金家は桃山時代に山城国伏見に住した鐔工で、いわゆる絵風鐔の祖として名高い。従来文様風であった鐔の図柄にはじめて絵画的なものを導入し、鐔の表現世界を一変させた革新者である。銘は「山城国伏見住金家」を常とするが、「城州伏見住金家」と切った城州銘の作も現存し、城州銘の達磨図・毘沙門天図・春日野図の三枚は国の重要文化財に指定されている。
形は丸形・木瓜形・撫角形の他に二ツ木瓜形や拳形と称される独創の変り形もあり、「意匠と姿態との調和を図った作品が多い」と評される。地がねは全て鉄地で「鍛えが無類によく」、地に槌目を打ち雅趣に富んでいる。紫錆の鉄色と自在の槌目が相まって地面は頗る趣深く、薄手の造り込みに打返耳を施して姿態に変化をつけている。構図は「余白を活かした画面構成で、遠近法を用い空間を大きく取り、そこに充満する空気の層を感じさせる出来映え」であり、「泰然とした趣がある」とされる。山水画でも人物画でも空間を大きくとり、遠山・仏塔・苫舟などを近景と遠景の対照として巧みに配するその手法は、一枚の鐔の中に無限の奥行きを生み出している。彫法は力強い鉄高彫象嵌を駆使し、波や芦などの毛彫も巧みである。金銀などの色金は「最小限に抑えて色彩効果と画品を一段と高めて」おり、鉄の妙味を損なうことのない計算が為されている。高彫は共金据紋方式と称され、極めて薄い平地の上に鉄の共金を据紋象嵌するという高度な技法を些かも違和感なく造り上げた手腕は「敬服に価する」と評される。
画題は達磨・猿猴捉月・愛宕飛脚・木賊刈・太公望・野晒・巣父・張果老・柿本人麻呂・楼閣人物・山水樵夫・月下独釣・指月拾得など多岐にわたり、禅機的画題から中国故事、和歌の世界に至るまで幅広い教養と画才を示す。説示には「小さな鐔の中に無限の空間を表現し得た金家の技術は古今第一」「数多い鐔作家の中でも金家一人であると言っても過言ではない」「言いしれぬ静寂と高尚な風韻が満ち溢れている」「粗のようで粗ならず、稚のようで稚ならない高尚な世界」といった最高級の賛辞が繰り返され、絵風鐔の創始者としての貫禄を遺憾なく示した存在として位置づけられている。筑前黒田家伝来の塔山水図鐔をはじめ、名家に珍重された名品が数多く伝世する。