徳鄰

Mito (Swordsmiths) Tokurin

評価作品11点

重要巻 19, 番 357 · 刀

概要

市毛徳鄰は、その刀に「水府市毛源左衛門徳鄰」と国名を冠し俗名を入れた長銘を切り、その経歴も銘の通りに説明に明記される。安永六年(一七七七)の生まれで、水戸藩士であり、はじめ水戸藩工久米長徳に師事し、のち大坂に出て尾崎助隆の門に学んだ。文化六年、三十三歳の時に水戸藩の抱鍛冶となり、天保元年には近江介を受領し、天保六年(一八三五)に歿している。説明はその作風に、師風を継いだ濤瀾乱れと、同じ大坂の真改風の直刃仕立のものとの二様があり、ともに匂口が明るく冴えて上手であると記す。

濤瀾は、説明が「彼の最も得意とした濤瀾風」とする作域である。大互の目乱れが整然と起伏するもので、小板目のよくつんで冴えた地鉄の上に焼き、しばしば区上に直ぐの焼出しを設けてその上を濤瀾の大模様に開く。足が長くよく入り、匂深く、小沸が厚くつき、砂流しがかかり、匂口が明るく冴える。説明はこの作域での成功を、その整いによって判じる。最も優れた脇指について、乱れの形がくずれることなく整然と焼かれ、沸の粒が均一でよく揃ってむらなくつくと評し、ある刀については「濤瀾乱れの作柄は、幕末期の刀工が挙って試みているが、中でも徳鄰は抜群」と記す。

二様の地鉄はいずれも同じ精良な鍛えである。小板目がよくつみ、時に杢・流れ肌を交え、地沸が細かに、時に微塵に厚くつき、地景が細かによく入って、かねが冴える。最高作ではこの鍛えを一段と優れたものとする。刃文はいずれの作域でも同じ見どころで読まれ、匂深く、小沸が厚くつき、細かに金筋・砂流しがかかり、匂口が明るく冴える点が繰り返し挙げられる。帽子は一口を除いて直ぐに小丸に結び、時にやや深く返って先を僅かに掃きかける。姿は多くが鎬造の刀・脇指で、身幅やや広め、重ね厚く、踏張りごころがあり、中鋒が延びる。その例外が、重ね厚く内反りの平造短刀である。

第二の作域は真改風の直刃である。中直刃・広直刃、または直刃調に浅くのたれごころをおび、丁子・互の目・長い足が入る。説明はこれを「同作としては比較的珍らしい真改風の作域」とし、それゆえに賞して、これらの作では沸が一層厚く、その粒がより均一で、匂口が明るく冴える点を特筆する。本間による御物台帳に所載の年紀作二口もこの作域に属する。「水戸八幡住」と切る文化十一年紀の脇指は、小板目よくつんだ地に浅く湾れ調の直刃を焼き、匂深く匂口冴え、「水府住」とのみ切る文政四年紀の刀は広直刃調に足よく入り、帽子は直ぐに大丸となって、記録中唯一の例外をなす。台帳は両刀とも出来がよく、脇指は「特に優れている」とする。銘もまた年代の手掛りとなる。文化頃までは「水戸住」、文政頃は「水府住」ときるため、説明は無年紀の一刀を文政に入ってからの作とし、文政二年紀の銘振りに近似することから、或は文政二年とも推す。

その基準となる文政二年紀の作が現存する。文政二年二月の年紀を切る短刀で、小板目がよくつんで地沸が細かにつき、直ぐに短く焼き出して大互の目乱れを焼き、足太く入り、地刃とも明るく冴え、説明は同作中出色の一口とする。その銘は常の作と異なり、指表に国名も俗名もない「市毛徳鄰作」の五字銘を切り、裏に年紀を切る。ある脇指については「この作は、彼の典型といえるもの」で出来映えも傑出するとし、ある刀には「彼の本領が遺憾無く発揮されている」と記す。彼の評価はこの整いに基づく。波頭はその形を保ち、沸は均一に揃い、精良な直刃は、その技術が一手のみのものではなかったことを示す。

茨城県知事から宮中に献上された御物台帳所載の二口を除けば、徳鄰の記録は悉く重要刀剣の域にある。同台帳は彼を「水戸新々刀工中の白眉」と評する。九口が重要刀剣に指定され、いずれも在銘で生ぶ茎である。うち八口は国名や俗名を入れることの多い長銘で、残る一口が五字銘の文政二年紀短刀である。説明はそのうち数口を同作中の優品・代表作とする。国宝・重要文化財・特別重要刀剣はなく、美術館・大名家の所蔵も記録されていない。藤代の評価は上作、『刀工大鑑』の評価は三百八十点で、幕末水戸の有数の上手の位置にある。一個の収集家にとって、その作は鎌倉の名跡のように手の届かぬものではないが、世に現れることは稀である。健全な在銘・年紀の一口は、彼が我が物とした濤瀾風であれ、より珍しい真改風の直刃であれ、待つに値し、その優品は説明の言う「沸の粒が均一でよく揃ってむらなくつき」を示している。

歴史的重要度

徳鄰の位置づけを、日本刀全体および伝法・時代・時期ごとに示します。各区分(随一・屈指・有数・著名)は、NBTHK および文化庁による指定に加え、三作や名物帳などの歴史的栄誉を加味したものです。

随一
随一
屈指
屈指
有数
有数
著名
著名

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指定

国宝—
重要文化財—
重要美術品—
御物2
特別重要刀剣—
重要刀剣9

名工ランク

鑑定

年紀作

伝来

刀種

評価作品11点の分布

銘

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