日本刀 短刀:銘 氷心子秀世入道(嘉永七年) 附 日本美術刀剣保存協会(NBTHK)特別保存刀剣鑑定書 【概略】 本作は「氷心子秀世入道(ひょうしんしひでよにゅうどう)」による銘があり、嘉永七年(1854年)の年紀が刻まれています。嘉永年間(1848-1854年)は秀世の晩年にあたり、本作はその円熟期を象徴する一振りといえます。 氷心子秀世は、江戸時代後期に活躍した新々刀期の高名な刀工です。古刀期の精神と技術の復興を提唱し、新々刀の祖と仰がれる巨匠・水心子正秀(すいしんしまさひで)の門下において、最も優れた技量を持つ高弟の一人として知られています。 秀世の本名は田村軍兵衛(一説には吉田秀和)。当初は石堂運寿是一(七代目)に師事して作刀を学びましたが、後に水心子正秀の門に入りました。その類稀なる才能は師である正秀に高く評価され、正秀の娘を妻に迎え婿養子となりました。 越後国高田藩榊原家の抱え工を務め、江戸の阿佐ヶ谷今里や本所割下水などで作刀に励みました。「氷心子」の号を名乗り、同時代を代表する名工としての地位を確立しています。 また、師である正秀の晩年には、多くの「代作(だいさく)」を任されたことでも知られています。代作とは、師の承認のもとで信頼の厚い弟子が作刀や銘切りを行うものであり、秀世がこれを任された事実は、彼の技量が師の信頼に足る極めて高い水準にあったことを物語っています。 【短刀とは】 一般に刃渡り30cm(約1尺)未満のものを短刀と呼びます。鍔(つば)を持たない形態のものも多く、携帯性に優れ、近接戦闘に適した武器として発展しました。鎌倉時代から室町時代にかけては、長物(槍や太刀)を用いる騎馬武者の補助兵装として用いられ、甲冑の隙間を突く際などに重宝されました。 携行の様式により「懐刀(ふところがたな)」や「腰刀(こしがたな)」とも呼ばれます。また、古来より短刀は魔除けの力を持つと信じられており、伝統的な婚礼の儀において花嫁に贈られるなど、守り刀としての精神的な意味合いも深く持っています。 【鑑定書】 本刀は、公益財団法人 日本美術刀剣保存協会(NBTHK)により「特別保存刀剣」に認定されています。この鑑定書は、保存状態が極めて良好であり、かつ美術的価値が高いと認められた真作の日本刀にのみ授与されるものです。 【刀身】 長さ(Nagasa):26.0 cm 反り(Sori):0 cm(内反り) 刃文(Hamon):焼入れによって刃先に現れる結晶構造の模様。 地鉄(Jihada):鍛錬の過程で折り返し重ねられた鋼が描き出す表面の模様。 切先(Kissaki):刀身の先端部分。 茎(Nakago):柄に収まる持ち手にあたる部分。 日本刀の茎には、赤錆を防ぐために意図的に「黒錆」が残されます。この経年による錆の色調(朽ち込み)は、専門家が作刀年代を特定する際の極めて重要な指標となります。 【外装】 拵(Koshirae):鞘、柄、鍔などを含めた日本刀の外装一式。 縁頭(Fuchi-Kashira):柄の両端を保護し装飾する一対の金具。 柄・目貫(Tsuka / Menuki):柄は握り部分、目貫はその中央に配される装飾金具。 本作の目貫の題材は「枝菊扇図(えだぎくおうぎず)」です。菊は古来より長寿の象徴として尊ばれ、扇は末広がりの形状から繁栄を意味する縁起の良い意匠です。
在銘 · 新々刀 · 長さ 26cm
























