」の二文字が刻まれています。一方、右側の金の鏡には、花文様をあしらった引手(ひきて)のような意匠と、中央に結ばれた繊細な紐が彫り込まれています。これら二面の緻密で優美な彫金とは対照的に、中央の鏡は四分一を用いた無垢な造形となっており、全体に鮮やかなコントラストを与えています。 本作は2012年に日本美術刀剣保存協会の審査を受け、吉岡派の作と鑑定されました。吉岡派は江戸幕府の御用彫金師として名高い名門です。興味深いことに、保存刀装具鑑定書には図案の詳細な説明がほとんど記されていません。鑑定書の記載は以下の通りです。 さらに特筆すべき点があります。前所有者が本作を入手した後、八木晃・牛久保盛治共著の『後藤家小柄撰集』の中に、まさにこの個体が掲載されていることを発見しました。同書において、著者らは本作を後藤家本流の十代目、後藤廉乗(1688年没)の手によるものと推定しています。
Certificate reading — 無銘(吉岡)





吉岡派
江戸
無銘
保存 (NBTHK)
家彫
現在14点販売中
吉岡家は徳川幕府の抱え金工として百俵十人扶持を支給された権威ある家柄である。初代重次が慶長年間に徳川家康に召し出されて以来、幕末の九代重貞に至るまで繁栄を誇った。歴代にわたって藤原姓を冠称し、二代からは因幡介の官位を受領している。しかし上代の作は幕府への納品であったため全て無銘であり、「吉岡因幡介」と五字銘に切るようになったのは五代易次あたりからと考えられる。個銘を切らぬため代別は困難であるが、宝永三年に先代重長の隠居により理左衛門を襲名し、宝永七年に因幡介に叙任された四代重廣、および個銘と行年銘を添えた作品が現存する七代照次が、指定作品群において特に重要な存在として浮かび上がる。 吉岡流の作風は、赤銅魚子地に高彫・金色絵を施す堅実精巧な彫口を最大の特色とする。後藤家と同様の素材と技法を用いながらも、将軍家御用の品格にふさわしい格調の高さを一貫して保っている。その技術の幅は広く、金据文・金平象嵌・金象嵌を巧みに使い分け、時に墨絵風の筆勢をそのまま金象嵌で表現する妙技も見せる。また金・銀・四分一・素銅など多種の色金を用いた色絵を的確に施し、豪華さの中にも格調に満ちた出来口を示す。制作の特筆すべき点は、鐔・縁頭・小柄・笄・目貫を同一の意匠と技法で統一した一作金具・総金具の制作に秀でていることである。丸に三葉葵紋散し、立沢瀉紋、稲穂文、竜虎図など、主題を全ての金具に一貫させ、赤銅魚子地に金色絵で格調高く仕上げる手法は吉岡家の真骨頂といえる。糸巻太刀拵や大小拵といった武家の儀仗に用いる拵形式において、総金具を一手に担う力量は、幕府抱え金工としての真価を遺憾なく発揮したものである。 吉岡家は装剣金工界の名門として、徳川将軍家および有力大名家の最も格式高い刀装を担った。紀州徳川家二代光貞の好みにより貞享三年に制作されたと伝える糸巻太刀拵、五代将軍綱吉の指料であった太刀の拵で後に十四代将軍家茂が所用したもの、加賀前田家伝来の糸巻太刀拵など、将軍家・御三家・有力外様大名への納品が指定品に確認される。説示において「後藤本家にも劣らぬ格調を備え持った」[[c:1]]と評される点は、幕府お抱えの家彫として到達した芸格の高さを端的に示している。七代照次による個銘・行年銘を備えた親子鶏図三所物は、吉岡家の代別研究に不可欠な資料的価値を有し、四代重廣の在銘作もまた江戸中期の製作年代を知る上で貴重な金工資料とされる。将軍家の御用を務めた吉岡因幡介の真価を十分に発揮した作品群は、幕府抱え金工の頂点に位置する家系の力量と矜持を今日に伝えている。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
NBTHK公式サイトThree-day inspection period and seven-day return period; buyer notifies by email within three days of receipt, no reason needed; full refund once item returned undamaged and unaltered.