保存刀剣のうち、出来が一層優れ、保存状態も良好と認められたものです。再刃や、室町・江戸期の多くの無銘作は対象外となり、保存刀剣より高い基準が課されます。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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日本刀 短刀:銘 氷心子秀世入道(嘉永七年) 附 日本美術刀剣保存協会(NBTHK)特別保存刀剣鑑定書 【概略】 本作は「氷心子秀世入道(ひょうしんしひでよにゅうどう)」による銘があり、嘉永七年(1854年)の年紀が刻まれています。嘉永年間(1848-1854年)は秀世の晩年にあたり、本作はその円熟期を象徴する一振りといえます。 氷心子秀世は、江戸時代後期に活躍した新々刀期の高名な刀工です。古刀期の精神と技術の復興を提唱し、新々刀の祖と仰がれる巨匠・水心子正秀(すいしんしまさひで)の門下において、最も優れた技量を持つ高弟の一人として知られています。 秀世の本名は田村軍兵衛(一説には吉田秀和)。当初は石堂運寿是一(七代目)に師事して作刀を学びましたが、後に水心子正秀の門に入りました。その類稀なる才能は師である正秀に高く評価され、正秀の娘を妻に迎え婿養子となりました。 越後国高田藩榊原家の抱え工を務め、江戸の阿佐ヶ谷今里や本所割下水などで作刀に励みました。「氷心子」の号を名乗り、同時代を代表する名工としての地位を確立しています。 また、師である正秀の晩年には、多くの「代作(だいさく)」を任されたことでも知られています。代作とは、師の承認のもとで信頼の厚い弟子が作刀や銘切りを行うものであり、秀世がこれを任された事実は、彼の技量が師の信頼に足る極めて高い水準にあったことを物語っています。 【短刀とは】 一般に刃渡り30cm(約1尺)未満のものを短刀と呼びます。鍔(つば)を持たない形態のものも多く、携帯性に優れ、近接戦闘に適した武器として発展しました。鎌倉時代から室町時代にかけては、長物(槍や太刀)を用いる騎馬武者の補助兵装として用いられ、甲冑の隙間を突く際などに重宝されました。 携行の様式により「懐刀(ふところがたな)」や「腰刀(こしがたな)」とも呼ばれます。また、古来より短刀は魔除けの力を持つと信じられており、伝統的な婚礼の儀において花嫁に贈られるなど、守り刀としての精神的な意味合いも深く持っています。 【鑑定書】 本刀は、公益財団法人 日本美術刀剣保存協会(NBTHK)により「特別保存刀剣」に認定されています。この鑑定書は、保存状態が極めて良好であり、かつ美術的価値が高いと認められた真作の日本刀にのみ授与されるものです。 【刀身】 長さ(Nagasa):26.0 cm 反り(Sori):0 cm(内反り) 刃文(Hamon):焼入れによって刃先に現れる結晶構造の模様。 地鉄(Jihada):鍛錬の過程で折り返し重ねられた鋼が描き出す表面の模様。 切先(Kissaki):刀身の先端部分。 茎(Nakago):柄に収まる持ち手にあたる部分。 日本刀の茎には、赤錆を防ぐために意図的に「黒錆」が残されます。この経年による錆の色調(朽ち込み)は、専門家が作刀年代を特定する際の極めて重要な指標となります。 【外装】 拵(Koshirae):鞘、柄、鍔などを含めた日本刀の外装一式。 縁頭(Fuchi-Kashira):柄の両端を保護し装飾する一対の金具。 柄・目貫(Tsuka / Menuki):柄は握り部分、目貫はその中央に配される装飾金具。 本作の目貫の題材は「枝菊扇図(えだぎくおうぎず)」です。菊は古来より長寿の象徴として尊ばれ、扇は末広がりの形状から繁栄を意味する縁起の良い意匠です。
在銘 · 新々刀 · 長さ 26cm
























保存刀剣のうち、出来が一層優れ、保存状態も良好と認められたものです。再刃や、室町・江戸期の多くの無銘作は対象外となり、保存刀剣より高い基準が課されます。
日本美術刀剣保存協会(NBTHK)は、1948年に設立され、文化庁の監督を受ける公益財団法人で、東京・刀剣博物館に本部を置きます。専門の審査員が出品作を直接審査し、美術的・歴史的価値に応じた鑑定書を発行します。NBTHKの鑑定書は、日本刀および刀装具の真正性を示す最も広く認知された基準です。
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