吉岡・後藤 三面鏡図小柄 本作は、日本美術刀剣保存協会(日刀保)により江戸時代(17世紀後半)の吉岡因幡介派と極められた、非常に興味深く、かつ美しい小柄です。 意匠は簡潔ながらも気品に満ちています。表面の地は、作者の卓越した技量を示す極めて精緻な赤銅魚子地(しゃくどうななこじ)で埋め尽くされています。一粒一粒の魚子の大きさや間隔は驚くほど細かく、拡大鏡を用いなければ個々の鏨(たがね)の跡を判別できないほど見事な仕上がりです。 その魚子地に配された図案は三面の鏡で、左右の二面は華やかな金の色絵、中央の一面は素朴な四分一(しぶいち)で表現されています。 小柄の穂先側(左側)に位置する金の鏡には、松竹の彫りとともに「天正」の二文字が刻まれています。一方、右側の金の鏡には、花文様をあしらった引手(ひきて)のような意匠と、中央に結ばれた繊細な紐が彫り込まれています。これら二面の緻密で優美な彫金とは対照的に、中央の鏡は四分一を用いた無垢な造形となっており、全体に鮮やかなコントラストを与えています。 本作は2012年に日本美術刀剣保存協会の審査を受け、吉岡派の作と鑑定されました。吉岡派は江戸幕府の御用彫金師として名高い名門です。興味深いことに、保存刀装具鑑定書には図案の詳細な説明がほとんど記されていません。鑑定書の記載は以下の通りです。 さらに特筆すべき点があります。前所有者が本作を入手した後、八木晃・牛久保盛治共著の『後藤家小柄撰集』の中に、まさにこの個体が掲載されていることを発見しました。同書において、著者らは本作を後藤家本流の十代目、後藤廉乗(1688年没)の手によるものと推定しています。
Certificate reading — 無銘(吉岡)





吉岡派
江戸
無銘
保存 (NBTHK)
家彫
現在14点販売中
吉岡家は徳川幕府の抱え金工として百俵十人扶持を支給された権威ある家柄である。初代重次が慶長年間に徳川家康に召し出されて以来、幕末の九代重貞に至るまで繁栄を誇った。歴代にわたって藤原姓を冠称し、二代からは因幡介の官位を受領している。しかし上代の作は幕府への納品であったため全て無銘であり、「吉岡因幡介」と五字銘に切るようになったのは五代易次あたりからと考えられる。個銘を切らぬため代別は困難であるが、宝永三年に先代重長の隠居により理左衛門を襲名し、宝永七年に因幡介に叙任された四代重廣、および個銘と行年銘を添えた作品が現存する七代照次が、指定作品群において特に重要な存在として浮かび上がる。 吉岡流の作風は、赤銅魚子地に高彫・金色絵を施す堅実精巧な彫口を最大の特色とする。後藤家と同様の素材と技法を用いながらも、将軍家御用の品格にふさわしい格調の高さを一貫して保っている。その技術の幅は広く、金据文・金平象嵌・金象嵌を巧みに使い分け、時に墨絵風の筆勢をそのまま金象嵌で表現する妙技も見せる。また金・銀・四分一・素銅など多種の色金を用いた色絵を的確に施し、豪華さの中にも格調に満ちた出来口を示す。制作の特筆すべき点は、鐔・縁頭・小柄・笄・目貫を同一の意匠と技法で統一した一作金具・総金具の制作に秀でていることである。丸に三葉葵紋散し、立沢瀉紋、稲穂文、竜虎図など、主題を全ての金具に一貫させ、赤銅魚子地に金色絵で格調高く仕上げる手法は吉岡家の真骨頂といえる。糸巻太刀拵や大小拵といった武家の儀仗に用いる拵形式において、総金具を一手に担う力量は、幕府抱え金工としての真価を遺憾なく発揮したものである。 吉岡家は装剣金工界の名門として、徳川将軍家および有力大名家の最も格式高い刀装を担った。紀州徳川家二代光貞の好みにより貞享三年に制作されたと伝える糸巻太刀拵、五代将軍綱吉の指料であった太刀の拵で後に十四代将軍家茂が所用したもの、加賀前田家伝来の糸巻太刀拵など、将軍家・御三家・有力外様大名への納品が指定品に確認される。説示において「後藤本家にも劣らぬ格調を備え持った」[[c:1]]と評される点は、幕府お抱えの家彫として到達した芸格の高さを端的に示している。七代照次による個銘・行年銘を備えた親子鶏図三所物は、吉岡家の代別研究に不可欠な資料的価値を有し、四代重廣の在銘作もまた江戸中期の製作年代を知る上で貴重な金工資料とされる。将軍家の御用を務めた吉岡因幡介の真価を十分に発揮した作品群は、幕府抱え金工の頂点に位置する家系の力量と矜持を今日に伝えている。 詳しく見る →
銘が正しい、または無銘でも年代・流派を指摘でき、美術工芸的価値が認められる、保存に値する真正の刀装具と鑑定されたものです。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
NBTHK公式サイトThree-day inspection period and seven-day return period; buyer notifies by email within three days of receipt, no reason needed; full refund once item returned undamaged and unaltered.